こういったソニーの総合力を結集して開発したのが、「フルスイングしたのが今回発表したZ1」と田嶋氏。そのため、「Z1ありきでZがあった。(いわば)"Z0"だった」と語る。フラッグシップモデルは、今後も「Z」を冠する意向で、「Z2になるか、Z10、Z100、Z1000にするのか、まだ悩ませて欲しい」と言う。今後のフラッグシップモデルについては、「同じプラットフォームで同じソフトウェアのかたまりを作って、そのかたまりでバリエーションを作る」と田嶋氏は語る。例えばそれがXperia Z Ultraだったり、Xperia Tablet Zだったり、さらに小さいモデルだったりと、サイズのバリエーションが増えても、同じエクスペリエンスが体験できるようにしていく。

前述したように、ソニーの100%子会社になったことで、部門ごとの連携がさらに強化されたという。平井一夫社長が「One Sony」を掲げて横断的な商品連携を進めているが、Xperiaにもそれが生かされている。カメラやディスプレイなどに搭載されている技術が代表的だが、そうした部門のノウハウを投入することに「躊躇がなくなった」という。

さらに人材交流も盛んになり、Xperia Z1の開発では、デジカメ部門から「一個師団が入ってもらって一緒にやった」という。それだけでなく、その一個師団にXperia部門の人間が参加し、ノウハウを共有していき、それを繰り返すことで、それぞれの部門でそれぞれのノウハウが広がるようにした。これはディスプレイでもオーディオでも同じ作業を行ったとのことで、逆にXperia側からは、アプリによるエクスペリエンスの実現などのノウハウも提供しているという。

Xperiaの機能を拡張する周辺機器も続々登場

今回の発表では、Xperia Z1にあわせて「サイバーショット QX」シリーズなどの周辺機器が登場している。これらの周辺機器は、Xperiaの開発サイクルを一定にすることで、ほかの部門でも連携する商品が企画しやすくなったことも背景にあるという。

サイバーショット QXシリーズ

こうした周辺機器は、Xperiaの機能を「エンハンス(拡張)」する製品という。「基本的にスマートフォンは何でもできる機器だが、ソニーブランドを特徴付ける『リッスン』『ウォッチ』『クリエイト』『プレイ』という4つのユーザーエクスペリエンスにフォーカスし、ユニークなアプリケーションと、それを生かせるハードウェアのエンハンサーを作る」ことが狙いだ。こうしたエンハンサーを、各部門が企画しやすくなり、「商品企画のサイクルができつつある」と田嶋氏は語る。今回、レンズスタイルカメラという独特のエンハンサーを投入したが、「あえて非常にユニークなカメラとフラッグシップ(スマートフォン)の発表を同時にしようとした」という。

同様に、例えば映画のキャンペーンも同時にやりやすくなったと田嶋氏。こうしたソニーグループの商品とシンクロさせることで、「他社とは違う、ソニーらしい価値提供ができる」と同氏は説明する。今回は、Music Unlimited、映画、ゲームタイトル、そしてPlayMemories Onlineの無制限の写真保存・同期サービスといったサービスをリリースし、こうしたサービスをXperia Z1で試したユーザーが会員になる、といった「価値提供の連鎖ができるといいと思っている」という。

スマートウォッチの本当の戦い

ソニーモバイルでは、スマートウォッチとして「SmartWatch MN2」をすでに提供しているが、今回のIFAでSamsungがスマートウォッチ製品「GALAXY Gear」を発表した。これについて問われた田嶋氏は、「よくスマートウォッチを勉強して、それにカメラを搭載してUIをキレイにデザインしたもの」という認識だ。

登場前は、「通信機能が入って、スマートフォンのほとんどの機能を入れるようなものを想像していた」が、実際はまだソニーのSmartWatchと同じ範囲の製品だった。そのため、これまで同社がスマートウォッチで蓄積したノウハウやアプリケーションのエコシステムで「まだ戦える範疇という印象」だという。「ただし、本当の戦いは次のステージになる」という。アップルもスマートウォッチ参入が噂されており、「アップルが何をやってくるか、それに対してGoogleと一緒に何ができるのか、これを次のフェーズとして真剣に考えている」と田嶋氏は強調する。

そのスマートウォッチは、現時点ではスマートフォンのエンハンサーとしての位置づけ。しかし、ウェアラブル性がスマートフォンよりも高く、行動履歴や生体情報がより正確に取得できるなどのメリットがあるため、こうした特徴を生かした、新しい機器の提供を考えているそうだ。現時点では、5インチクラスのスマートフォンでタッチUIが主流。これを越えるスマートウォッチの操作性が実現できていないため、「技術のイノベーションが一つ必要で、時間がかかる」というに認識だ。

最後に今後、Xperiaはどうなるのか。現在は、「ソニーのベスト」を集めてスマートフォンに搭載している段階で、今後は、「コミニュニケーション機能を持ったスマートフォンでしかできない新しいエクスペリエンスやエンターテインメントの領域を、スマートフォン発で作らなければならない」と田嶋氏は意気込む。

(記事提供: AndroWire編集部)