消費電力測定(グラフ51~62)
最後にこちらを。今回は以下の3つのシナリオで消費電力変動を取ってみた。
- Idle(待機電力)
- Sandra 2013 SP4 Dhrystone/Whetstone
- 3DMark FireStrike Extreme Profile Demo
グラフ51が実効消費電力の絶対値、グラフ52がIdleの値を0としたときの、Sandra/3DMarkの実効消費電力の差をそれぞれ示したものだ。ただこのままだと見にくいので、それぞれの状況の平均値をグラフ51と52から算出したのがグラフ53と54となる。
とりあえず32nmプロセスを使うSandy Bridge-Eが一番消費電力が多いのは当然として、Ivy Bridge-EとHaswellを比較すると、やはりそれなりに消費電力の差は確実に見られる。
特にWhetstoneにおけるHaswellの消費電力の低さはちょっと驚異的である。ただDhrystoneの結果を見ると、Ivy Bridge-Eの実効消費電力差はHaswellの1.5倍程度で、これはコアの数(4C vs 6C)と考えれば妥当な数字ではないかという気もする。
また、FireStrike Demoの様にCPU負荷が低いケースでは消費電力はそう変わらないし、Idle時の消費電力も(HaswellとSandy Bridge-E / Ivy Bridge-Eではマザーがそもそも違うから単純に比較はできないが)ほぼ同レベルというあたり、Ivy Bridge-Eが何かしら不当に消費電力が高いということは無く、まぁ妥当は範囲ではないか、と感じられる。
さて、ここからはHaswellはちょっと抜きにしてSandy Bridge-EとIvy Bridge-Eについて、もう少し細かく分析してみることにした。グラフ55はSandy Bridge-Eの、グラフ56はIvy Bridge-EのSandra Dhrystone/Whetstone実施時の消費電力変動である。
ここではどちらもTurbo Boostは無効にした上で、有効コア数を変化(Ivy Bridge-Eは1~6コアまで可変できるが、Sandy Bridge-Eは1/2/4/6コアの選択のみ)させて、どう消費電力が変わるかを見たものだ。
このグラフ55と56から、Dhrystone/Whetstone実行時のそれぞれの平均消費電力をサンプリングしてプロットしたのがグラフ57とグラフ58である。
破線は、それぞれのプロットしたポイントから近似式を算出したものであるが、ここの結果から
Dhrystone | Whetstone | |
---|---|---|
Sandy Bridge-E | 11.75W/Core | 10.08W/Core |
Ivy Bridge-E | 11.48W/Core | 9.29W/Core |
という数字が算出できた。WhetstoneはともかくDhrystoneに関してはあんまりコアあたりの消費電力に差が見られない気がするが、Sandy Bridge-Eは3.3GHz駆動、Ivy Bridge-Eは3.6GHz駆動という違いがある。この分を補正しないと正確な比較はできない計算だ。
そこで次に、どちらもCoreは6コアにしたままで、動作周波数を1.2GHz~4GHzまで可変にして同じように測定したのがグラフ59と60。そこからDhrystone/Whetstone実行時の平均消費電力をサンプリングしてプロットしたのがグラフ61と62となる。
グラフ61と62を見るとどちらも破線が2段階になっているが、これはSandy Bridge-Eだと3.2GHzあたり、Ivy Bridge-Eだと3.5GHzあたりから急に消費電力が増える傾向にあるからで、おそらくこうしたグラフを見ながら最終的にSandy Bridge-EやIvy Bridge-Eの動作周波数は決められたのではないかと思う。それはともかく、最初のなだらかな方の近似値で見ると
Dhrystone | Whetstone | |
---|---|---|
Sandy Bridge-E | 20.59W/GHz | 18.75W/GHz |
Ivy Bridge-E | 19.35W/GHz | 18.18W/GHz |
といった数字が算出される。「案外に変わらない」というのが率直な意見である。ただし絶対値という意味では1GHzにおける切片がDhrystone/Whetstoneともに30WほどIvy Bridge-Eの方が低く、これが絶対的な消費電力削減として効いている印象である。
この動作周波数による変動のグラフにはコアの動作周波数とは独立して稼動するUncore部の分も入っており、これが一定な関係でグラフの傾きに加味されず、Y軸切片として示されるのではないかと思う。
ここからいえるのは、「Ivy Bridge-Eをオーバークロック動作で使うと、消費電力の上がり方はSandy Bridge-Eとあんまり変わらない」という事だろうか。実際グラフ61と62の3.3~3.5GHz以上の近似値を見る限り、急速に消費電力が上がっているのが判る。
それでも4.5GHz位までの範囲は(このグラフから推定する限り)まだIvy Bridge-Eの方が消費電力は少なそうだが、それを超えるとあんまり変わらないという感じになりそうだ。逆にいえば、待機時とか負荷が低いときの消費電力は、Ivy Bridge-Eの方がSandy Bridge-Eを確実に下回っている訳であるが。
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