――具体的なところをお聞きします。シャアの「赤」といっても、サザビーの赤、シャア専用ザクの赤などいろいろありますが、「シャア専用オーリス」の赤については、どのようなコンセプトでしたか?

どのような赤にするかは悩みました。真っ先に思い浮かべるシャア専用機はザクですが、シャア専用ザクは厳密に言うとピンク色、ピンクと小豆色のツートンカラーです。そのまま車にしたら、おもちゃっぽくてカッコよくならない。だから、ザクを意識するのではなく、シャアの世界観の中でかっこいい赤、車に合う赤を突き詰めていくことになります。

コンセプトカーでは全体をつや消しの赤にしていましたが、市販モデルでは車の下半分をつや消しにしていまして、バンパーなどのパーツにつや消しの赤を使っています。アルミホイールもつやのない黒いものにして……そうすることで、ツートンカラーのモビルスーツ感を狙っています。

(C)創通・サンライズ

――この赤色の名前は?

コンセプトカーの赤は、この車用に作ったもので名前もない個別の赤なんです。市販するシャア専用オーリスの赤は、もともとのオーリスの「レッドマイカメタリック」という色です。バンパーなどには新しい色を開発し、ガンダムの世界観を意識して「マットフィニッシュ・ダークレッド」という名前をつけました。

――コンセプトカーとの大きな違いはどこにありますか?

やはり、色が大きな違いです。コンセプトカーのつや消しの赤を使ってもよかったんですが、量産が難しいのと、傷がつきやすいのとで、違う赤を検討したんです。 もうひとつの大きな違いは、「パーソナルカスタマイズ」と呼んでいますが、パーツ販売の手法を取ったことです。お客さまが自分のほしいパーツだけを選んで買うこともできる、そんな売り方なんです。

――どうしてパーソナルカスタマイズという手法を採用したのですか?

やはり車というのは数百万円になる高額な買い物です。そのため、いきなり「シャア専用オーリスが300万円です」と言われても、なかなか買いにくい。オーリス自体は170万円代から買えますので、例えばエンブレムだけを買っていただいてもいいんです。ほしいパーツだけ買い足してもらう、そんな買い方ができるようにしました。自分がほしいパーツだけ選んでもらって、組み合わせをプラモデルみたいに楽しんで欲しいんです。

それと、ファンの中には、「コンセプトカーの大きなジオンマークが目立ちすぎるなぁ」という声もあって、デカールがなくてもホイールの小さなロゴやマークとか、フロアマットなど、さりげないところで「シャア専用機に乗ってるんだ」という優越感を感じてもらえればいいと思います。

――「シャア専用オーリス発売!」というのを字面だけ見ると、「トヨタが痛車を出すの?」って誤解する人もいるかと思います。ただ、単なるファンアイテムである痛車のようなものとは、一線を画しています。

(C)創通・サンライズ

まず私たちのゴールは、オーリスをカッコいいって思ってもらうことなんです。コンセプトカーを作る時にも、「ザクみたいにダクトをゴテゴテにつけて、客寄せパンダにしたらどうか」って案もあったんですが、車としてのカッコよさがなくなっちゃいますよね。それではファンも喜んではくれないでしょう。

ドアに付いている大きなジオンマークがなくても、普通にかっこいいオーリスとして成立する、それが大切です。でも、アルミホイールにジオンマークがついていたり、細かい部分で遊び心を満たしてもらえる。車内にもいろんな意匠を仕込んでいるんですよ。走行するとモノアイが光るとか。これはぜひ実物を見ていただきたいですね。で、この方が結果的に、ファンにも受け入れてもらえると思うんです。もしドアにシャアの顔がドカンと入ってたら、まさに痛車ですよね。それだとファンも認めてくれなかったでしょう(笑)。……続きを読む