――多くのアメリカ人もそうだと思いますが、あなたの家族で第二次世界大戦に関わった人たちはいましたか?
そうだね。何人かいるよ。僕の父の父とかね。でもおじいさんには会ったことはなかった。でも先ほども言ったように、僕は脚本にとても感動した。そしてどんな形でもこの物語に関わりたいと思ったんだ。
――現代の人たちにとって、本作の題材はどんな魅力があると思いますか。
それは観客に委ねるよ。人々が今じゃなくても、将来において、類似するものを見つけてほしいな。僕はセンチメンタルなんだ。とても楽観的に、希望的に、ある意味ナイーブに、この作品にとても引かれたんだ。僕はただこの作品をとても気に入って、それに参加したいと思っただけだ。そしてできる限り美しく、すべてを注いで作ろうとしたんだ。そしてそれを人々に委ねる。人々はそれを見て経験するわけで、彼ら次第だよ。そこから持ち帰れるもの、なにかを持ち帰るのは彼ら次第なんだ。
――なぜ、フェラーズは日本人の心を深く理解することができたのでしょう。
愛する人がいたからだろうね。「あや」だよ。彼の人生を大きく変える出会いだったんだ。初めて台本を読んだときから、2人のお互いを思う気持ちがすごく伝わってきたよ。2人の出会い、そして別れ。あやの父親が危篤だという知らせを受け、彼女は日本に帰国し、2人は離れ離れになってしまう。最終的には、"戦争"が2人の別れを決定的なものにしてしまう。悲しみに打ちひしがれるフェラーズは、心の穴を埋めたいがために、日本文化を必死になって勉強するんだ。結局は、彼女という人間をもっと理解したかったんじゃないかな。
あやはフェラーズのことを愛していたのだろうか。愛していたのなら、なぜあのような行動をとったのか。フェラーズは答えが欲しかったんだと思う。アメリカ人の彼には理解できなかったんだ。フェラーズは、あらゆる角度から日本の言葉と文化を追求する。彼の知識は軍内部での地位を高めるにつれ専門性を増していき、いつしかアメリカ陸軍きっての日本通となる。真珠湾が攻撃を受ける前から、アメリカは日本の政治的野心について気付いていた。フェラーズによる分析があったらだ。つまり、アメリカは戦争が始まる前から、彼の経験や知識を活用していたということになる。
――なぜ、ダグラス・マッカーサー元帥はフェラーズに、天皇の処遇について意見を求めたのだと思いますか。
彼が適任だと思ったからじゃないかな。ダグラス・マッカーサー元帥がフェラーズをとても信頼していたからだと思うよ。彼の専門的知識や任務に対する姿勢からも、フェラーズならこの問題をしっかり調査してくれると考えたんだ。必ず一番正しい答えを導き出してくれると思っていたからだと思う。だけど、フェラーズはなぜ自分がこの任務を命ぜられたのか、マッカーサー元帥に対して疑問を抱きはじめるんだ。自分に任務を任せたのは、天皇の運命を案じてというよりも、大統領選への出馬という目標の方が大きいのではないか。自分が下す決断が、大統領選を控えたアメリカの人々の目にどう映るのか、そっちの方が気掛かりなのではないか。
リクター(コリン・モイ マッカーサーの部下でフェラーズの調査を阻む人物)は、フェラーズにマッカーサー元帥に対する不信感を植え付けようとする。でも、僕はこう思うんだ。マッカーサー元帥とフェラーズの関係は、どこか父親と息子の関係に似ている。フェラーズの心からの敬愛は、マッカーサー元帥が自分にないものを持っていたからだろう。1945年のフェラーズは、あまり冗談も言わない。まるで心に大きな穴が空いたような様子なんだ。一方でマッカーサー元帥は…。何て説明すれば良いのか分からないけど、フェラーズはマッカーサー元帥の熱意に心から共感したんじゃないかな。
――トミーや日本の役者との共演はいかがでしたか。
どちらもすばらしかったよ。トミーとの仕事は大好きだった。彼は完全なプロだ。すごく準備してくるし、すごく集中していた。とても楽しんだよ。そして、日本人の役者との仕事もすばらしかった。日本人には、彼ら独自のアクティングのスタイルがある。美しくて、とてもシンプルなんだ。そして、言葉はとてもクールだった。彼ら全員との仕事をとても楽しんだし、彼ら全員がとてもナイスな人たちでもあった。グレイトだったよ。
――この作品をやったことで、日本の人々や文化についてもっと理解することになったと思いますか?
そう思うよ。それに対する答えはイエスだね。
――それでは最後に、日本の皆さんがこの映画を見て、どんな反応をすると思いますか?
難しい質問だね。実のところ、そういうことはあまり考えないようにしているんだ。とにかく、撮影中は自分の役だけに集中している。映画を見た人たちが何を感じるのか、どんな反応を見せるのかは考えていない。これは、第二次世界大戦直後を舞台に伝えられる、美しいラブストーリーでありながら、歴史上重要な出来事についても描かれている。実ることのなかった愛。別れてしまった2人。そして、戦争も映画の大きなテーマの1つだ。この映画を見た人には、そんな時代に深い絆で結ばれた2人の愛に感動してほしいと思う。歴史から学ばなければ、また同じことが繰り返されてしまう。二度と同じ過ちを繰り返さないためにも、未来を創る僕たちの責任について、この映画を通じて考えてほしいと思う。
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