トミー・リー・ジョーンズ、マシュー・フォックス、初音映莉子、西田敏行、桃井かおりといった日米の名優が名を連ね、『ハンニバル・ライジング』(2007年)などで知られるピーター・ウェーバー監督がメガホンを取った映画『終戦のエンペラー』が7月27日から公開をスタートした。第二次世界大戦後の日本を舞台に、トミー・リー・ジョーンズ演じるダグラス・マッカーサーが、部下であるボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)に「戦争の真の責任者を探す」という極秘調査を命じたことから物語は展開する。

日本文化を愛するフェラーズでさえ、危険で困難な任務だったが、連合国、マッカーサー、日本人の元要人たちの思惑が交錯する中、謎が1つ1つ解き明かされていく。また、本作では、戦後の日本を描きながらフェラーズと初音映莉子演じるあやとの恋愛にもスポットをあてた。この重厚な作品にフェラーズを演じた、マシュー・フォックスはどのような思いで挑んだのか。インタビューでその真意を探った。

マシュー・フォックス
1966年生まれ。アメリカ・ワイオミング州出身。1994年に出演したテレビドラマ『サンフランシスコの空の下』がきっかけで一躍脚光を浴び、ドラマ『LOST』(2004年~2010年)で主演を務めた。映画の最新作は『バーニング・クロス』、『ワールド・ウォーZ』など。

――まずは、映画『エンペラー(原題)/Emperor』の内容についてお聞かせください。

映画の舞台は、1945年、第二次世界大戦直後の日本。マッカーサー元帥が、連合国に降伏した日本に到着してからの10日間の話なんだ。天皇を裁判に付すべきか、あるいは退位させず占領統治を円滑に進めるのか。それを見極めるための調査が、ストーリーの核となる重要な部分になっている。1945年の10日間に繰り広げられる、いわば軍事・政治サスペンス映画。一方で、若くて気さくだった頃のフェラーズが、「あや」という女性と恋に落ちる1932年と1940年へのフラッシュバックシーンもある。

――本作に出演していかがでしたか。

この映画に関われて、僕はとても誇りに感じている。ストーリーにとても感動したんだ。映画の中のラブストーリーにとても感動した。また、こういった歴史についてはほとんど知らなかった。新しい歴史を学ぶのは大好きだよ。僕は歴史のことはよく知らないと感じているし。だから、いつでもストーリーテリングと、過去に起きた事柄について何か学べる機会を組み合わせることができれば、それ以上のことはないと感じるんだ。

――この役を準備する上でどんなリサーチをしましたか?

そんなに多くはしなかった。なぜそんなにやらなかったかというと…僕は、「From the Ashes of Defeat」という本を読んだんだ。それが本のタイトルだったと思うけど…この時代の東京について書いているとてもいい本なんだ。降伏した後の日本についてのね。でも…歴史上の出来事を基にしたフィクションを役者として語るのは、いつも興味深いものだよ。その歴史を学ぶことはどのぐらい僕に役立つのか? または、僕自身に不利になることもあるのか? といった微妙なところを考えないといけない。

最初に脚本を読んだ時、フェラーズは架空のキャラクターだと思ったんだ。彼はこの物語を語るための架空のキャラクターだとね。そしてリサーチの最初の数日で、明らかに彼が実在する人物で、日本に実際にいて、マッカーサーの右腕だったことを知ったんだ。でも誰もボナー・フェラーズについてほとんど知らなかったから、僕たちが知っている歴史的なことにそれほどフォーカスしない方がよいと感じたんだ。なぜならそれらの多くは曖昧だったからだよ。

それで、フェラーズがストーリーに最も貢献できる方法で演じることを心がけたんだ。だから、マッカーサー役のトミーの方が、ずっと大変なチャレンジがあったと思う。なぜなら、20世紀のアメリカ軍人で最も象徴的な人物の1人であるマッカーサーを演じていたわけだからね。でもフェラーズはその舞台裏にいる人物だから、彼にフォーカスするのがベストだと感じたんだ。

――日本におけるフェラーズの役割とは、どのようなものだったのでしょうか。

フェラーズは、マッカーサー元帥の右腕であり、アメリカ陸軍きっての日本通だった。1932年のあやとの出会いから、彼の人生は大きく変わる。軍に入隊するんだ。1945年には准将という地位を得ていた。全ては1932年に美しい日本人女性と恋に落ちたから、といっても過言ではないと思う。フェラーズは日本語を勉強し、日本文化についての知識を高め、第二次世界大戦中はマッカーサー元帥の軍事秘書として対日心理作戦の責任者を務めた。1945年、マッカーサー元帥と共に日本に上陸したフェラーズの最初の任務は、日本軍上層部や政府関係者らを戦争犯罪人として逮捕することだった。

そして、フェラーズはもう1つの重要な任務を課されることになる。天皇の処遇についての意見書を提出することだった。天皇を退位させず占領統治を円滑に進めるのか。映画の前半部分では、戦争犯罪人を洗い出し犯罪者たちを捕らえるという任務を任されたフェラーズが、マッカーサー元帥からの次なる任務を命ぜられることで、さらに大きなストーリーが展開されていくんだ。

10日間という制限の中で、苦悩するフェラーズの姿。天皇の処遇は、フェラーズの意見書次第だったと言っても過言ではないと思う。フェラーズは、限られた時間の中で意見書をまとめ、マッカーサー元帥に提出しなければならなかったんだ。その一方で、フェラーズはあやの消息を求めた。果たして、あやが戦争を生き抜いたのか心配だったんだ。そんな中で調査を続けるフェラーズの心境は複雑だったと思う。……続きを読む。