ワコム主催によるクリエイター向けセミナー「Wacom Creative Seminer vol.14 ~for Illustration~」が、都内にて開催された。今回の講師はイラスト制作会社MUGENUPより、ディレクターの所澤氏、アートディレクターの金枝氏、イラストレーターの芳賀氏の3名だ。
MUGENUPの主な事業は、ソーシャルゲーム向けを中心にしたイラスト制作。ネットを通じたクラウドソーシングを活用しながら、効率的にクオリティの高い作品ができるよう、アートディレクターがサポートを行っているのが特徴となる。
金枝氏によれば、「もう少し良くなりそうなところで壁にぶつかってしまう人が多い」という中、今回は「モバイル端末・ゲームで映えるイラストにブラッシュアップする技術」をテーマに、実際の作業を公開しつつ、さまざまなノウハウが紹介された。
「良いイラスト」と言っても基準は複数あるが、今回の講座においては「モバイル端末のような小さな画面でも映えるイラスト」が良いものだと定義された。モバイルゲームに限らず、小さな画面やサムネイルで作品を判断される状況が増えている現在では、必要な魅力のひとつだ。
構図とキャラクターデザイン
まずは、イラストの構図から解説が始まった。金枝氏は構図のポイントが「動き・遠近・画面占有度」であると説明する。画面に対して水平・垂直に近い線が目立つと動きが感じられないので、躍動感を与えるために枠に対して斜めの動きを入れる事が望ましい。ポーズ自体に動きがあっても躍動感が薄い場合は、ここを見直した方がよさそうだ。
また、画面上のモノとモノが重なる箇所や、画面の外に飛び出す部分があることで奥行きが増し、遠近感が明確になる。作例では手に持つロッドの先端(ハート)とキャラクターの足、髪と服などの関係が修正され、奥行きを見せると共に視線の誘導も整理された。
カードゲームでは、画面占有度が高いとレアリティ(いわゆる「レア度」)が高く見える傾向があるため、不自然な空白がないよう髪や服の動きを見直して埋めていく。ただし、やみくもに埋めるのではなく、視線の誘導に注意し、注目させる部分とそれ以外を意識して分けるのがポイントだ。"見せ場"の明確な作品ほど、サムネイルでも目を引きやすくなる。
次に、キャラクターデザインについて。「魔法少女」という設定からイメージされる可愛らしいテイストに合うよう、顔に萌え絵風のデフォルメが加えられた。具体的には、口元は舌や下唇などの描写を減らし、眉は細く短く、目尻も下げて優しげな表情になっている。