モニターメーカーのEIZOは7月26日、都内にて3DCGやDTP、Webデザインなど多様なクリエイティブ分野を対象としたセミナー「EIZOセミナー for クリエイター」を開催した。
同セミナーでは、DTP・Web・映像・3DCG等の現場で働くクリエイターおよびシステム担当者を対象に、カラーマネジメント(以下、カラマネ)を行う意義や、導入するための基礎知識、そして実際に同社のカラーマネジメント対応モニター「ColorEdge」シリーズを導入した企業の事例などが紹介された。
3DCG用のカラマネのデモ展示。3Dのレンダリング画面と、Photoshopで開いたファイルの色が、それぞれに色管理を実施することで統一されている |
ColorEdge CGシリーズでは、内蔵キャリブレーションセンサーによる自動キャリブレーションが可能。管理作業の時間と手間を軽減できる |
会場には、3DCGやDTPなど業種に合わせてセットされたデモ展示が設置され、参加者が同社担当者の説明を受けながら実際の作業や効果を体験していた。また、キャリブレーション可能な4K2K液晶モニター、iMacとのデュアルモニター使用など、各種クリエイター向け機器や活用法も展示されていたほか、受講者にはカラマネのノウハウを分かりやすくまとめた"教科書"(非売品)を無料で配布していた。
DTP・Web制作とカラーマネジメント
トッパングラフィックコミュニケーションズ 小島勉氏 |
最初に、「DTP・Webコンテンツ制作者のカラマネ運用」と題して、トッパングラフィックコミュニケーションズ プリンティングディレクターの小島勉氏から、カラマネの概要とDTP・Webのカラマネのポイントについて講義が行われた。
小島氏は、カラマネを「異なる機器間の色合わせ技術」と定義。それを実現するために重要な役割を果たすもののひとつに、「ICCプロファイル」があると解説した(Windowsの場合はICCプロファイルに準拠してマイクロソフトが策定した「ICMプロファイル」となる)。ICCプロファイルとは、人間の可視領域の中でそれぞれのデバイスの色空間(カラースペース)を定義したもの。標準的なRGB色空間として定められた「AdobeRGB」、「sRGB」や日本の標準印刷基準の「JapanColor 2001 Coated」などがある。
例えば、RGBのプロファイルでは各々の持つ色域を各色0~255までの数値で表現しているが、その値は相対的なもので、同じ数値でもプロファイルが異なれば表現される色は異なってしまう。元のプロファイルから目的のプロファイルへの変換には、一度絶対的な尺度(CIE L*a*b*など)に置き換えることで、異なる色空間同士の差を最小にするのがカラマネの仕組みだ。
印刷の仕組みやDTPのワークフローを踏まえた上で、小島氏は「DTPのカラマネ運用 6つのポイント」と題した、カラーマネジメントに必要な注意点を挙げた。
1.プロファイルで運用する(RGBデータにはプロファイルを埋め込み、破棄しない。CMYKは%値そのものが重要なため、埋め込まなくてよい)
2.モニターキャリブレーションを設定する(印刷は色温度5,000Kで統一)
3.観察光源を整えて「見え」を揃える(色評価蛍光灯を使用する)
4.出ない色は出ないと理解する(印刷で再現できる色域を意識する)
5.色見本、色校正の意味を知る
6.標準印刷と印刷会社のワークフローを知る(日本の印刷はJapanColorやJMPAなどで標準化されている)
「DTPのカラマネ運用 6つのポイント」の5番目の項目の解説。色見本は印刷してほしい色を伝えるものであり、必ずしも印刷の色域に収める必要はない。一方、色校正は印刷されてくる色を予測するものだ |
蛍光灯の種類によって見え方が異なる。右は色評価蛍光灯、左は一般的な3波長蛍光灯。印刷物をきちんと評価するには色評価蛍光灯を用意した環境が必要となる |
また、「Web/デジタルコンテンツ 3つのポイント」として、下記の3点を挙げた。
1.設定は色温度6,500K、sRGBに則る
2.参照物に色を合わせこむ場合は、色評価蛍光灯(D50)の環境で行う
3.ColorEdgeのデバイスエミューレーション機能を積極的に活用する
小島氏の講義では「DTP」、「Web/デジタルコンテンツ」に関して語られたが、色の性質や印刷の基礎知識、カラマネの概略などが多く語られたため、3DCGなど他分野でのカラマネを理解する上でも参考になる部分が多い内容となっていた。