一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)の参加企業の関係者

2013年5月、地上放送および衛星放送事業者9社、CATV事業者1社、通信事業者3社、テレビメーカー6社、商社および広告代理店2社の関係企業21社が参加して、4K/8Kなどの次世代放送の実現を目指す一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NexTV-F=Next Generation Television and Broadcasting Promotion Forum)が設立された。日本における4K/8K、スマートテレビなどの次世代放送サービスを早期に実現するために、送信や受信に関する規定や仕様の検討、実証および試行的な放送などを行っている。

具体的には、4K放送は、2014年をめどに本放送が開始され、さらに2016年にはフルHDの16倍となる8K放送の試験放送を開始。2020年には8K放送の本放送が開始される予定だ。

次世代放送推進フォーラムの須藤修理事長は、「東京都が名乗りを上げている五輪が開催される2020年には、多くの視聴者に、次世代の放送サービスを楽しんでもらえるだろう。これに向けて、オールジャパンの体制で取り組んでいく」と宣言し、「日本が誇る最先端の放送、ネット、家電の技術を生かして、世界で最も速く、最も高度な放送サービスを実現することを通じ、日本の放送文化/映像文化の一層の向上を図る。これは国民生活を豊かにするとともに、日本の産業競争力を強化することにもつながる」などと語っている。

世界のテレビ市場で苦汁を飲んだテレビメーカー各社が4Kテレビに率先して乗り出しているのも、日本がこの規格をリードし、そこに日本の技術を発揮できると見込んでいるからだ。

ディスプレイサーチの調査によると、4K対応テレビの全世界出荷台数は、2015年には700万台を突破するとの予測が出ている。だが当然、この技術がガラパゴス化したり、フルHDテレビ市場のようにコモディティ化した段階で日本のテレビメーカーが競争力を発揮できなかったりという事態も想定され得る。これまでの学習効果がどう生かされるかが、日本のテレビメーカーに課せられたテーマだといえよう。

4K市場でパナソニックがいまだプレゼンスを示さないワケ

パナソニックの津賀一宏代表取締役社長

ところで、4K対応テレビでは、パナソニックが出遅れているようにみえる。

しかし、関係者の話を聞くと決してそうではないようだ。現在各社が投入しているのは、4K対応テレビであり、4K放送対応のチューナーを搭載した4Kテレビではない。放送が始まっていないのだから、それは当然のことだといえる。4K放送が開始されれば、現在の4K対応テレビはセットトップボックスなどを追加して4K放送に対応する必要が出てくるだろう。パナソニックは、2014年の4K本放送開始のタイミングを待って、満を持して4Kテレビを投入する考えのようで、その準備は整っているようだ。

というのも、もともとテレビチューナーを開発できるメーカーは数が少ない。4Kテレビにおいても、チューナーの開発はパナソニック、ソニーなどに限定される。つまり、4K放送が始まってからチューナーで本格ビジネスを展開できるパナソニックは、慌てて4K対応テレビに参入する必要はないともいえる。

4K対応テレビを見送り、4Kテレビと4Kチューナーでビジネスを展開するのがパナソニックの戦略。BtoBビジネスに舵を切ったパナソニックらしい経営判断ともいえそうだ。