だが、この時点でBalic氏の報告に懐疑の目を向けているメディアも多く、前述のVentureBeatも何点かの部分で疑問を呈している。例えばBalic氏の最初の報告では「(サンプルとするために)73ユーザー(すべてApple社員)の詳細情報を取得」としていたのに、すぐ後に「10万ユーザー以上の詳細情報を持っている」と言い換えている。また同氏のBlogが半年以上更新されていない点にも触れ、「その間ずっとApple関連の作業に関わっていたのか?」と活動実績にも疑問を呈しているようだ。
一方でサイトを閉鎖したAppleも22日になり開発者らに対して電子メールを送付し、不便を強いていることを謝罪しつつ、システム全体のオーバーホールならびにサーバソフトウェアのアップデート、さらにデータベース全体の再構築を行っていることを報告している。一通りの作業が終わるまではサイトは再開されないという意味だ。盗難された可能性がある情報はApple IDや名前、電子メールアドレス、住所等だが、どの程度のユーザーが対象で、どこまで情報が盗られた可能性があるかは現時点で報告されていない。ただし、Appleでは必要な情報はすべて暗号化されているため、データの盗難が直接個人情報流出につながる可能性は低いとの立場だ。ただし一部ではApple IDのパスワードリセットに関する案内が届いているという話もあり、最低限の予防策は必要となるかもしれない。
今回の件に関する周囲の反応
今回のハッキング騒動について、ここ最近頻発している大手企業をターゲットにしたハッキング事件になぞらえるメディアは多い。例えばBloombergでは2011年のソニーPlayStation Networkへのハッキング事件をサンプルとして挙げており、最終的に2カ月のダウン期間とビジネス上の損失となった傷跡の大きさを紹介している。一方で今回の事件の影響は軽微という専門家らからのコメントも紹介しており、影響範囲がもしAppleが報告しているレベルのものであるなら、開発者は「以前よりスパムメールが増える程度」と意に介さないとしている。またWall Street Journalによれば、App CubbyのDavid Barnard氏は「開発者サイトに登録している住所は私書箱を使っているし、パスワードも同サイト専用のものでまったく問題ない」とコメントしている。
ところが実際の現場開発者らの反応はさまざまで、Huffington Postでは「3日間沈黙していると思ったら、不十分な内容の説明メールを送りつけてきた」「Appleは必要十分な情報を提供して開発者らを安心させている」という両極端な意見を紹介している。だが全体にAppleが説明不足で初動が遅いという意見が多いという印象があり、実際原稿執筆時点で6日も進展が見られず、新たな情報がない時点で、不親切だといえるだろう。現時点で具体的なアナウンスは行われていないが、Appleではサイト停止期間を受けて、開発者らの有料契約サブスクリプションを延長する方針を示している。