「書道ガールズ!! わたしたちの甲子園」 WOWOWでの放送:2013/08/14(水) (C)NTV |
「書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」は、「書道パフォーマンス甲子園」に挑んだ女子高生たちを描いた王道青春映画だ。ベッタベタの青春映画のフォーマットに則って制作された作品で、「桐島、部活やめるってよ」とは方向性こそ違うものの、こちらもまた青春映画の傑作だと言える。
なぜなら、本作には「友情」「挫折」「情熱」といった青春を描くために必要な要素がすべてそろっているからだ。中途半端に突き抜けられない青春映画ほど見ていて辛いものはないが、本作はその点がよくできていて安心して爽やかな気分に浸ることができる。
ストーリーは、"紙の町"として知られる四国中央市を舞台に、書道部の女子たちが「書道パフォーマンス甲子園」を開催するというもの。"単に女子高生ががんばりました"という話ではなく、寂れていく地元を活性化させるための企画でもあるというところが、昨今の社会事情を反映していてなかなかに奥深い。
それに何より、とにかく書道部のメンバーがみんな良い。書道に真摯に向き合おうとするあまり他の部員と衝突する里子(成海璃子)や、ムードメーカーの香奈(桜庭ななみ)、夢中になると周りが見えなくなる清美(高畑充希)など、それぞれに個性豊かである。
もっとも、その個性がぶつかり合うこともある。たとえば書道部臨時顧問の池澤(金子ノブアキ)の書道パフォーマンスに感銘を受けた清美が真似をする場面では、書道パフォーマンスに反対する里子と部員たちが激しく対立する。だけど、これはどちらが悪いわけでもない。それぞれの書道に対する思いにズレがあって、お互いがそのズレを受け入れられないだけだ。青春時代に何かに夢中になることとは、そういうことなのだ。部活に熱く打ち込んでいた人なら、きっと彼女たちの思いには共感できるだろうし、懐かしくも甘酸っぱい気持ちに浸れるだろう。
もうひとつ、中盤以降に書道パフォーマンス甲子園の開催へと動く書道部員たちの一生懸命な姿がいい。だって、それまで書道パフォーマンス甲子園なんてイベント、なかったんだよ? どう考えたってこんな試み、無謀すぎる。これが仕事で、会社として予算を作って仕掛けるというなら別だけど、彼女たちには何もない。書道に対する熱い思いしかないのだ。大人だったら、「そんなバカなこと、成功しないからやめなさい」と言うに決まっているし、実際に里子の父親は猛反対する。「そんなことのために書道をやらせているんじゃない!」と。だけど彼女たちはやめない。なぜなら、大人が商売で企画するイベントとは、そもそものスタート地点が違うからだ。打算ではなく、書道と地元への熱い思いがまずあって、その延長に書道パフォーマンス甲子園がある。その道はまっすぐで、だから彼女たちはくじけないのだ。
不況にあえぐ地方という、決して軽くはないテーマを抱えた本作だが、そんな暗い空気を吹き飛ばしてくれるのはいつの時代も若者の屈託のない笑顔なんだなぁということを思い出させてくれる映画だった。
冒頭にも述べた通り、このタイプのまったく違う2本の青春映画が、8月にWOWOWで放送となる。詳細はこちらをご確認いただきたいが、どちらも現代という時代を象徴した作品であり、なおかつ映画としても本当に面白い傑作だ。青春時代の熱い思いを忘れかけている人、あるいはルーチンワークばかりの日常生活に何かしらの刺激を求めている人にぜひご覧いただきたい。