普段あまりクラブという場所に行くことはないのだけど、DJなんかをやっている知人から聞いたところによると、「最近のクラブでかかる曲はバラエティに富んでいる」のだという。

従来のクラブミュージックはもちろんのこと、それ以外にもアイドルソングだったり、アニソンだったり、J-POPだったりと、盛り上がれるなら"何でもあり"なのが最近のクラブらしいのだ。

そんな多様化するクラブカルチャーを、ある方向性から体現しているイベントが「VocaNicoNight(ボカニコナイト)」だと思う。ボカニコナイトはその名の通り、ボーカロイド曲オンリーのクラブイベント。DJ陣には有名ボカロPが名を連ねており、ノンストップでリミックスされたボカロ曲を流し続けるというボカロ好きにはたまらない空間なのである。

ボカロ好きならボカニコナイトはぜひ一度体験してほしいイベント

これまではドワンゴが運営する六本木のクラブハウス・ニコファーレで開催されていたボカニコナイトだが、今年の夏は場所を新木場StudioCoastに移し、これまでにない規模での開催となる。

それに先がけて、7月14日にはニコファーレで前夜祭となる「VocaNicoNight- Pre-Party -」が行われた。プレイベントとは思えないほどの盛り上がりを見せた本イベントをレポートしていこう。

スタート前から会場はすさまじい熱気に

今さら言うまでもないが、ニコファーレは六本木の伝説的なディスコだったヴェルファーレの跡地をドワンゴが買い取ってオープンさせたクラブハウスだ。壁面すべてをLEDモニターが取り囲み、生放送で書き込まれたコメントがそこを流れていく様はなんとも未来的である。

ニコニコ動画関連の公式イベントや、記者発表会、時にはテレビ番組の収録用に貸し出したりもしているニコファーレだが、本来想定している用途はもちろんクラブイベント。その意味で、ボカニコナイトはニコファーレの正しい使い方ともいえる。

この日はプレイベントということもあり、出演者は八王子P、DJ'TEKINA//SOMETHING、きくお、かめりあの4名とやや少なめ。とはいえ、ボカロ好きならテンションが上がること間違いなしの豪華なメンツだ。

彼らはボカロP、つまりボーカロイドを使って作詞・作曲を行うクリエイターである。だが、時にはこうしてステージに立ち、DJとしてハイレベルなパフォーマンスを披露したりもする。いやはや、才能というのは、持つ人のところに集まるものだ。

イベントの先陣を切って登場したのは「DJ'TEKINA//SOMETHING」。普段は「ゆよゆっぺ」としてボカロ曲を発表しているが、DJとして出演する際は「DJ'TEKINA//SOMETHING」という名前になる。すでにメジャーデビューを果たしており、八王子Pと共に今年の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」にも出演が決定しているというからすごい。数年前は一部で盛り上がりを見せていただけだったボカロというカルチャーが、今や音楽業界にしっかりと定着したことを実感させられる。

DJ'TEKINA//SOMETHING

会場に詰めかけた観客から歓声が上がる中、DJ'TEKINA//SOMETHINGが一曲目に選んだのは「Lilily☆Nation」。比較的最近のボカロであるLilyを用いたポップな楽曲だ。そこから「Sky is the limit」、そして大ヒットナンバーである「magnet」「Just Be Friends」へとつないでいく。「スイートフロートアパート」というちょっと意外な曲を持ってきたかと思えば、「ハッピーシンセサイザ」や「ダブルラリアット」という定番曲も絶妙なタイミングで登場し、会場の盛り上がりは早くも最高潮。DJ'TEKINA//SOMETHINGの特徴は高いアレンジ力と、つなぎの巧さ、そしてバンド仕込みの激しいパフォーマンスである。一言でいえば"めちゃくちゃかっこいい"のだ。……続きを読む