「Cintiq 22HD touch」を導入した場合の長所

それでは、「Cintiq 22HD touch」を制作環境に導入した場合、どういったメリットがあるだろうか。総括していこう。第3回の記事でも触れたとおり、Cintiqは画面上の狙った部分を直接ペンタッチできるので、余計な力が入りづらく操作が自然だ。操作部分と結果の画像が直結しているので、細かい部分を丁寧に描きこみやすい。自分が意図した筆圧がスムーズに伝わっているような感覚もより強いと思う。

そして、同じようなサイズの専用モニターで画像を見る場合に比べ、自然と画面を近くで見て作業することになるので、21.5型という画面が実際より広く感じるという特徴もある。この特徴も、細部を丁寧に詰めていく際に有利に働くと感じた。

「Cintiq 22HD touch」を導入した作業環境

パスをひく際にも、精細なマスクを描く際にも、Cintiqでの作業は非常にストレスが少ないし、長時間集中して作業を行った場合の手の負担も少ない。画面表示は良好で、「EIZO CG」シリーズのような、モニター専用機の最高クラスほどの性能こそないものの、プロ用レタッチに十分なモニター性能を持っている。自分の事務所やスタジオで、細かい部分までアラが出ないように注意しながら大きな画像を合成したり、写真上に存在しないパーツをゼロから描きこんだりするような作業が多い方に向いていると言えるかもしれない。

「Intuos5 small」を導入した場合の長所

一方、「Intuos5」を作業で用いるメリットは、まずはスピードと機動力が大きいと思う。環境設定の「マッピング」から「タブレット操作エリア」を狭めに設定すれば、ペンを持つ手をほんの少し動かすことで画面のあらゆる場所を素早くクリックすることができるので、作業スピードを極限まで速めることが可能だ。

「Intuos5 small」を導入した作業環境

画像を直接タッチしないということは、レタッチしている箇所が手で隠れて見にくいということがない、ということでもあるので、その点でも素早い判断ができるといえるだろ う。「Cintiq」のほうが細部の描き込みに有利なことは繰り返しお伝えしているが、それは比較の問題で、「Intuos」が細かいレタッチ作業に不向きであるということでは決してない。幾多のトップレタッチャーに愛用されているIntuosは、高度なレタッチ作業にも十分な性能を持っている。

また、smallサイズは軽量かつコンパクトなので、荷物が最小限にまとめられ、撮影の立ち会いなどの際にも非常に取り回しがしやすい。Intuos5はワイヤレス通信も可能なので、その点も機動力アップに有利だ。あらゆるレタッチ用途にオールマイティーに使用できるペンタブレットと言えると思う。

「Cintiq 22HD touch」を使ってみて

ここまで計4回にわたって「Cintiq 22HD touch」を見てきたが、まず驚いたのがモニターの色表示性能が予想以上だったことだ。EIZO製モニターと表示傾向にわずかな違いがあるものの、キャリブレーション環境がきちんと整えられることに魅力を感じる方は少なくないのではないだろうか。

液晶一体型ペンタブレットの場合、「タブレット作業エリア」を狭くして使うのはやや使いづらいと思うので、画面と1対1で使うことを考えると、21.5型というサイズであることで作業スピードがややダウンするかな?とも思ったが、ここでマルチタッチに対応していることが生きてくる。例えば、右手でペンを持った時に画面の左上をクリックしたい場合は、左手の指でタッチするなどの工夫によって、スピードと精細な操作感を両立したレタッチが可能になると思われる。

「Cintiq 22HD touch」は作業時に疲れにくく、液晶の発色もプロユース級のデバイスだった

「Cintiq 22HD touch」のペンタブレットとしての操作感は、さすがイラストレーター業界で支持されているだけあって、個人的にはIntuosシリーズ以上で、現在流通しているペンタブレットデバイス全ての中で最高峰と言って差し支えないのではないかと思う。そして、液晶一体型ペンタブレットで「画像に直接描いている感覚」を得られるということが、とても自然で、体への負担も少ないものなのだ、ということも実感した。筆者個人としては、液晶一体型ペンタブレットに対する印象は、実際にテストしてみて大きく変わったと言って良いと感じている。



御園生大地
フォトグラファー・レタッチャー・3DCGクリエイター。1974年東京生まれ。東京ビジュアルアーツ卒業。撮影会社に12年間在籍後、2013年からフリーランスとして活動。