深夜便の羽田は、会社帰りのフライトに最適
羽田空港と成田空港、このふたつの空港を上手に活用できれば、空の旅がぐっと快適なものになる。そのひとつの方法として、行きと帰りで空港を変えてみるのもいいだろう。
日本は長期の休みが取りにくい社会。ならば休暇を目一杯使って海外旅行を楽しみたいもの。例えば、日本航空(JAL)は羽田と成田の両方からパリへの直行便を運航しており、羽田便は深夜0時40分発。都心に勤める人なら、会社が終わってそのまま空港に向かえば余裕で乗れる時間だ。一方の帰国便にはパリを昼前に出て、羽田に6時半に着く便や、現地を19時半に出て、成田に14時半に着く便などがある。
もし、朝早く着いて会社に行きたいなら羽田着便を使えばいいし、現地になるべく長くいて遊びたいなら、後者の19時半にパリを出て成田に14時半に着く便に乗る。そうやって使い分けるのだ。
乗り継ぎ便のスケジュールで使い分け
前述したキャセイやシンガポール航空、さらにはソウル便を運航する大韓航空やアシアナ航空、台北便を運航するエバー航空、バンコク便を運航するタイ国際航空、世界各地に就航する全日本空輸(ANA)など、羽田便を運航するエアラインの多くが同じ行き先の成田便を持つ。だから、ふたつの空港を上手に使い分けられる行き先も多数あるというわけだ。更に羽田便と成田便があることで、乗り継ぎに便利な方を選ぶという使い方もできるようになった。
今年6月に羽田~ドバイ便を就航したエミレーツ。このエアラインはドバイだけでなく、ヨーロッパやアフリカ各地へも乗り継げるが、成田便がドバイに深夜3時10分に着くのに対し、羽田便は7時5分に着く。そのため、アフリカを中心により短い時間で乗り継ぎができる行き先が増えた。
安く行きたいなら成田発のLCCを
また、成田空港で最近よく目にするのが低コスト航空会社(LCC)だ。都心から遠い成田は、世界基準で見ればLCCの運航に適した空港であり、多くのLCCが成田からの国際線の就航を検討し、実際幾つかのLCCが飛び始めている。
オーストラリア方面のジェットスターが既に飛んでおり、台北・シンガポール行きのスクートも2012年10月から成田に就航した。スクートは片道1万円程度でシンガポールに行けるキャンペーン運賃を出し、燃油サーチャージも無料。より安くシンガポールに行きたい時に、成田発のスクートを選ぶ。そんな使い方ができる。
LCCでも羽田と成田を使い分け
羽田にも1社だけだが、LCCが就航している。エアアジアXのクアラルンプール便だ。これと成田発のスクートを組み合わせれば、アジアを格安料金で周遊できる。
まず、スクートで成田を出て台北に寄る。台北から再びスクートでシンガポールまで行く。シンガポールで遊んだ後は、エアアジアでクアラルンプールへ行ってステイ。クアラルンプールからエアアジアXを使って羽田に帰る。これで、台北、シンガポール、クアラルンプールの周遊が完成。LCCでの旅行でも羽田と成田を使い分けができるわけだ。
かつて成田は交通の便が悪いと言われた。今も羽田に比べると時間はかかるが、羽田空港の再国際化後に客足を減らさないよう、鉄道やバス会社も増便や割引を実施。JR東日本の成田エキスプレスは増発され、京成電鉄は新しいルートを開設、上野・日暮里から成田まで40分程度で行けるようになっている。
また、2012年夏から国内線のLCCが就航すると同時に、京成グループの格安バスも運航を開始。最低900円(片道)で乗れるようになり、料金的に成田に行きやすくなった。
羽田からは従来系エアライン(レガシーキャリア)の便が、成田からはLCCの便がまだまだ増えそうだ。上手に活用して、海外旅行を楽しみたい。
筆者プロフィール : 緒方信一郎
航空・旅行ジャーナリスト、編集者。学生時代に格安航空券1枚を持って友人とヨーロッパを旅行。2年後、記者・編集者の道を歩み始める。「エイビーロード」「エイビーロード・ウエスト」「自由旅行」(以上、リクルート)で編集者として活動し、後に航空会社機内誌の編集長も務める。 20年以上にわたり、航空・旅行をテーマに活動を続け、雑誌や新聞、テレビ、ラジオ、インターネットなど様々なメディアでコメント・解説も行う。自らも日本・世界各地へ出かけるトラベラーであり、海外渡航回数は100をこえて以来、数えていない。