利益が底をついていたボーダフォンジャパンを買収した2006年には「10年以内にNTTドコモを超える」と明言した。営業利益では今年、既述の通りNTTドコモを超える。また、Sprintの買収に成功すれば累計契約者数が9710万契約となり、現在6000万超の契約者を抱えるNTTドコモをはるかに上回る。電波についても「私の命をかけて必ずドコモを超える」(Twitterで発言)の公約通り、スマートフォンの音声接続率/パケット接続率でNTTドコモを超えた。
「これまで腹をくくって心の底から吹いた大ボラは、全て実現してきた。今日は、新たな大ボラをもう1回、吹いてみたい」と孫社長。ここにきて、話題はSprint社の買収事案へと移る。
Sprintの買収について
米Sprint社の戦略的買収に関しては、株主から「なぜアメリカ市場に進出するのか」という質問が多く寄せられているという。その理由について、孫社長は「米国市場は日本市場の2.5倍の規模があり、GDPも日本の2.6倍、携帯電話ユーザーも日本の2.5倍いる。世界で最もリッチで、最も進んでいる国で挑戦しようというのが我々の志です」と説明。そのシナジー(相乗効果)については、ソフトバンクとSprintでは「スマートフォン+LTE通信」という共通のテクノロジーを保有しており各方面で協力しあえること、設備投資の効率化が図れること、両社の累計契約者を合計すれば世界でも有数の規模になり得ること、企業規模が大きくなれば購買力が増すので端末のラインナップを揃える上でも有利に働くことなどを紹介した。
孫社長の説明によると、Sprint社買収に必要な許認可は4つあり、このうち3つは認可が下りたとのこと。最後に残ったのは「米連邦通信委員会(FCC)」で、こちらも「近日中に認可が通る見込み」と話す。
ソフトバンクでは現在、Sprint社の買収について米DISH社と争っている。直近の報道では、DISHはSprintの子会社であるClearwire社の買収を検討していると報じられていた。ClearwireはSprintの電波を司っている重要な企業で、DISHに買収されてしまうとソフトバンクとしては大きな痛手となる。この件に関して、孫社長は「先程、大きな進展がありました。Clearwireの取締役会ではDISHとの交渉を中止し、Sprintを支持する方針に決まったそうです」と報告。「形勢は逆転し、Sprint買収に関して大きく前進しました」と笑顔で語ると、会場から大きな拍手が沸き起こった。
ソフトバンクを世界一の企業に
2010年に行ったソフトバンクの株主総会で孫社長は、中長期の"30年ビジョン"として「時価総額で世界のトップ10へ入りたい」と明言した。その言葉通り、2010年時点で世界217位だったランクは2013年現在で世界113位まで上がってきている。そしてこの日、孫社長が「もう1回吹いてみたい」と言った大ボラ、それは「ソフトバンクを世界一の企業にする」というものだった。具体的には時価総額200兆円を想定している。
「2010年には控え目にトップ10と言ったが、どうも私の性格に合わないようで」と話すと、会場からは笑い声と大きな拍手。「期限はもうけていないが、必ず世界一の企業にする。それは利益の面でも、キャッシュフローの面でも、株式価値の面でも、あらゆる面で世界一の会社にする。皆さまが我々の夢、我々の志に大切なお金をかけて応援してくださっている。株主の皆さんに対しても、大切な責任だと思っている」。
"世界一"というのは目標ではなく、スタートラインだという。「300年以上成長を続ける企業カルチャーを作りたい。でも、それも目標ではなく行動計画に過ぎない。世界一になった後に、人類に何を残せるか。これが最大の課題であると思っている。情報技術、ITによって人々のライフスタイルを革新する。人々に感謝されて尊敬されて、はじめて我々の存在に意義が生まれると思っています」。情報革命で人々を幸せにしたい、これが我が社の唯一の思いですと締め括り、株主総会でのプレゼンテーションを終えた。