――ちなみに、(素子の)髪型はなぜああなったのでしょうか?
「(色なしの状態で)なぜか『これ真っ赤だよね』と思いながら描いていたんです。こっそり『アキラ』が横切ったのかもしれませんけど……偶然なんですけどね。今回は攻め要素で作品を作っていこうと思ったので、攻撃的な色味の方がいいかということで。今までの攻殻はどうしても色味が少ないような印象だったので、とにかく原色を入れて行きたいという気持ちがあったんです。バイクも赤でしたね(笑)」
――(草薙素子役の)坂本真綾さんの声や演技については、どのような指示を出されたのでしょうか?
「基本的には何も言っていません。基本的には何も言っていません。たぶん、素子を演じるという段階で自然とああいう声が出てきたんだと思います」
――ロジコマのしゃべり方が意外でした。
「アフレコ現場第一声であれだったので、みんなで(腕で頭上にマルを作って)『オッケー!』って(笑)。沢城さんご自身が作り込んできていました。後で『ほんとにいいんですか?』って聞かれましたけど。でもキャラクターとして立っているのでぜんぜん構わないです」
――キャストは全員オーディションで決められたのですか?
「そうです。僕は声優さんのお名前を知らないので、声を聞かないとわかりません」
――みなさん、若いというか、(他の『攻殻』に見られる達観したようなセリフと違って)暑苦しいような印象もありました。
「すぐに頭に血が昇るようなね。今までの攻殻よりも若い設定で、セリフの言い回しも突っ走っているようなところがあります。
アフレコを前にブースであいさつをした時に、『とにかく今までの攻殻に縛られないで、力を抜いて自由にやってください』と言ったんです。あとで何人かの声優さんが『あれを言ってもらえてすごく気が楽になりました』と言ってくれました。すごくプレッシャーを感じていたと、皆さんおっしゃっていましたね」
"それ以前"の作品世界に『新しい攻殻』を作る
――1話の各話監督がむらた雅彦さん(※)ですが、アクションなどはやはりむらたさんのお力が大きかったのでしょうか?
「もう独壇場ですね。ほとんどコンテチェックで何もしませんでした。お任せしますと(笑)。むらたさんが『NARUTO』の監督をされた時に、西尾くんと一緒だったんですけど、その時はデザインだけだったんです。それで、西尾くんとガッツリ仕事がしたいという思いできたら攻殻だったということで、すごくプレッシャーを感じていたと言っていました」
――過去の作品のオマージュ的なカットもいくつかありましたが。
「そこは、むらたさんの持っていたイメージかもしれません。むらたさんに、『攻殻機動隊』のことを詳しく知らないんですけど見た方がいいですか? と聞かれましたが、今回は"違うことを"やりたいので見なくていいですと答えました。見ると絶対に影響を受けてしまいますから。見ない中で、イメージで残っていることは出してもらってもいいですけど、あえて入れることは全く考えなくていいです、と。
例えば、『素子ってこういうこと言わないんじゃない?』と聞かれたら、そういうことを言ってもいい素子になっているから、もっと元気に動かしてもいいし、感情的に動いてもいい、だから自由にやって、という風に言っています」
※むらた雅彦:『攻殻機動隊ARISE border:1』の監督。『NARUTO -ナルト-』シリーズの絵コンテ・演出、劇場版の監督などを務める。
――音楽でコーネリアスさんを起用したのはどういう経緯だったのですか?
「音楽プロデュースをしている石川さんの方から、今回ちょっと無理を言っていいですか、と出されたのがコーネリアスさんでした。もともとフリッパーズギターの頃から知っていて、今回はこれまでと違う人で作った方がいいと思っていたので、お願いすることにしました」
――スタイリッシュな部分もありつつ、後のほうではバリバリに生音が入る曲もあり、迫力がありました。
「コーネリアスさんの方で、音源の中にアクションの効果音のような音を入れてあったんです。実際には後から音響の方で効果音を入れるので、本人としては(BGMと効果音がかぶってしまうため)『失敗したかな』と言っていたようですが、逆にそれが他にないような面白い効果になりました。
そういう(予想しないような)ことをある程度期待していましたし、期待以上でした」……続きを読む