午前10時40分頃から質疑応答が行われた。
テレビ事業の黒字化への取り組みについて質問があり、まず平井社長が回答。「1年以上前から取り組んだのは、短期的にできることとしてのコスト削減策、長期的な施策として魅力的な製品の提供を目指してきた。これを私は、守りと攻めといってきたが、まずは、止血することを目指し、台数を追わないことにした。市場に投入した製品については高い評価を得ている。今年から強い攻めに転じることになる」と発言。テレビ事業を担当する今村昌志業務執行役員 SVPは「テレビ事業は、まずは基礎体力の強化、構造改革を進めた。2012年度の700億円の赤字を黒字化するには、商品力の強化による付加価値上昇、マーケットシェアの拡大に加えて、構造改革が年間を通じて寄与することで解決したい。感動価値を目指す姿勢は、設計開発部門に染み渡っている」などとした。
テレビのセカンドスクリーンとしてモバイル機器が利用されていることへの対応について、鈴木国正執行役 EVPは「若い世代はテレビだけを見ているという人は少ない。テレビと関連するコンテンツをみることがある。ソニーでは、TV SideViewという製品を提供している。今後、こうした分野に注視していきたい。ソニーならではの顧客志向の考え方を追求したい」と回答した。
「Windows 8を搭載したPCが使いにくい」という声に対しても鈴木執行役が回答。「Windows 8は、タッチ操作で動かすことに注視した製品であるが、今までのOSを使っている人にはハードルが高くなっているという声が多く寄せられている。ソニーとしてできる限り、使いやすさを工夫したい」と回答した。
Xperia Zの成功で安堵してはいけない
さらに、スマートフォンビジネスへの取り組みについては、「スマートフォンビジネスは容易なカテゴリーではない。Xperia Zだけで安堵の気持ちにはなっていない。ソニーの力を象徴する製品であることは間違いないが、事業で勝てるかというのとは別である。ソニーの資産を活用して商品力を高めること、営業およびマーケティングへの投資を効率よく行い、通信キャリアとの協業の強化をやっていくこと、サプライチェーンやデマンドチェーンなどのオペレーション力を強化することのいずれもが大切であり、その第一歩を踏み出したところである」と鈴木執行役が説明し、平井社長が「モバイル分野では、自社だけでヒット製品を作ることは難しくなっている。パートナーシップをいかに組んでいくかが重要である。また、商品だけを楽しんでもらうのでなく、コンテンツをどうやって楽しんでもらうかといった組み合わせが重要になってくる。ソニーの総合力が試されるものになる」と補足した。
「今の経営陣には、ソニーの創業以来の精神が引き継がれているのか。また、使いやすい製品を出してほしい」という質問も寄せられた。これに対しては、平井社長が回答。「既存の製品カテゴリーにおいては、さらに機能を向上させ、もっと感動してもらう部分に、惜しみなく技術を投入し、機能を強化していく。その一方で、お客様が面白いといってもらえる新たな製品を作ることが必要である。どんなに技術的にすばらしい商品でも、使いにくい、分からない、難しすぎるといったことがあってはならない。難しいところをなくして、ソニーらしい体験をしてもらうかが、大事なテーマである」と語った。
また、「平井社長は、どんな思いでソニーを経営しているのか」という質問に対しては、「"WOW"と言ってもらえるような感動してもらう製品やサービス、コンテンツを出し続けていくことが大事だ。世界中の拠点を回って語ってきたのは危機感を持ってほしいということ。このままではソニーは復活しない、もっと酷いところにいってしまうということを、ソニーの社員、マネジメントが同じ危機感として共有しなくては、ソニーは良くならない。いろいろと外から言われていることが悔しいと思うならば、自分たちで、ソニーを立て直していくことが大切だ。厳しいという現状認識と、お客様に喜んでいただけるものを提供していくことが大切だと思って、毎日会社に来ている」と回答した。
技術者の貢献がソニー再建には不可欠
また、技術力による収益向上を求める声に対しては、鈴木智行執行役 EVPが回答。「ソニーは世界で初めての製品、サービスを出し続けてきた。ソニーは、人類の未来を作ってきた会社である。ソニーの約2,000人のエンジニアに、この精神が脈々と受け継がれている。3つのコア事業と、新規事業の創出に関する技術開発に取り組んでいる」と語り、平井社長は「技術力は、ソニーのエレクトロニクス事業においては重要な課題である。執行役でも技術に造詣が深い人材を登用している」などとした。
また、「ソニーの技術者が流出しているのではないか」という質問に対しては、「ソニーのエレクトロニクスビジネスの成長には、技術者の貢献が不可欠であり、新たな発想で、顧客に製品およびサービスを届けるためには必要である。重要な人材にはリテンションをかける。また、エンジニアにモチベーションをあげてもらうことも必要。厚木の開発拠点には、4~5回足を運び、『変人』たちと議論をしてきた」などと平井社長が回答。さらに、「強い商品をいかに出していくかという点では、社内のイノベーションが大切である。イノベーティブな社員を多く抱えるのが価値創造の源泉だ。また、それを生かす場、アイデアを創出する仕組みを作っている。アイデアがあれば、場合によっては試作品を作り、マネジメントに説明し、商品化のプロセスに乗せるといったこともある」などと説明した。
なかには、「株主総会の召集通知に平井社長の顔写真が掲載されているが、イケメンの社長であり、ソニーの株主としてうれしい」との女性株主の声に、平井社長が恥ずかしそうに笑い出すという一幕もあった。
なお、第1号議案の取締役13名選任の件、第2号議案のストックオプション付与を目的として新株予約権を発行する件については、いずれも可決され、午前11時55分に閉会した。