「iOSヒューマンインターフェイスガイドライン」とは?
Appleは、iOSアプリ開発者向けに「iOSヒューマンインターフェイスガイドライン」(以降、HIG)というUIの解説書を用意している。開発者向けではあるが、他のドキュメントのようにNDA(秘密保持契約)は付されておらず、一般ユーザでも開発者登録なしに入手できる。現在の最新版は2012年12月17日付で、iOS 6を対象に記述されたものだ。
この解説書に厳密な意味での拘束力はないが、審査をスムーズに通過するためにはこれに沿うべし、という考え方がアプリ開発者の間ではコンセンサスとなっている。iOS 7のリリース前であり、当然iOS 7に対応した版のHIGは一般公開されていないが、いずれは改訂されアプリ開発の指針となるはず。おそらく、多くの開発者は改訂後のHIGがどうなるか固唾を飲んで見守っているに違いない。
想定される改訂内容
ここからは推測だが、iOS 7対応版HIGは"大改訂"されることだろう。この解説書には、解像度の異なるアイコンを複数用意すること、角を90度にしてドロップシャドウを含めないこと……など多くの細々とした指針(むしろ"指示"や"指導"に近いかもしれない)が記載されており、アイコンデザインが一新されるiOS 7では大幅に書き換えられるはず。ボタンについても、おそらく細々とした仕様変更が行われるだろう。
アイコン/ボタンの形状はともかく、デザインや質感については悩ましい事態になる可能性が高い。たとえば、HIGには「効果的なアイコンや画像を作成するためのヒント」という項目があるのだが、そこには「実物の質感を正確に描写する」というiOS 7のデザインコンセプトにそぐわない記述がある。
当然、iOS 6に存在しない「レイヤー」の記述はない。iOS 7向けの改訂版には、どのような見せ方をするか、レイヤーの透明度をどうするか、といった記述がおそらく盛り込まれるはずだ。ボタンは(タップを促すよう)ボタンらしくデザインすべし、下のレイヤーと重なっても見やすいようにデザインすべし、といった記述も加えられることだろう。
となると、アプリ開発者の作業量は相当なものになることが予想される。iOS 7対応をうたうアプリの場合、従来とは異なるアイコンのデザインや色の使い方、レイヤー対応などの作業負担が、アプリ本来の開発工程の上にのしかかってくるからだ。iOS 7のリリースまで残すところ数カ月、開発者諸氏の健闘を祈りたい。