こうして、「プロファイル」の作成が完了したら、データを保存して終了。この作成行程は非常にスムーズだった。ちなみに、プロファイルには、PCが出そうとしている色と、実際にモニターから出ていた色の誤差がどれくらいであったかという情報が含まれており、誤差を修正して正しい色を表示するために使われる。経年変化でモニターが劣化しても、プロファイルを作りなおせば、再び正しい色を表示させることが可能だ。
では、キャリブレーション結果はどうだろうか。まず目標値と実際値の比較を行ってみると、画面の明るさは、目標値の80cdに対して、結果も同じく80cdと完璧だ。色温度は、目標値が5000Kに対して4980K。目標よりやや黄色寄りであるものの、この程度の結果の誤差はよくあることなので、十分合格と言えるだろう。
目視で見比べた感覚でも、「EIZO製モニターよりほんのわずかにY(黄色)傾向の仕上がり」な感じはする。しかし、筆者の経験からすると、モニターのメーカーが異なる場合、いかにプロ用キャリブレーション機器と言えども、完全に同じ表示傾向のモニターを調整で作り上げることは非常に困難だ。よって、「「Cintiq 22HD touch」は、キャリブレーションをとることで商業印刷の原稿を作成するモニターとして、実戦使用に耐えられる性能を有すると言える」というのが筆者の見解である。
ただ、例えば、通常EIZO製モニターを基準としているクリエイターが、他メーカーのモニターとどう折り合っていくかという点の課題はゼロではないが、それは商業写真業界全体の問題であり、「Cintiq 22HD touch」のモニターの性能評価とは別文脈で語る必要があるだろう。
視野角や色ムラはどうか
キャリブレーション結果以外の観点からも、このモニターの印象を少々述べていきたい。まずは視野角について。「Cintiq 22HD touch」のモニターはIPSパネルを使用しており、どの角度から見ても申し分のない画像評価ができそうだ。
そして、画面全域での色ムラについて。「(PCモニターの)画面にムラがある」というとびっくりしてしまう方もいるかもしれない。実は、世の中のほとんどのモニターには微小な色のムラが存在し、モニターの背景を単色のニュートラルグレーに設定するとそれがよく分かる。このムラは一般的な用途で使用する際には全く問題なく、プロカメラマンやレタッチャーにとって非常に重要な部分となる。というのも、グレーの部分が"完全なグレー"になっている、つまり色転び(赤・緑・青(RGB)の各色のバランスが完全に取れておらず、わずかに特定の色がついてしまっている状態)が起きていない写真を納品する必要が出てくることもあるからだ。特に商品写真(いわゆるブツ撮り)納品の場合はこの部分が重要になる。
「Cintiq 22HD touch」のモニターにも、筆者の手元の個体に限って言えば、ごく微小な色のムラが存在した。とは言うものの本当に微小なレベルで、画面全域での色ムラに関しては、「モニター専門機の最上位機種よりはやや落ちるが、プロ用機としての水準は十分満たすレベル」という表現が適切な印象だ。
Cintiq 22HD touchは実践でのフォトレタッチが可能な性能だった
こうして、「Cintiq 22HD touch」をモニターとして見てきた結論として、「「Cintiq 22HD touch」は、商業印刷原稿作成モニターとして実戦使用に耐えられるモニター性能を有する」ということができると思う。正直、テストを行う前は、こういった機器はペンタブレットとしての機能がメインで、画面は多少不正確でも仕方ないだろうとも想定していたが、実機に触れてみて、想像していた以上に良いモニターだと感じた。最終的にIntuosとCintiq、どちらを使うかという点は好みによるところもあると思うが、フォトレタッチャーがCintiqを使うという選択肢は十分"アリ"だという印象だ。
次回は、「Cintiq 22HD touch」のタッチ性能を見て行きたい。ペンだけでなく指でのタッチにも対応している同機種における使用感を、フォトレタッチを行う現場での使い勝手なども交えて探っていこうと思う。
御園生大地
フォトグラファー・レタッチャー・3DCGクリエイター。1974年東京生まれ。東京ビジュアルアーツ卒業。撮影会社に12年間在籍後、2013年からフリーランスとして活動。