高山智克氏(右) 真剣なまなざしで若手クリエイターの話を聞いているのが印象的

「プレゼンされる側」である、高山智克氏(ビーコン コミュニケーションズ)にもお話を伺った。同氏は、若手のプレゼンの傾向について「自分の作品のディティールを説明する子が多いね。いや、そこを僕に一生懸命説明してどうするの?って(笑)」と一言。「 広告をデザインするということは、「人の気持ちをデザインする」こと。それが広告のコミニュケーションなわけで、「こういうコミュニケーションのために、こういう意図で、こういうデザインをした」ってところをプレゼンすることが大事」とも付け足した。うう、まさにご指摘の通り。耳が痛い。その一方で、「こうやって、広告業界を夢見るエネルギーに溢れた若者達と触れあえるのは業界に身を置く人間としてはすごく嬉しいし、刺激になるね」と、ニコニコと笑顔で答えてくれたのが印象的だった。

また、このイベントには協賛会社のひとつであるiStockphotoを傘下に持つ、ゲッティ イメージズのアートディレクター・小林正明氏も訪れていた。「今は全ての人が「発信」出来る時代だからこそ、こういう(自分をプレゼンするという)文化が日本にも根付けば面白いことになるね」と会場を見渡しながら話す。「たとえば馬に乗って歩こうとするでしょ。無理矢理歩かせようと思ってもこれが歩かないんだよね。だけど自然と波長が合ったとき、驚くほど自然と歩き出す。そんな感じだね。ディレクターとデザイナーは適度に健全な距離感をもって、共に作品を創り出していくことが大事だと思う。このイベントがクリエイティブディレクターと若手クリエイターの良い出会いであってほしい」と、乗馬に例えてこのイベントに対する期待を語っていた。

クリエイター同士で作品を見せ合いコミュニケーションをとる人もいる

シールをはって水槽をデザインするイベントも

「1分たりとも無駄に出来ないと思いました」。帰り際に出会った、プレゼンを終えたばかりの19歳の専門学生、三浦勇人さんはそう言った。「はじめはすごく緊張しましたが、2回目から馴れてきて、3回目には楽しくなった。ひとりで参加するのに躊躇していたけど、貴重なアドバイスをいただけてほんとに参加してよかったです」と語る。キラキラと目を輝かせる彼を見て、そして多くのクリエイターを見て、「自分も頑張らねば」と背筋が伸びる気がした。