KDDI研究所(埼玉県ふじみ野市)は5月23日、施設内の様子をメディアに公開し、現在取り組んでいる新技術について紹介した。
データ通信量が増加の一途をたどる昨今、限られた資源である"周波数"の有効利用が求められている。KDDI研究所が23日に報道発表した「Advanced MIMO(マイモ)」は、大きなデータを複数の端末に一斉に送ることができる新技術。基地局と端末側の双方で複数のアンテナを組み合わせることで通信速度を向上させる既存の技術「MIMO (Multiple-Input Multiput-Output)」をさらに発展させたものだ。課題だった電波干渉の問題を解決し、周波数利用効率をLTEの約3倍(20bps/Hz)にまで向上させたという。2018年頃の実用化を目指している。
使用する電波の周波数が高くなると、必要とされるアンテナのサイズは小さくなる。スマートフォンには現在、800MHz~2.5GHzあたりの周波数が利用されているが、今後は3.5GHz以上の周波数の利用も予想されている。このため近い将来、端末内に4本~8本のアンテナを内蔵するモデルが登場する見込みだという。多アンテナ端末の性能を評価するには、様々な方向から大きさを変えた電波を照射して実験する必要がある。KDDI研究所ではこの実験を「電波無響室」と呼ばれる特別な部屋で行うという。
電波無響室では電波が外に漏れず、外から漏れ込むこともない。また、部屋内が電波吸収体で覆われているため、電波が反射しないようになっている。これにより、アンテナの放射パターンを正確に測定することが可能だという。実際に入ってみると、部屋の中では話し声さえもまるで響かなかった。
「大規模画像認識システム」はAR技術を応用したもので、スマートフォンのカメラを利用したARアプリと連携して使用する。すでに一部の企業と協業しており、現在トライアルを実施中だという。例えばスマートフォンのカメラを菓子の製品箱に向けると、画面上には商品情報のリンクやSNSの共有ボタンなどが表示される(商品情報検索)。宿泊施設のパンフレットに向けると宿泊施設の様子が分かる360度パノラマ画像が表示され(ランドマーク情報検索)、通販カタログに向けると商品のセール情報/Webサイトへのリンク/ コーディネートに最適なアイテムなどが表示される(Eコマース連携)といった具合だ。
これまでの画像認識システムでは、データベースのサイズが増加することにより検索速度が低下する、また類似の部分領域を数多く検出してしまうことにより誤認識が増加するなどの課題があった。「大規模画像認識システム」では、新技術でこれらの課題を克服したという。