「まとまったら投資」は投資大失敗の第1歩

――投資を始めるとして、まず何をすべきでしょうか?

神戸 まずは「我が家のキャッシュフロー」を整理します。キャッシュフローとはお金の流れのことで、年間の収入、支出がどれだけあるか? それによって、今後金融資産(新婚さんの場合は多くは預貯金)がどれくらいたまって、あるいは減っていくかの推移を把握します。そして手元に残る預貯金を「生活資金」「ゆとり資金」「投資資金」の3つに分けてみます。

投資の前に、「我が家のキャッシュフロー」を整理

お金の性質に合った投資方法

――新婚世代だと預貯金から「基本生活費」と「ゆとり資金」をとったら何も残らないかと……

神戸 その場合は、今あるお金はそのまま預貯金にし、投資には向けないでください。個人投資家が失敗して困らないためには、最初に持っているお金を3つに分けること。そして投資資金だけで、投資運用をすること。これに尽きます。これで投資初心者の大きな失敗の7~8割は防げるはずです。

お金を3つに分けたら、それぞれのお金の性質を理解して、それに見合った金融商品を選びます。「生活資金」なら流動性の高い預貯金、「ゆとり資金」なら安全性の高い預貯金や債券、「投資資金」なら収益性を考えて株や外貨預金、投資信託など。オールマイティの商品というのは存在しませんから、預け先を流動性、収益性、安全性と、重視すべきもの別に3つに分けておくのです。

お金の性質を理解して、その性質にあった投資方法を考える

――現実的に考えて、新婚世代は投資はできないかもしれません

神戸 でも、投資をしなければ資産は増えていきません。現在、持っているものは上記のように3つに分けて持っておく。現在は投資資金がない方でも、月々、いくらかは貯蓄しますよね? その一部を投資に向ける。これが新婚世代がお金を増やすコツですね。

日本人は地道に貯蓄して、「まとまったら投資でもするか」という人が多いようですが、それは大間違い。投資大失敗への第1歩です。練習をして経験を積むことで、少しずつ投資の感覚を養っていくことが必要です。「まとまったら投資」ではなく、逆に毎月の貯蓄こそ、値動きをするもので積み立てていく。なぜなら積み立てこそ、値動きをする金融商品に向いている方法だからです。

――値動きをする金融商品とは?

神戸 株や外貨、投資信託などいろいろな種類のものがあります。個人投資家が投資で得をしたければ、「時間」を味方につけるのが一番です。資金量や情報量では、プロである機関投資家にかないませんからね。

具体例を出しましょう。月々1万円で10年間。合計120万円を積み立て形式で投資した場合、下の表で結果的に一番利益が出たのはどれだと思いますか?

月1万円を10年間、合計120万円投資した場合。積み立て購入には前半下落、最終局面上昇が有利

―番利益が出たのはオレンジ色のものです。そして次は水色。始めの値段に戻りきらなかったケースです。3番目がピンクで、4番目は前半に値上がりをした紺ですが、最終結果は元本割れしていまっています。積み立て購入の場合、前半下落、最終局面上昇が有利なストーリーです。

ごく日常的な情報に耳をすませて投資環境を見定める

――値上がりしているのに何で損するのでしょうか?

神戸 毎月同じ金額だけ投資する場合、値上がりすると買える数量が少なくなるからです。自分の持っている株や投資信託の価格が下がると損した気になりますが、積み立ての場合には「これでたくさん買える」と喜ぶべきですね。たくさん仕込んでおいて最後に価格があがるのが、一番おいしいわけです。

もちろん、ずっと価格が下がり続けているのではダメですよ。多少の価格の変動はありつつも、「いずれは価値があがる」と考えられるものに、積み立て形式で長い時間かけて投資していく。これが個人投資家が資産形成を行うためのセオリーです。今は投資信託だったら、500円とか1,000円程度から積み立てできます。

――これから価値があがりそうなもの、というのはどう判断すればいいんですか?

神戸 普通に考えればいいんです。情報は新聞を読めば分かる程度の、ごくごく常識的なもので大丈夫です。例えば、「今、紙おむつが中国で売れている」という情報があるとして、それをどう判断する……といった話です。普通にアンテナを立てておけば入ってくる情報を基に、普通に考える。それでいいんですよ。

筆者プロフィール : 楢戸 ひかる(ならと ひかる)

1969年生まれ 大手商社勤務を経てフリーライターへ。中学生と小学生の男児3人を育てる主婦でもある。家事生活をブログ「家事マニア」にて毎週火曜日に更新中。