今年のAMDは面白い決断をした。今年1年新アーキテクチャの投入をしないかわりに、ゲームデベロッパとの連携を深め、Radeonに最適化されたゲームを増やしていく戦略を選んだ。特に面白いのはドライバの開発サイクルを変更し、チューニングされたベータ版ドライバの力で劣勢を覆そうというのだ。
PCゲームの快適さを決めるのはGPUの設計の良し悪しも重要だが、それを活かすためのチューニング作業が非常に重要となる。
そこで今回は、あの『BattleField3』をも超える超重量級FPS『Crysis3』をプレイする環境として、AMDのRadeonでの取り組みが功を奏しているのかをチェックしてみることにした。
今回は、Radeon HD 7970 GHz Editionを搭載するSapphire製グラフィックスカード「SAPPHIRE VAPOR-X HD7970 GHZ EDITION 3G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+SL-DVI-D/HDMI/DP」を用意した |
"手の届く"ハイエンドGPUで検証
どんなGPUを使って検証するかが問題だが、10万円オーバーの怪物級GPUだと現実味がないため、Crysis3のクーポンコードが添付(なくなり次第終了のキャンペーン)されている「Radeon HD 7970」を使って試すことにした。リファレンス仕様なら実売4万円台、HD 7970 GHz Edition搭載のOC版(HD7970 OC)なら5万円~5万円台中盤で手に入る。これならCrysis3にパワー負けしにくいだろう。対決させるGPUは同格の「GeForce GTX 680」とする。GTX680はOC版が準備できなかったため、HD7970 OCよりも若干安いリファレンス版のカードを用意した。
用意したグラフィックカードを含め、今回の検証環境は以下の通りとなる。GPUドライバはいずれも最新のベータ版を利用している。
CPU | Intel Core i5-3570K(3.4GHz) |
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マザーボード | ASUSTeK P8Z77M-PRO(Intel Z77 Express) |
メモリ | Patriot PSD38G1600KH(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4) |
SSD | Intel SSD 335 SSDSC2CT240A4K5(SATA 3.0、MLC、240GB) |
OS | Windows 8 Professional 64bit版 |
ドライバ | Catalyst13.5 beta2、GeForce 320.00 |
電源ユニット | オウルテック AU-850PRO(850W、80PLUS GOLD) |
グラフィックカード | |
Radeon HD 7970 | リファレンスカード |
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Radeon HD 7970 GHz Edition | SAPPHIRE VAPOR-X HD7970 GHZ EDITION 3G GDDR5 PCI-E DL-DVI-I+SL-DVI-D/HDMI/DP |
GeForce GTX 680 | リファレンスカード |
3DMarkでの評価は?
いきなり本題に斬り込む前に「3DMark」のスコアもチェックしてみたい。この原稿をまとめている最中にバージョンがv1.1.0に上がったが、マルチGPU環境への修正がメインなので、v1.0.0のスコアをそのまま利用する。
OC版のスコアが高いのは当然としても、素のHD 7970ですらGTX 680とほぼ同レベルのスコアが出ている点に注目したい。GTX 680が登場した時はHD 7970はあっさり敗北した記憶があるが、アプリとドライバのチューニングがガッチリと噛み合うことで性能が引き出せるのだ(むしろAMDは昨年何もやってなかったのか、というツッコミはしないでおこう)。
もちろんこのスコアがGPU性能の全てを表現していると言う気はない。"やりようによっては"かつての性能差も逆転できるという事例の1つとして認識していただければ幸いだ。
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