公衆無線LANは、ソフトバンクが積極的にスポットを拡大しているが、移動中にスポットから漏れる電波を一時的につかんでしまったり、干渉によってデータ通信ができない場合も多い。孫社長自身も、「わずらわしいので無線LANを無効にするというケースも多いだろう」と話しており、これを解消するために、2012年11月に対策を発表。この対策では、EAP-SIM認証技術を使ったログイン時間の短縮、ユーザーの移動を検出して、その間は接続を制限する「移動中Wi-Fi接続制御」、電波強度を監視して接続を制御し、切断時には携帯回線に高速に切り替える技術などを導入することで、無線LANスポットの使い勝手を向上させる。

46万カ所の無線LANスポットを構築してきた

Web方式ではなく、SIMを使ったEAP認証を採用

基本的にはKDDIが導入している技術と同等であり、今回11月の発表に対して新しい発表があったわけではない。同社では、移動中Wi-Fi接続制御など、いくつか特許も出願しており、今後対応機種を拡大していく。こちらは、対応機種であればiOS端末やAndroid端末でも恩恵が得られることになる。

電波の強さに応じて無線LANへの接続を制御する技術

3つ目の「ダブルLTE」は、買収したイー・アクセスが所有する1.7GHz帯のLTEネットワークを活用。既存の2GHz帯のLTEネットワークと併用することで、ネットワーク全体のキャパシティを増大させるというもの。対応するのはiPhone 5などのiOS端末と、夏モデルとして発表された「Pocket WiFi 203Z」といった「SoftBank 4G LTE」に対応した端末だ。

2つの周波数帯域を活用するダブルLTE

ダブルLTEに対応したPocket WiFi 203Z

3つの対策をアピールする孫社長だが、「小セル化」はAXGP対応端末、「ダブルLTE」はSoftBank 4G LTE対応端末というように、それぞれ異なる端末に向けた技術となる。ただ、それぞれのトラフィックを別のネットワークに分散し、「棲み分けるのがもっとも分かりやすく、有効活用できる」としており、圧倒的に大数を占める iOS端末を複数周波数のダブルLTEでカバーし、Android端末は小セル化でまかなう、という考え方を示している。

トラフィックをiOSとAndroid端末で分散する

ソフトバンクでは、ヤフーの「防災速報」アプリや音声通話試験などで収集した月間6億件以上の通信ログを分析して、「パケット接続率」「通話接続率」という指標を打ち出している。「iPhone 5とiPhone 4S、KDDIのiPhone 5では、接続率が全く違う」と孫社長は説明する。こうして得られたデータを元にエリア設計を行うことで、「世界最高レベルの、パケ詰まりしにくい、スマートフォンのつながりやすさが実現」したとアピールする。

データと音声の接続率。孫社長は「科学的にナンバー1が証明された」と胸を張る

さらに、第三者機関の調査のうち、ソフトバンクが通信速度で1位となった調査結果を紹介しつつ、孫社長は「他社より繋がりやすいネットワークが構築できた。世界で最もスマートフォンが繋がりやすい」と強調。「世界最先端のもっとも高速で高度なネットワーク」 として、ネットワーク品質に自信を見せている。

ソフトバンクが速度1位となった調査結果