ソフトバンクモバイルは、2013年夏モデルの新製品発表会を5月7日に開催した。本稿では、同社の孫正義社長が冒頭で言及した「スマートフォン時代のネットワーク作り」について紹介する。

ソフトバンクの孫正義社長(左端)。つながりやすさをアピールするゲストとして、お笑い芸人のスギちゃんや、エアバンドのゴールデンボンバーも登場

「世界で最もスマートフォンが繋がりやすい」ネットワーク

国内では、すでに販売する携帯電話の8割がスマートフォンになっており、データトラフィックは、この5年間で60倍に拡大したという。スマートフォン比率が上昇し、データトラフィックが増加するのに対して、「いち早くスマートフォン時代のネットワーク作りを心がけてきた」と孫社長。

ソフトバンクによる国内携帯販売台数におけるスマートフォン比率

ソフトバンクのトラフィックは、08年4月を起点にして60倍に跳ね上がっている

ソフトバンクは2008年からiPhone 3Gを取り扱い、スマートフォン化を推進しており、2010年に基地局を倍増して通信環境を改善する目標を立てていた。

スマートフォンによるトラフィックの急増は、特に都市部で大きな問題となっており、それにともなって通信が繋がりにくいなどの問題が発生してきている。孫社長は、インターネット上でよく使われる「パケ詰まり」という言葉で表現しているが、通信が繋がりにくい、パケットが流れにくいといった問題には、トラフィックの増加にネットワークの容量が追いついていないといった理由のほかに、電波の干渉や電波がそもそも届きにくい場所など、さまざまな原因がある。

こうした問題を回避するため、ソフトバンクでは「小セル化」「無線LAN」「ダブルLTE」の3つの手法を導入。「モバイルインターネットの爆発的なデータ量をさばくための基本思想」(孫社長)としている。

ソフトバンクの「パケ詰まり」を回避するための手法

小セル化は、Wireless City PlanningによるAXGPが行っているネットワーク設計。AXGPはPHSをベースにしているため、マイクロセルでの基地局設計が基本で、トラフィックが大きいエリアにも集中して基地局を設置できる。さらに、基地局の制御部(BBU:Base Band Unit)を切り出し、複数の基地局の制御を1カ所で行う「クラウド基地局」によって、より柔軟な基地局設計が可能になっている。

都市部にトラフィックが集中しており、基地局数を増やして容量を拡大できる小セル化を図る

これに加え、基地局から出る電波の方向をコントロールし、特定の範囲だけをエリア化することで、ほかの基地局との電波の干渉を防止する「Null Forming」、隣接する複数の基地局を、1つの基地局のように制御して干渉を防ぐ「Single Frequency Network(SFN)」といった技術を導入。SFNは、SON(Self Organizing Networks)の技術の1つとしており、これによって、ネットワークを最適化して通信を制御している。

基地局ごとに制御装置で制御するのではなく、1つの制御装置で複数の基地局を制御することで、干渉を防ぐ「クラウド基地局」。Huaweiのシステムを利用しているそうだ

マイクロセルを前提としているため、通常の携帯電話のマクロセルにマイクロセルを加える設計よりも、より柔軟で繋がりやすいネットワークが設計できると同社ではアピールしている。これによって、AXGP対応端末のつながりやすさが向上できるとのことだ。