もちろん、今でもニコニコ動画にはコミュニティとしての側面がある。しかし、それは初期の頃のような大きな一つのコミュニティではなく、各ジャンルにおける小さなコミュニティの集合体にすぎない。だからこそ今のニコニコ動画には、すべての動画を巻き込むような強烈なムーブメントがなかなか起こらないのだろう。

「ニコニコ超会議2」におけるブース間の断絶は、そんなニコニコ動画の現状を映し出したものだった。おそらく来年の「ニコニコ超会議3」では、この傾向がさらに強まるのではないかと思う。それが良いとか悪いとかではなく、安倍首相が訪れるまでにメジャー化したニコニコ超会議、およびニコニコ動画は、その方向に進まざるをえないのだ。

とはいえ真面目な言論コロシアムの横にホリエモンの刑務所ダイエットパネルが展示してあるあたりはニコニコ動画ならではの光景とも言える

「整備してみた」と題した企画。こうしたマニアックなジャンルが今までもこれからも無数に生まれ、増殖し続けている

一方で、"ニコニコ的なるもの"を未だ色濃く残しているのが「超パーティー2」であった。「ボカロ」、「歌ってみた」、「踊ってみた」、「ゲーム実況」など、ニコニコ動画のもっとも濃い部分を抽出してライブイベントに仕立てあげた超パーティーは、有料放送(前半は無料だが)ながら生放送視聴者も150万人とケタ違いの人気ぶりで、まだまだニコニコ動画にコミュニティとしての役割が残っていることを教えてくれた。何年後かはわからないが、このライブコンサートが開催されなくなったとき、ニコニコ動画は真にインフラとなり、コミュニティとしての役割を終えるのだろうと思う。

在日米軍ブースの横にニコニコ技術部による展示がある。このごちゃまぜ感もニコニコらしさと言えるだろう

さて、来年の「ニコニコ超会議3」の開催も決定しているとのことで、本来1回きりの集大成的イベントのはずだったニコニコ超会議は、どうやら今後も1年に一度開催される運びとなりそうだ。

正直なところ、今年の超会議2は昨年と比べて順当に進化はしていたものの、何か目新しいものがあるわけではなかった。楽しめはしたけれど、驚きはなかったのだ。もちろん、各ブースやジャンルを細かく見れば別である。文学フリマや日本SF大会は昨年はなかった併催イベントだし、マジック・ザ・ギャザリングやマインクラフトに至っては海外からメーカーを呼び寄せるなどしてファンを喜ばせてくれた。そもそも毎回新しいことをやらないといけないというなら、ほとんどのイベントは成り立たない。

マインクラフトはニコ動でのここ数年における大きなムーブメントの一つである

しかし、それでもニコニコ超会議には毎回、何かしらの新鮮な驚きを提供してほしいと思うのはユーザーのワガママだろうか。「ニコニコ超会議とはこういうイベントですよ」と説明できてしまうような定例イベントになってしまってほしくはない。ニコニコ動画が6年間で予想もつかない進化を遂げてきたように、ニコニコ超会議もユーザーの予想をはるかに超えた場所に行ってほしいものだ。

……と、こんなことを書くと、運営にはまた「ドワンゴはイベント会社ではなく、IT企業です!」と言われてしまいそうだけど。