-- マイクロソフトは、6月に期末を迎えます。最終コーナーとなる4~6月の3カ月間はどんなことに取り組んできますか?
樋口 マイクロソフトは、これまでのようなオンプレミスを中心としたライセンスモデルだけでなく、クラウドとデバイスが新たな分野に取り組み、エンド・トゥ・エンドで製品を提供できる企業へと進化していくことを目指しています。「デバイス+サービス」というメッセージをもとに、それに向けて、必要な体制、必要なスキル、必要なビジョンを推進していくことになります。企業向けソリューションを展開するビジネスエンジンを強化し、それをサポートするデバイスとしてSurfaceやWindows 8を取り揃えてきました。これらの製品に対しても盛り上げていくための施策を引き続き打っていきます。
マイクロソフトは多岐に渡る事業領域で展開していますが、そのなかでどこかひとつに力を注ぐというよりも、すべての領域をきっちりとやっていかなくてはなりません。中小企業向け分野におけるIT利活用の促進も重要な課題のひとつですね。一方、COE(Correction Of Errors)という言い方をしますが、失敗事例なども隠さずにエコシステムのパートナーに対してオープンにし、製品をブラッシュアップしていくということもやっていきたいと考えています。今年1月以降、そうした姿勢を鮮明に打ち出しています。
-- Windows XPのサポート期間が、2014年4月にあります。これに対して、日本マイクロソフトの施策を教えてください
樋口 Windows XPの利用率は、日本が突出して多いのが実態です。IDCジャパンの調べによると、日本において現在利用されているPCは7,742万台であり、そのうち、Windows XP搭載PCは2,589万台と、約3分の1を占めています。とくに、企業で利用されているWindows XP搭載PCは1,419万台と、40.3%を占めています。大手企業の場合には、直接、日本マイクロソフトの担当営業部門やパートナーがアプローチできるため、すでに移行に向けた準備が進んでいますが、課題といえるのは、中堅・中小企業。ここには直接メッセージが伝わりにくい。日本マイクロソフトとして、中堅・中小企業に向けた告知はしっかりとやっていきます。12年半という期間において、ご愛顧いただいたことには感謝を申し上げる一方で、すでに5年前に延長サポートへの移行とともに、サポート期限が訪れることを告知させていただき、新たな技術へと会社全体の事業をシフトさせていただくことは理解してもらっていると考えています。我々がいまやるべきことは、告知に力を注いでいくということになります。
また、Windows XPのサポート期間の終了と同じタイミングで、消費税率の引き上げが見込まれていますから、それによってもPCの大きな需要が想定され、システム構築を手掛けたり、移行を支援するパートナー、そしてデバイスを提供するパートナーを含めて、IT産業のリソースが足らなくなる可能性があります。移行計画は、早め早めに立案していく必要があることを呼び掛けていきたいと思います。これは日本マイクロソフトだけが訴えていくのではなく、業界をあげて訴求していくことになります。
-- Windows XPからの移行先はWindows 8になりますか?
樋口 タブレット用途に関しては、Windows 8が適していますが、企業ユーザーによってはWindows 7という選択肢もあります。そこは共存させて、Windows XPからの移行を促進していきたいと考えています。コンシューマ向けPCに関しては、Windows 8への移行が中心になります。
-- 一方で、日本マイクロソフトは、過去2年間に渡り、世界ナンバーワン子会社として社内表彰されていますね。これに関しては、どんな姿勢で臨みますか?
樋口 社内的な話なので、本来ならば、あまり外部にお話しすることではないのかもしれませんが(笑)、なんとしてでも3連覇を達成したいというのが私の想いです。いまは、首位を狙える位置にいると考えていますが、最後の3カ月は、社内に発破をかけまくり、売上高でも、評価される様々な項目においても、他の国には負けない。3年前には、最後の3カ月でちょっと油断した途端に、他国に追い抜かれ、痛い目にあった経験があります。最後の最後まで気を抜かずにやっていきたいと思います。
-- 3年連続のナンバーワン子会社になることは、どんな意味がありますか?
樋口 これまでの2年連続のナンバーワン子会社の社内表彰は、パートナー、お客様のご支援によって達成できたものです。3連覇もパートナー、お客様ご支援がなければ達成できません。なぜ、私が3連覇にこだわっているのかというと、これによって、日本法人の発言権がさらに高まり、結果として、日本のパートナー、お客様にメリットがあると考えているからです。なにかトラブルが発生したときに、米本社の支援を最優先に受けられることができる、あるいは本社と直接かけあえるという環境づくりは、大手企業ユーザーにとっても、パートナー企業にとっても、安心感につながるといえます。
外資系企業の場合、本社との関係が緊密でないと、逆に本社の意向ばかりが強調され、日本に根付くという方向性とは逆に振れることもあります。日本マイクロソフトは、2011年2月に、社名に「日本」を追加し、日本に根差した活動をさらに推進することを宣言したわけですから、それを実行するには、やはり日本法人が、本社に認められるポジョンにいなくてはならない。3連覇はそうした点でも意味が大きいといえます。そして、この3連覇によって、さらに社員のモチベーションが高まることになる。好循環を生むことができます。
-- ここ数年、樋口社長は「顔が見えるマイクロソフトに変わる」ということを繰り返してきました。これはどこまで達成されていますか?
樋口 顔が見えるという点で、第1段階で目指したのは、コマーシャル分野での基盤をしっかりしなくてはいけないということでした。日本マイクロソフトでは、7割以上が企業向けビジネスであり、そこでは信頼性が求められ、会社が持つ「人間力」が重視されます。責任感を持ったビジネスをする必要があり、それを指して、「顔が見える」と表現していたわけです。その部分については、社内にも、社外にも浸透してきたといえます。競合他社と比較しても、信頼性に関しては相対的に上がっていると思いますし、アライアンスを組みやすい会社になってきたという評価もいただいています。製品だけの評価ではなく、営業対応への評価、そして、手前味噌ですが、私がいるから決めてくれたというような、声もいただいています。
これからの課題は、クラウドの世界になったときに、マイクロソフト自身が、エンド・トゥ・エンドで責任を持たなくてはならない場面が増え、そこで日本マイクロソフトとしての信頼感をどう高めるかという点です。パブリッククラウドの場合には、日本にデータセンターがなく、グローバルデータセンターを活用することになる。そういうフォーメーションにおいても、責任を果たさなくてはならない。クラウドビジネスはまだスタートして期間が短いですが、これから品質体制や、営業体制をもっと強化していかなくてはならないと考えています。