新たな成長の柱は自動車事業と住宅事業
一方、今回の中期経営計画において、事業成長の柱と位置づけられたのが、自動車産業と住宅産業だ。
創業100周年を迎える2018年には、自動車産業向けビジネスを2兆円事業に成長させるとともに、家電を除く住宅関連事業も同じく2兆円規模にまで成長させる計画を打ち出し、「パナソニックグループ全体の売上高が7~8兆円とすれば、そのうちの半分を、自動車、住宅で占めることになる」と、今後のパナソニックの姿を表現する。
特に、住宅産業向けでは、家電、設備、電材、建材のほか、ハウスメーカーであるパナホームの強みを活かした新たな価値提案に取り組み、「グループの総力を結集することで、最高の住宅を提案することを目指す」と意欲をみせる。
その第1弾として、2013年4月19日から、パナホームが戸建住宅の新製品として「CASART ECO CORDIS(カサート・エコ・コルディス)」を発売することに言及した。
中期経営計画の会見場には、商品を持ち込んで展示することはしなかったが、唯一、カサート・エコ・コルディスの模型だけを持ち込んだ。その点でも、この分野に力を注いでいることが伝わってくる。
カサート・エコ・コルディスは、パナホームの創業50周年記念商品と位置付けられ、屋根の上に太陽光発電パネルを載せるという従来の発想を180度転換。独自の「フルPVルーフ」と、軒樋を組み込んだ「ルーフフレーム」により、太陽光発電パネルそのもので屋根を構成するという住宅だ。
太陽光発電パネルには、パナソニックのHIT太陽電池を採用。これまで平均的な延床面積(約35坪)の2階建住宅では搭載が難しかった10kW以上の大容量発電が可能になるという。
そのほか、新デザインの換気システム「エアグリル」の採用や光触媒の外壁タイル「キラテック」の全面張りなどにより、デザイン性を向上。「家まるごと断熱」や「エコナビ搭載換気システム」、対応家電機器を制御できる「スマートHEMS」などのパナソニックの先進技術を採用しているという。
同社では、初年度1,000棟の販売を計画。現在建設中の藤沢サスティナブル・スマートタウンにおける主力製品にしていくという。
今回の中期経営計画では、これまで使用していた「まるごと」という言葉は使わなかったが、住宅事業においては、まさにパナソニックグループならではの総合力により、住宅事業を成長の柱にする考えだ。
顧客の"良いくらし"から逆算したビジネスを追求
その一方で津賀社長は、住宅産業向けビジネスおよび自動車産業向けビジネスにおいても、これまでの家電事業の経験を生かしていく考えを示す。
それを津賀社長は次のように表現する。
「パナソニックが従来から持っている、お客様のくらしに寄り添う『家電のDNA』を継承しながら、様々な産業のパートナーと一緒になって、お客様の良いくらしを追求していく」
そして、津賀社長は、別の表現として、「お客様からの逆算による成長戦略」とも語る。
「パナソニックは単なるテレビのメーカーではなく、様々なパートナーとともに "Engineering A Better World for you"を実現する企業である。これがパナソニックが目指すべき姿である。デバイス事業の中心を、これまでのBtoCを起点した垂直統合から転換し、お客様のニーズに応じてカスタマイズし、あらゆる空間で広くソリューション展開していくことを基本戦略にする。これをEverywhere!という言葉に込めていく」と、逆算による成長戦略の意図を語る。
LED照明、ディスプレイ、空調デバイスによって空間ソリューションを展開するというのがその一例であり、「4つの戦略領域」とする「住空間ネットワーク」「エコ&スマート ビジネスソリューション」「モビリティシステム+サービス」「コネクテッド・パーソナル」のうち、住空間ネットワークでは、住宅、家電、設備で一体化した新たな住空間を創出するという。
津賀社長は、「既存の枠組みを超え、異なる強みを掛け合わせるなかで、より大きな価値を生み出していく。事業部制による自主責任経営、カンパニーによる大きな事業戦略とが機能すれば、パナソニックは世界に類のないユニークな会社として、力強く復活できると考えている」と語る。
派手な方針がないのが今回の中期経営計画といえるが、社員、事業部、そしてパナソニックグループに求められる意識改革は、これまでにないほど大きなものになる。