3月8日、東京都内のカシオ本社にて行われた、同社の2013年春夏の時計新製品発表会。会場内で開催されたカンファレンスでは、今回のテーマ「THE SENSOR CHRONOGRAPH」についての解説をはじめ、今年の製品開発およびマーケティング戦略について語られた。
【レポート】新たなセンサーを搭載したG-SHOCKが登場! - カシオ2013年春夏の時計新製品発表会
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センサーよる計測機能がカシオ・クロノグラフの新たな価値になる
まず、カシオ計算機 営業本部 常務取締役の中村 寛氏がテーマの概略を説明。カシオは既成概念にとらわれない発想で、単に時を刻むだけではない新しい時計を生み出し、その開発思想に沿って、アナログウオッチの多機能を実現するための複数モーター独立駆動システム「マルチミッションドライブ」を開発。多彩な針の表現力を創出したと振り返った。
そして一方、刻々と変化する自然現象を的確に読み取るため独自のセンサー技術により、方位、気圧、温度、高度を測定するトリプルセンサーシステムを開発し、育ててきた。これが今回、「トリプルセンサー Ver.3」として飛躍的な進化を遂げたと宣言。カシオ独自の開発思想から生まれたこの2つのシステムの融合が、アナログウオッチに新たな価値と可能性を与えることで、時計市場の進化と拡大を目指していくと力強く語った。
「Premium Production Line」の高品質、高付加価値
続いて、取締役 時計事業部長 増田 裕一氏が多機能アナログ時計の開発について説明。「カシオは、高度なLSI技術を武器にデジタルウオッチの超多機能化に注力して開発を行ってきた結果、従来の時計概念では決して生まれ得なかったG-SHOCKなどの製品を世に送り出すことができました」としながらも、「世界の時計市場を見ると、アナログウオッチの市場が依然として大きい。腕時計にとっては機能的な価値よりも、情緒的、感性的な価値の方が大ということを市場自体が示している」と発言。「その状況を再認識することで、2004年以降、時計事業の方向性を大きく見直し、アナログウオッチの本格的な開発に着手しました」と語った。
「しかし、当然のことながら我々はチャレンジャーの立場。他の時計メーカーと同じことをやっていては、存在すらも否定されることを肝に銘じなければなりません。"カシオだからこそできるアナログ時計"であることが必要です。そのためにも、決して市場のマジョリティに飲み込まれないことが重要でした」(増田氏)
それは、アナログ時計の代表ともいうべきスイス勢とは、正反対ともいえるポジショニングだ。デジタル技術で培われたセンサーやメモリーといった、カシオの強みを生かせる多機能ウオッチこそが、カシオに求められるアナログ時計なのだと、増田氏は語る。
マルチミッションドライブの表現そのものはアナログだが、その心臓はカシオならではのデジタル技術が支えている |
マルチミッションドライブの進化プロセス |
「センサークロノグラフ」を支えるテクノロジーについてまとめた解説ボード |
「例えば、時分秒の各針を別々のモーターで独自に駆動・制御できるシステムです。秒針の一例として、普段は時刻の秒を刻んでいますが、ストップウオッチモードでは計測における秒を示し、ワールドタイムモードでは都市名を指し示す。これがマルチミッションドライブです。
さらに、多機能な針の操作を複雑なボタンでなく、従来のアナログウオッチのようにりゅうずで直観的に操作できるスマートアクセス、タフムーブメント(*)など、多機能アナログの信頼性や操作性などを進化させてきました。
そして今年、カシオが提唱するのは"センサークロノグラフ"。超小型化と超ローパワー化を実現した方位センサー。これにより、クロノグラフはまた新たな表現力を手に入れたのです」(増田氏)
(*)タフムーブメント
世界6局の標準電波を受信できる「マルチバンド6」、ソーラー充電システム「タフソーラー」、衝撃への耐久性を高めたムーブメント「ハイブリッドマウント構造」、時計の針位置がずれても自動補正する「針位置自動補正」という、4つの機能で構成される。
なお、超小型モーターの精密な複数同時制御が求められるマルチミッションドライブは、組み立てにおいても高い精度を要求されるという。そのため、歯車の設計からムーブメント組み立てラインまで、国内でも屈指の技術力を誇る山形カシオがムーブメント製造のすべてを一元管理のもとに行っている。
より精密な製造工程が要求されるモデルに関しては「Premium Production Line」として、画像認識や自動検知技術などを駆使し、時計組み立て技術の認定を受けた者だけが従事するエキスパートラインを設置。厳しい品質と信頼性を確保しているとのこと。
「今後、このPremium Production Lineを製造ラインのフラグシップと位置づけ、エキスパート制度を導入して今後のカシオのモノ作りをアピールしていきたい。これは、製品開発と同様、スイスのモノ作りとは対照的なカシオならではの製造ラインです。これを広く紹介するとともに、このラインで製造されたことを示すタグを付け、高級高額商品のブランディングを促進していこうと思います」(増田氏)
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