考察とまとめ
ということで、ざっとであるがGeForce GTX 650 Ti BOOSTの評価をお届けした。結果から言えることは
- GeForce GTX 650 Tiからはかなりの性能アップ
- Radeon HD 7790と比べても十分性能は高い。
というあたりで、ここから判断するに
- Radeon HD 7850と比較して10%程度の性能改善という謳い文句は、「恐らく嘘ではない」(≠正しい)
と考えられる。この3つ目の項目は、もうちょっと説明が必要だろう。
GeForce GTX 650 Ti BOOSTの性能が特に高いのは、高解像度(1,920×1,080~2,560×1,440pixel)のケースである。ここで妙にRadeon HD 7790が失速し、ほぼRadeon HD 7770と同程度になるのは、根本的にメモリ帯域が足りてないためと考えられる。
実際、低解像度だとしばしば同程度のフレームレートになるし、Sandraの結果ではむしろRadeon HD 7790の方が高速だから、シェーダの性能そのものは拮抗しているか、むしろRadeon HD 7790の方が高速であると考えて良さそうだ。ではどこに差があるかといえばメモリ帯域で、これは192bit Busを持ったGeForce GTX 650 Ti BOOSTが圧倒的に有利である。
従って高解像度のRadeon HD 7790の不調の理由がこのメモリ帯域だとすれば、Radeon HD 7790同様に128bit Busで、しかも4.8GHzのRadeon HD 7850は高解像度でさらに不利になると考えられる。なので、こうした高解像度域での性能はGeForce GTX 650 Ti BOOSTの方が上回ることは不思議ではない。
ただ問題は、Radeon HD 7700~7800クラス、あるいはGeForce GTX 650クラスでこんな高解像度のプレイを常用すべきかどうか、というあたりだ。もう少し解像度を下げて1,600×900pixelあたりでプレイする場合、GeForce GTX 650 Ti BOOSTの性能は恐らくRadeon HD 7850と拮抗する程度になるだろうし、モノによってはRadeon HD 7850が上回るかもしれない。
そういう意味では、GeForce GTX 650 Ti BOOSTの性能がそれなりに高い事は確認できたものの、製品ポジション的にはやや微妙な感じがする、というのが正直なところである。
加えて、消費電力はGeForce GTX 660とほぼ同等で、ピークで110W近くなることが分かった。GeForce GTX 650 Ti的な「一応6pin電源は必要だけど、基本的には低消費電力」のイメージでGeForce GTX 650 Ti BOOSTを選ぶと、ちょっと悲しい気持ちになるだろう。
最後が価格。192bit Busを選択した段階で、GDDR5が8チップ必要になってしまったので、どうしても高止まりにならざるをえない。GDDR5は16bitないし32bit幅単位での接続になるので、192bitだと64×4+32×4で、合計8チップ必要になる。なので、1Gbitチップを使うと1GB、2Gbitチップを使うと2GBになるわけだが、これが128bitバスならば2Gbitチップ×4という構成が取れるから、その分不利になる。
NVIDIAによればGeForce GTX 650 Ti BOOSTの価格は1GB構成が149ドル、2GB構成は169ドルとなっているが、これは現在のGeForce GTX 650 Tiとほぼ同じ値段であり、これが本当に実現すれば確かに割安感はあるのだが、そうなると現行のGeForce GTX 650 Tiが今度は売れなくなる気がする。
では既存のGeForce GTX 650 Tiを値下げするのか、それとも同じ値段のまま「省電力ならGeForce GTX 650 Tiを、高性能ならGeForce GTX 650 Ti BOOSTを」という売り方にするのか、そのあたりも含めて興味深いところだ。
ユーザーからしてみるとどうか? というと、確かにGeForce GTX 650 Tiからの性能改善は素晴らしいのだが、消費電力や想定価格を考えると「んじゃGeForce GTX 660で良くね?」という感が正直強い。
また性能改善は専ら高解像度で顕著だが、ただその高解像度では絶対的な描画性能が不足してる感も強いので、このあたりの解像度を狙うなら、そもそももっと上のグレードのGPU(GeForce GTX 670とかRadeon HD 7870とか)をお勧めしたいところ。最終的には価格次第なところはあるが、なかなか悩ましいポジションの製品といえそうだ。
<追記> という原稿を入稿した後でNVIDIAから、
- GeForce GTX 650 Ti BOOSTのTDPを134Wにする
という連絡があった。とりあえずTDPに関しては今更という感は無くもない。まぁシェーダーの無効分(GeForce GTX 660が960 CUDA Core、650 Ti BOOSTが768 CUDA Core)の192 CUDA Coreが6Wに相当するという事なのだろう。