NVIDIAは、3月18日~21日の4日間(米国時間)、米カリフォルニア州サンノゼにおいて、GPUに関する技術会議「GPU Technology Conference 2013」を開催。そのオープニングキーノートに登場したジェンスン・ファンCEOは、今後のGPUやTegraのロードマップをアップデートしつつ、クラウド時代のGPU活用のあり方を示した。
意外と身近なGPUコンピューティング
これまで、GPUコンピューティングというと科学者や研究者のための、取っつきにくいモノというイメージが強かったのは確かだ。しかし、ファン氏は「GPUコンピューティングは、われわれの身近なものになってきた」として、現在、1日あたり5億件もの"つぶやき"(ツイート)が投稿されているTwitterだが、Salesforce.comは、そのつぶやきのモニタリングや解析サービスにGPUを活用しているという例を示した。
また、英Shazam Entertainment社が提供する音楽検索サービスShazamもまた、楽曲の検索にGPUを活用していると言う。Shazamは、2002年に英国でスタートした音楽検索サービスで、街中で流れている音楽などの一部を携帯電話に聞かせれば、その曲名やアーティストなどの情報を得られるというもの。しかも、楽曲はオリジナルである必要はなく、ほかのCバンドが演奏しているものや、鼻歌でも検索をしてしまうという優れものだ。
このShazamの音楽検索サービスは、昨年4月に大幅なアップデートがされ、曲認識を最短1秒にまで短縮したが、同社はさらに同サービスにNVIDIAのGPUコンピューティング言語であるCUDA(Compute Unified Device Architecture)を採用することで、システムのコストを半分に抑えることを可能にしたことが、同社で技術開発を指揮するジェイソン・タイタスCTOによって明かされた。Shazamの音楽検索では、それぞれの音楽の波形情報から固有のパターン情報を作り、これをユーザーが検索につかう楽曲の一部と指紋照合のような形でマッチングさせるかたちで、目的の楽曲を探すのだと言う。同社はすでに2,700万曲以上のデータベースを持つが、タイタス氏は、今後はマレーシアの伝統音楽など、検索対象を広げていく意向を示した。
さらにファン氏は、英Cortexica Vision Systemsが開発を進めている新検索システムを紹介。同社はこれまで書籍やCDのカバー、ワインラベルの画像からその商品を検索するシステムなどを提供してきたが、新検索システムでは、曖昧検索の技術を盛り込み、雑誌などで気に入った洋服を撮影して、その模様(パターン)を検索にかければ、まったく同じ洋服を探すのではなく、色合いや模様が似た商品もあわせて検索結果を提供することで、ユーザーが幅広い選択肢を得られるようにするというもの。ファン氏は、これらの例を挙げ、GPUが持つ優れた演算性能は、今後もユーザー体験をもたらしていくであろうと期待を寄せる。