日本HPの「HP ENVY x2」は、タブレット部分とキーボード部分の分離合体が可能なWindows 8搭載ハイブリッドPCだ。ピュアタブレットにもクラムシェルノートPCにもなり、一台二役をこなす魅力的な製品だ。そこで、HP ENVY x2をいろいろな角度から眺め、その魅力を紹介していきたい。

HP ENVY x2

ピュアタブレットでもクラムシェルノートPCでも使えるハイブリッドPCの魅力

2012年10月にWindows 8が登場し、そこからさまざまなコンバーチブルPCが登場している。Windows 8の大きなウリの1つは、タイルが並んだ新UIだろう。タッチ操作に最適化されていることが特徴であり、タッチ対応のノートPCや液晶ディスプレイならより直感的で快適な操作が可能だ。また、大きめのタイルを使っていることや、マルチタッチでのジェスチャー操作などをサポートしているため、タブレットとの親和性も高い。

Windows 8の新UI

Windows 8とタッチパネル液晶を搭載したノートPCやタブレットは各社からリリースされており、中でも注目を集めているのが、一台でさまざまな用途に使えるコンバーチブルPCだ。コンバーチブルPCは、その名の通り、タブレットとしてもクラムシェルノートPCとしても使えることが魅力だが、その形態によって変形タイプと分離合体タイプに大別できる。

変形タイプは、基本的にクラムシェルノートPCをべースとした製品。液晶ヒンジが360度回転したり、液晶がスライドするといったギミックを搭載しており、クラムシェルノートPC形状からタブレット形状(またはその逆)に変形させることが可能だ。それに対し、分離合体タイプの製品は、ピュアタブレットをベースにした製品と言える。単体ではピュアタブレットとして利用でき、キーボードが必要な時は、キーボード付きのドッキングステーションと合体させることで、クラムシェルノートPCになるというものだ。

変形タイプの製品は、キーボードを取り外すことはできないので、タブレット形状で使う場合、その分重くなり、本体も厚くなる。また、液晶ヒンジが360度回転し、キーボードを裏側に折り返してタブレット形態にする製品だと、タブレットの裏側でキーボード面がむき出しとなるので、持ったときに違和感がある。一方で分離合体タイプの製品はキーボードを取り外せるため、純粋なタブレットとして使えることがメリットだ。変形タイプと違って、タブレット時もクラムシェルノートPC時も、形状的な面での妥協がないことが大きな特徴と言えるだろう。

分離合体ハイブリッドPCのHP ENVY x2なら、ピュアタブレットは横状態でも縦状態でも、そして標準付属のキーボードドックと合体すればクラムシェルノートPCとして使える

このように多数のアドバンテージを持つ分離合体タイプだが、製品数はそれほど多くない。2013年3月の時点で、コンシューマー向けに発売されている製品としては、日本HPの「HP ENVY x2」、日本エイサーの「ICNIA W510D」、ASUSTeK Computerの「ASUS VivoTab Smart」くらいだ。ここでは、その中でも全体的な完成度が高く、ボディの質感も高いHP ENVY x2に注目していきたい。

考えられた心地よさを持つ分離合体メカニズム

まず注目したいのが分離合体のメカニズム。HP ENVY x2は、タブレットとキーボードドックとの分離合体により、ピュアタブレットとしても、クラムシェルノートPCとしても利用できるわけだが、分離合体の使い勝手にも大変こだわっている。

いくら分離合体システムを備えていても、位置合わせに気を使ったり、合体や分離に手間がかかるようでは、利便性が低下してしまう。HP ENVY x2では、この分離合体タイプのキモともいえる分離合体メカニズムに、マグネットアシストと呼ばれる磁石によるアシストシステムを採用している。

タブレットとキーボードドックの「合わせ」部分

合体させるときは、キーボードドック側の2つの突起にタブレット側の2つの穴を合わせるのだが、厳密に位置取りせずに多少ラフに合体させようとしても、マグネットの力で自動的にピタッとはまってくれる。マグネットのアシスト力も絶妙で、ラッチの"カチッ"とはまる感覚がとても気持ちいい。分離もすこぶる簡単で、ヒンジ部中央のラッチを左にスライドさせながら、もう片方の手でタブレット部を持ち上げるだけだ。

ワールドワイド前提の過酷なテストで耐久性も安心

今回、独自に10,000回以上の分離合体テストを敢行。詳しくは後日公開予定の動画で

HP ENVY x2の分離合体には、ある意味クセになる快適さがあり、つい何度もやってしまいたくなる。ガジェット好きにはたまらない感覚になるだろう。1つ気になるのは耐久性だが、こちらもまったく問題ない。実際に、10,000回以上の着脱テストを繰り返し、その過酷なテストを難なくクリアしているそうだ。10,000回なら、仮に1日5回着脱しても、5年半は持つ計算になる。

加えて、分離合体メカニズムだけでなく、各種インタフェースのコネクタ部分やボディ全体に関しても、耐久性と強度に十二分に配慮して設計、製品化されている。他社の一般的なノートPCよりも厳しい条件で落下テストや衝撃テスト、ヒンジの開閉テストなどを行い、それらのテストをすべてクリアしないと製品化されないという。

HPはワールドワイドで事業を展開しているグローバル企業であり、当然ながら、HP ENVY x2も日本以外の国で販売されている。国によって、PCに求められる信頼性や環境適合性などの条件が異なるため、ワールドワイドで条件を満たすためには、テスト内容も厳しくなるのだ。例えば、寒冷地域、熱帯地域、高所地域、砂漠地域といった過酷な環境でも、HPが定める基準できちんと動作することが求められる。

10,000回の分離合体テストを終えたHP ENVY x2。コネクタ部分に多少の汚れはあるが、見た目はまったく「へたって」いない

手に持つ喜びを感じる素材と表面加工へのこだわり

HP ENVY x2だけでなく、HPの製品には細部まで手を抜かない、ものづくりへのこだわりが感じられる。カタログスペックには現れにくいが、堅牢性だけではない手に入れる喜びを大きく向上させてくれるものがあり、製品への愛着にもつながる。HP ENVY x2が持つ分離合体の心地よさと優れた耐久性は先述の通りだが、「素材へのこだわり」「表面加工のこだわり」「音へのこだわり」も見逃せない。「音へのこだわり」は次回以降で紹介する予定なので、ここでは素材と表面加工を見ていきたい。

HP ENVY x2のボディの材質はアルミ合金である。アルミ合金は高級感があり、軽くて丈夫なだけでなく、加工性も優れているため、採用にいたったという。ワールドワイドで製品を展開することを考えると、国によって好みが異なるカラーバリエーションなどは採用しにくい。そのため、表面加工にこだわり、国を問わず好まれる質感を実現しているのだ。

アルミ合金は加工性に優れているため、場所に応じて、各種の表面加工を使い分けている。天板(トップカバー)は、ヘアライン加工で高級感を演出し、パームレスト部はサンドブラスト加工で暖かみを、さらにタッチパッドはスピンドル加工で、同心円状の輝きを実現している。タブレット部をキーボードドックから分離するときにスライドさせるラッチについても、同心円加工が施されているなど、芸が細かい。HP ENVY x2は、金属特有のプレミアム感を、こうした表面加工により、さらに高めているのだ。この質感ひとつ取っても、とても直販価格で70,000円を切る製品とは思えない。

HP ENVY x2のボディはアルミ合金(写真左)。ヘアライン加工の天板には高級感と剛性感があり、指紋などの汚れが目立たないのも大きなポイント。中央にある「HP」ロゴの背景だけ光沢加工で、よいアクセントになっている(写真右)

ひんじ部分の天板側に彫り込まれた「HEWLETT-PACKARD」は、デザインの一部として嫌みがない(写真左)。キーボード面のパームレストはサンドブラスト加工、タッチパッド表面は(写真では見にくいが)同心円状のスピンドル加工だ(写真右)

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