東日本大震災から2年。携帯電話の世界ではスマートフォンが主役の座につき、iPhoneも2世代新しくなった。この2年間で機種変更したり、キャリアを移った人も多いだろう。それでも、あの時に持っていた携帯をどんなふうに使ったのか、きっとみんなよく覚えているのではないだろうか。誰と何を話したか、どんなメッセージが届いたか、どんなニュースを見て、mixiやTwitterに何を書き込んだか。

忘れようもない記憶は誰もが持っているが、一方でその前例が当てはまらない事態が再び起きる可能性も忘れてはならない。先の東日本大震災では、スマートフォンとSNSが(良くも悪くも)情報伝達の量を格段に広げたと言っていいだろう。しかしそれは電波と電源があればの話。もし自分や家族・友人が災害の渦中にある場合、今持っているiPhoneはどう使えばいいのだろうか。

災害時はデータ通信を推奨

大規模な災害が起きると通信の量が増え、輻輳(ふくそう)といわれる現象が起きる。電話網の通信量には限界があり、それを超えた通信が流入すると全体が流れなくる、いわば通信が"交通渋滞"している状況だ。これによって通信網全体が停止してしまうことを防ぐために、接続規制が行われることがある。大規模災害発生時に電話がつながりにくくなるのはこのためだ。

ただし、これは電波そのものが減少するわけではないので、端末側からはアンテナが立っているのに通話できないという状態に見える。平常時なら画面のアンテナ表示が1~2本でも通話はできることが多い。5本なのに繋がらないと相手側の被害が大きいのではないかと不安になり、ついリダイヤルを繰り返してしまうところだが、混雑を悪化させてしまうので逆効果だ。

こうした時は、通話よりもパケット通信のほうが繋がりやすい。通話と通信は仕組み上"別枠"なのだ。利用者側としては通話料金とパケット通信料金が別項目になっていることと結びつけると理解しやすいだろう。iPhoneでいえば、設定で「モバイルデータ通信」をオフにしても通話は可能。その逆もまた然り、ということだ。

音声通話で回線を使用すると、その通話の終了まで1回線分が占有されてしまう。しかしメールなどのパケット通信では送信時のみスポットで電波を使用するため、全体にかかる負荷が小さくて済むそうだ。通話よりもメールや、Webで提供される「災害用伝言板」サービスの利用が推奨されるのはこのためだ。実際に、ソフトバンクでは東日本大震災の際にパケット通信は規制していなかったという。

とは言っても、災害時にどのような対応が行われるのかは、災害の規模や利用状況に必然的に左右される。前例は参考にならないと考えておいた方がよいだろう。

なおiPhone 5から使われているLTEでは、技術的には音声通話をVoIPというパケット方式によって送ることが可能だが、現在はデータ通信のみに提供されているため、通話規制があった場合は3G端末と同じく通話が利用しにくくなる。

パケット通信を使った安否確認

災害時に電話をかけるのは家族や友人などが無事でいるのか安否を確認したいから、というケースが多いだろう。通話ができない時に自分の状況を人に知らせることができる「災害伝言板」サービスを各社が提供している。名前は聞いたことがある方が多いと思うが、実際に触れてみた方は少ないのでは。次ページからは簡単に使い方を紹介する。