INTERNATIONAL CES 2011にて「PRODUCT OF THE FUTURE」を受賞
―― 製品のプロトタイプが初めて発表されたのは、2011年のCES(コンシューマーエレクトロニクスショー)でしたね。
道蔦氏「あのときはまだ、G-SHOCKブランドで出すとは決まっていませんでした。G-SHOCKのケースに入れると、技術やコンセプトより『G-SHOCKの新製品』という印象が強くなります。そこで、あえて新しいケースを作って展示し、技術を発表しました。各方面から高い評価をいただき、ポピュラーサイエンスという雑誌からは、その年のプロダクト・オブ・ザ・フューチャー賞をいただいたんですよ。このとき一緒に受賞したのは、ベライゾンの4Gネットワークやステラのワイヤレス充電技術でしたから、驚きました。また、G-SHOCKという看板なしに受賞できたことが、技術者として非常に嬉しかったですね。
スマートウオッチと呼ばれるものは他社からも発売されていますが、それらはBluetooth LEを使っていても充電が必要だったりします。カシオは最初からBluetooth SIGに参加して、プロファイルの企画段階から関わっているところが大きな違いです。
私たちは、技術や製品の使い方、2年間の電池寿命など、各要素を時計に最適化して、将来的にはソーラーなどにも発展できる素地を持たせるところまで自分たちで策定しています。全体の内容を詳しく知っているし、公開した時点ですべての仕様を理解しています。後発のメーカーは、ドキュメントを読んでから作るので時間がかかりますし、なかなか規格の隅々まで把握できません。ですから、その点でカシオは有利なのです。
経緯を考えると、よくここまで根気よく会社がやらせてくれたなぁとも思います(笑)。新製品の開発に10年近くかかっているんですから。そんなところも、カシオだからできたという部分かもしれませんね」
G-SHOCKという看板
―― そして、2011年3月の「BASELWORLD 2011」で、G-SHOCKとして発売することを発表されました。G-SHOCKのケースにモジュールを組み込む際の苦労はなかったのでしょうか?
道蔦氏「スマートウオッチをG-SHOCKで製品化するなら、やはり定番モデルの『6900』と『5600』でやろうと決めていました。まずは6900のケースにモジュールを入れることを最初に考えたのです。6900ならケースも比較的大きいですし、電波ソーラーモデルの受信アンテナをBluetooth用に置き換えられることが分かっていたので。その後、第一弾のGB-6900は、2012年3月に発売になりました。
―― 2012年頭のCES 2012でも、G-SHOCKの「GB-6900」として展示されたんですよね。
道蔦氏「はい。2012年は日本国内にしか対応端末がなかったので、展示では『iPhoneやほかのAndroidはいつ対応するんだ?』という質問が多かったです。
これは2013年のCESの話になりますが、アメリカでもすでに発売されていまして、ラスベガスには取り扱っている店舗が2店ほどありました。CESにいらっしゃったお客様からも、これはどこで買えるのかと聞かれましたね。次の日にさっそく買ってきたお客様もいましたよ。あとで聞いたところ、2店のうち1店は売り切れ、もう1店も一部のカラーは売り切れたそうです」
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