「詳細スキャン」で高い復元を実現する
「HD革命/FileRecovery Windows8対応」は昨年6月にリリースした「HD革命/FileRecovery」の32/64ビット版Windows 8対応版である。スタート画面にArkランチャーを登録し、パソコンが起動しなくなった際に活躍するWindows PE(Preinstallation Environment)も32/64ビット版を収録し、お使いの環境によって選択可能になった。基本的な機能は以前のレビュー記事をご覧頂きたい。
「HD革命/FileRecovery Windows8対応」はパソコン初心者でも扱える「簡単復元」モードだけでなく、スキャンモードやスキャン対象となるファイルの種類を選択しながら復元できる上級者向け「詳細復元」モードを搭載。これにより、操作ミスでパソコン上から"消えたように見える"ファイルを復元することが可能だ。 この「詳細復元」モードには、MFTを元にデータが存在する可能性が高い場所だけをスキャンし、ファイルの復元を実行する「通常スキャン」と、クラスター単位でボリュームやドライブ全体をスキャンする「詳細スキャン」の2種類が用意されている。前者は必要な箇所のみスキャンを行うため、全体的な作業時間を短縮可能。後者はスキャン箇所が全体に及ぶため、作業時間は必然的に増えるものの、精度は高まるので復旧の可能性さらに増す(図06)。
さらに詳細スキャンには、全体スキャンを行う際に拡張子を元した「直接ファイルを検出」と、ドライブ全体からMFTに残されたレコード情報の痕跡を見つけ出し、ファイル復元を行う「ファイルシステムを検出してスキャン」という2種類のスキャン方式が用意されている。操作ミスなどにより数ファイルを削除してしまった場合は通常スキャンでも問題ないが、大量のファイルを失ってしまった場合はレコード情報の痕跡を利用する詳細スキャンが威力を発揮するのだ(図07)。
このような機能は「HD革命/FileRecovery Windows8対応」だけでなく、一般的なファイル復元ソフトも備えている。パーティションテーブルが破損し、ドライブとして認識できなくなった場合もクラスター全体をスキャンすれば、ある程度のファイルを復元することが可能だ。ポイントはその精度である。
同社では、対象となるパーティションにテストデータ(無意味なデータ)をコピーし、パーティションを削除した状態となる「環境1」と、テストデータコピー後にMFTのみ消去した「環境2」で検証を行っている。環境1はMFTの痕跡を検出し、同情報を元にファイルを復元。環境2はMFTを検出できないため、セクターをすべて読み込み、復元するファイル形式に従って復元を実行している。その結果、環境1では581ファイル中505ファイルの86.9パーセント、環境2では93ファイル中86ファイルの92.5パーセントという高い結果を確認できたとしている。MFT情報を元にした復元結果が良好なのは、一般的なファイル復元ソフトも同じだが、MFTを検出できない状態の復元結果に限り、「HD革命/FileRecovery Windows8対応」の結果は高い。これは同アプリケーションがファイルの痕跡を検出し、そのファイルの特徴をとらえ最適な復元を行っているからだ。もちろんスキャンに要する時間は少々長くなってしまうが、高い復元結果を得られるのであればさしたる問題ではないだろう(図08~9)。
有償無償を含めるとファイル復元ソフトは数多く存在し、それぞれ特徴的な機能を備えている。それでも「HD革命/FileRecovery Windows8対応」は高い復元能力を備えると同時に、Windows 8ではバックアップデータや復元ポイント(スナップショット)からファイルやフォルダーを復元する「以前のバージョン」機能が削除された。また、オープンソースのファイルサーバーであるSamba(サンバ)と異なり、Windowsのファイル共有機能は、いまだにネットワーク経由のごみ箱機能をサポートしておらず、以前よりファイル復元ソフトのニーズは高まっている。各ファイル復元ソフトは一長一短あるものの高い復元能力を持ち、数々の機能やWindows PEによる復元環境を備える「HD革命/FileRecovery Windows8対応」を、万が一に備えて普段から手元に置いておくことをお勧めしたい。