辞書関連機能の強化でさらに使いやすく
それではJust Right!5 Proの新機能を確認する。一番の注目点は単語の「表記」や「読み」および「品詞」を表示する「形態素アナライザー」を搭載した点だ。校正辞書に単語登録をする際、単語を機能や形態などによって分類する品詞の扱いだが、そのつど確認して調べるのは主たる作業の妨げになってしまう。そのため前バージョンを使っていた筆者は校正辞書はさほど使わず、スペルチェックの強化にいそしんでいた。Just Right!5 Proは形態素アナライザーを搭載することで、自動的に文章を単語単位に分解し、各単語の表記や読み、品詞を自動的に選択することで校正辞書の素早い登録を可能にしている(図01)。
もう一つの注目点がユーザー独自の表記ゆれの指摘が可能になった点。あまり目立たないが、表記統一は出版社や媒体、企業によって異なるのをご存じだろうか。例えば送り仮名一つとっても本則なら「終わる」だが、省く場合は「終る」に変化し、本則で「表す」と表記するところも送る場合は「表わす」に変化するのは日本語の難しいところだ。外来語に対するカタカナ表記も「Interface」を「インターフェース」「インタフェース」「インターフェイス」とさまざまな表記方法が存在する。
このようにユーザーが所属する組織によって異なるルールへの追従は難しかったが、Just Right!5 Proでは表記ゆれ用ユーザー辞書を用意することで可能にした。同機能を使用するには、あらかじめ「ゆれグループ定義」ファイルを作成するのだが、これが少々書きづらい。グループの先頭行に「■」を記述し、二行目には正しい表記を「単語」「読み」「品詞」「属性」をタブ区切りで入力。以降の行は表記ゆれとなる単語を同じフォーマットで記述しなければならない。一度慣れてしまえばテキストファイルで管理できるため、ダイアログから操作するよりも圧倒的に効率的だが、慣れるまではわずかながらの時間を要しそうだ(図02~04)。
今まで用意していなかったことが不思議なくらい便利なのが、複数テキストファイルに対する一括校正機能である。指定したテキストファイルに同じ校正チェックを実行できるため、複数ファイル間における表記統一が容易になった。筆者は書籍原稿を執筆する際に、この表記統一の問題で一つのテキストファイルに原稿をまとめているが、同機能により章単位でわけられるのは実にありがたい(図05~06)。
先ほどの画面をご覧になってお気付きのとおりJust Right!5 Proは、以前のバージョンと比べてデザインが刷新されている。ボタンデザインなどは端たる話なので割愛するが、ポイントは新たに設けられた「指摘一覧ウィンドウ」。文字どおり校正チェックであぶり出した指摘項目を一覧表示し、指摘項目によって校正結果の確認が行える(図07)。
このようにドラスティックな変更はないものの、ユーザーの使い勝手だけを優先して機能改善を行ったJust Right!5 Proは実に使いやすいアプリケーションとなった。以前のバージョンを使っていて困ったのが、10万字を超えるテキストファイルを与えると再校正チェック後にハングアップしてしまうバグが潜んでいたが、本バージョンで確認したところ、23万字のテキストファイルで校正を実行しても安定動作している。複数ファイルの一括校正機能により、一つのファイルにまとめる必要はなく名あったものの、安定化は評価できるポイントに数えていいだろう。
なお、Just Right!5 Proが校正できるファイル形式は従来と同じく、テキストファイル/HTMLファイル/PDFファイルに限られるが、アドオンを追加することでMicrosoft Officeスイートにも対応。ただしバージョンは2003/2007/2010に限られ、先頃リリースされた"新しいOffice"であるMicrosoft Office 2013には未対応だった。もっとも以前のバージョンにおけるアップデート状況を踏まえると、今後数カ月程度でMicrosoft Office 2013に対応するアップデートファイルが公開されるのではないかと思われる(図08)。
我々の身近にある文書作成を効率的に行い、完成度の向上を求められるユーザーには有用なアプリケーションだ。冒頭で述べたようにJust Right!5 Proは比較的高価なアプリケーションに分類されるため、気軽に勧めることはできない。だが、自身の業務内容に文書を作成する場面が生じる方は、ワープロソフトに付属する簡易的な文書校正ツールではなく、Just Right!5 Proを使ってほしい。
阿久津良和(Cactus)