書き手を刺激する「感太」とEPUB 3.0のフィックス型サポート
文書を紡ぎ上げる際、重要なのは書き手のインスピレーションである。頭に思い描いたロジックやイメージを言葉に変換し、キーボードを使って入力するのが一般的だ。しかし、思い描いた内容は脳内変換と指を動かすという処理が加わることでおぼろげになり、何を書くべきだったのが忘れてしまうことがあるだろう。執筆を生業としている筆者も常に思い浮かんだ内容を、いかに指を動かして文字にするかが難しい部分の一つだが、一太郎2013が備えた「感太」は実に興味深い。
発売元であるジャストシステムの説明によると、「同社の日本語形態素解析技術で解析して文書内容を判断し、季節や時間帯などさまざまな条件に基づいて、書き手のインスピレーションを刺激するカードを提示する」とある。単語と写真(もしくはイラスト)を組み合わせたカードがツールパレットに表示され、一定時間ごとに提示されるというものだ。
表示されたカードに含まれる単語をそのまま挿入し、自身が刺激を受けるカードはお気に入りに登録、複数のカードを開くことも可能だ。独立したウィンドウで複数のカードを並べて表示することもできるため、筆……もとい指が止まったときにカードを眺めて、次の文書を考えるための機能として用いると便利だろう(図03~04)。
また、ソプラウィンドウなる独自のウィンドウでは収録された電子辞書やWikipediaで単語の意味を調べることもできる。オンラインアップデートを確認するとEvernoteやFlickrを追加するプラグインも配布されていた。もっとも、論評文書や解説文書に向いているかと言えば疑問だ。エッセイやコラムといった"読み物"を執筆する際には刺激を受けられるかもしれないが、本稿を書くにあたってインスピレーションを得たカードは残念ながら皆無である。ただし、同機能から呼び出す辞書を雑学として読んでいると、意外な気分転換なったことは述べておく(図05)。
もう一つの新機能であるEPUB 3.0の強化にも目を向けてみよう。通常EPUBで出力する際は、再流動型とも呼ばれるリフロー型が用いられる。再生するデバイスに併せて文字データを表示する仕組みであり、スマートフォンなどで威力を発揮する形式だ。その一方でタブレット型コンピューターのように表示能力に余裕があるデバイスでは、文庫や書籍のような表示を求めてしまう場合もある。そのために用意されたのがフィックス型(固定型)だ。
最初からページの概念があるため、使用するデバイスによってもレイアウトが変化せず、制作者の意図する表示が可能になる。このようにどちらの形式も一長一短だが、一太郎2013では「固定レイアウト型」という表現を用いて、このフィックス型に対応した。フィックス型を選択するデメリットの一つには、クリッカブルマップによる目次やリンクを使用できないが、索引一覧の出力に対応することで補っている(図06)。
電子書籍作成時に役立ちそうなのが「写真をまとめてレイアウト」という新機能。複数の画像ファイルを選択し、レイアウトのパターンを選ぶと画像ファイルを一括配置するというもの。電子書籍作成時に悩まされるのが、画像を効果的に配置するレイアウト操作だが、同機能を用いることで、一般雑誌のように見栄えの良い電子書籍や書類を作成できるだろう(図07~08)。