CS大会優勝までの苦労の道のり
Q:それでは、ちょっと苦労話的な話になってきましたので、皆さんそれぞれ苦労されたところを1つお聞かせください。堀江さんはまずリーダーということでプレッシャーもあったようですが、さすがに今回は若手のみなので、「2連覇至上命令」までは出ていなかったんですよね?
堀江:いい意味でのプレッシャーというか緊張感はありました。周りからは「2連覇できるとイイね」、「2連覇するとカッコイイね」という感じで声を掛けられていましたし、部長からも「今年はリーダーとして色々と大変だね!」と声を掛けられました。
Q:入社2年目の若手が、部長から直接、声をかけられると嬉しいですね(笑)。
仲本:当然といえば当然ですが、2年目ということで仕事が増える中、時間を作ってETロボコンの作業をおこなうところが大変でした。
堀江:その通り。1年目は2年目に比べると業務量がそんなに多くないので仕事が終わった後にETロボコンに時間をかけられるんですけど、2年目になると任される仕事も増えてきますので、その中でETロボコン用の時間を作り、なおかつ新入社員にもいろいろと伝えていくというところは難しかったです。
Q:塚本さんと中野さん(画像13)を見ていると、ちゃんと伝わったんじゃないですか?
堀江:うまく伝わっていると嬉しいですね(笑)。でも、新入社員は新入社員で大変だったと思います。先ほどもいいましたように、工場実習とかもありますから。
Q:続いて、今さんはいかがですか? モデルはもちろん大変だったと思うのですが、特にどこら辺が大変でしたか?
今:モデルについては引き継ぎそのものが大変だったわけですが、中でも前回大会までのHELIOSのモデルを分析するのが大変でした。
Q:それはそうですよねぇ。エンジニアとしてベテランの方のモデルを分析するというのは、勉強になるのも事実でしょうけど、なかなか大変だと思います。そもそもほかの人の考えを理解するというだけでも大変かと思いますし。
今:それから、他のメンバーが作ってくれたモデルとのトレーサビリティを上手くとるために、実装担当と設計担当で綿密にコミュニケーションを取りながら進めていくというところもなかなか大変でした。分業した部分がきちんと繋がっていないとすぐに審査員の方に指摘されてしまいますから、手抜かりは許されないんです(笑)。
Q:1人だけですべての作業を進められればある意味楽でしょうけど、それはそれでなかなか大変ですし、その一方で複数人が協力して完成させていくというのは、それはそれでもちろんコミュニケーションのスキルがいりますよね。それでは、原島さんはいかがですか?
原島::尻尾走行も2年目ということでほかのチームも熟成させてきていたのではないかと思います。HELIOSも昨年から尻尾走行を採用していますが、我々自身としては初めての挑戦だったということと、業務で時間がなかなか取れない中で、短い時間で高いレベルまで持っていかないといけなかったところが一番大変でした。尻尾走行で速度が速くないと上位を狙えないわけですが、かといってあまりリスキーに攻め過ぎると転倒してしまいますし、確実性を重視し過ぎても、今度は地区予選を突破することさえままならなくなってくるという、そこのバランスを取るところが一番難しかったです。
Q:速さと転倒はいうまでもなく表裏一体ですからね。そこの部分のサジ加減は確かに大変そうです。では、仲本さんはどうでしょう? 先ほど2年目としての大変さを語っていただきましたが、ご自身としては。
仲本:開発自体はそれほど苦労しなかったのですが、ETロボコンの活動は業務が終わってからになるため、活動時間を確保するためにも業務との調整が大変でした。
Q:それでは塚本さんは、伝統のある強豪チームに参加してどうでしたか?
塚本:私は高専の頃からETロボコンに参加しているのですが、その頃からHELIOSのレベルは高かったですね。高専時代はほとんどトライ&エラーでやっていました。しかし、ベーシックステージはほかのチームもかなり技術的に熟成してきていますから、トライ&エラーだけだと求めるレベルまでなかなか到達できません。そこで今回はデータや理論といった根拠に基づいて徹底的に作り込みました。HELIOSのメンバーの一員となって、レベルの高さに追いつくのが大変でした。
堀江:塚本君はすでに高専でバリバリやってきたので、チームに入った時から知識のレベルがかなり違っていました。我々が逆に教わっているような状態のときもありましたから…(笑)。
塚本:いや、そんな(汗)。
Q:先輩も後輩も関係なく、教えて教えられてをできるのは、チームとしてやはりまとまっていますよね。
一同:(うなづく)
Q:参加する選手は基本的にはプロのエンジニアとして初心者なのに、競技として求められる技術が年々高くなっているから、そこに到達するまでのギャップがどんどん広がってきていて、そこは大変ですね。同じく初参加の中野さんはどうでしょう?
中野氏(以下、敬称略:実は、私はチームの中で唯一畑違いの分野出身なんです。大学では音声認識を学んでいたのですが、音声認識のプログラムは1回動かしたら終了なので、組込み技術ならではの繰り返し動かすプログラムの考え方に慣れるということが大変でした。担当したのは、シーソーから下りた後、ラインから外れた際に復帰するという小さなパートだったのですが、任されたからには足を引っ張るわけにはいかないのでとにかく必死でした(画像14)。
Q:使えるメモリの容量とかも随分と違うでしょうし、プログラミングのスタイル自体を根本から変えるレベルの話でしょうから、さぞかし苦労されたことでしょう。先輩方に教えてもらいました?
中野:仲本さんにつきっきりで教えてもらい、やっと形になってきたわけです。先ほど話題にあがりましたがアドヴィックスは安全第一を最重要視していますので、担当のパートでもさまざまなミスケースを洗い出していきました。1つがうまくいってもその次がうまくいかないとかいろいろと出てきたのですが、最終的には復帰に関してはどんな状況下でもいけるという自信は持てるレベルになりました。今回はお見せできなかったので残念ですが…(笑)。
Q:見たかったですねぇ。
中野:シーソーの下りる地点を汚してもらい、さらにラインへの復帰を難しくてもらっても、HELIOSだけは突破できます(笑)。それぐらいの自信はありました。