CS大会を振り返ってみて
Q:どうでしょう、皆さん、インタビューが始まって少し経ちましたが、そろそろ優勝した実感が湧いてきましたか?
堀江:良い結果を残せてよかったな~と感じます。会社に報告するのが楽しみです(笑)。
今:良い報告ができるね(笑)。
仲本氏(以下、敬称略):アウトコースで完走した直後にコースアウトしてしまった時は、テンションが一気に下がりました。上位入賞は諦めていたところからの総合優勝でしたから、今でもちょっと不思議な感じです(画像6)。
Q:リタイヤした時、チームの雰囲気はどうでした?
仲本:終わってしまったな~、という感じでしたね。チームメンバー全員がそれぞれ「詰めきれなかったよね…」と責任を感じていました。
Q:でも、その後の結果発表の際にモデル部門でゴールドを受賞しました。その時はどうでしたか?
堀江:モデル部門でゴールドを受賞したときにはもしかして…と、淡い期待が出てきました(笑)。
一同全員:(笑)
Q:それで、実際に総合優勝を告げられた時はどうでしたか?
仲本:総合優勝は、私たちも本当に驚きました。会場の後ろの方からも「本当に!?」って声が聞こえてきました(笑)。
Q:ETロボコンは競技(タイム)とモデルと両部門そろって成績がよくないと総合優勝できませんからね。アウトコースも完走はしていましたから、結果的に競技部門で5位を獲得していたのが大きかったんでしょうね。
斎藤:総合優勝しても反省点はあります。社内には今回のチャンピオンシップ大会で使わなかったプロセスがありましたから、それを使い切れなかったのが心残りです。
堀江:そうですね、その点は次年にむけての反省点なので、会社に帰ったらすぐに確認するつもりです。
Q:原島さんは今回の優勝、どうですか?
原島氏(以下、敬称略)::昨年までのモデル担当が今回はいないので、上司に「ちょっと厳しそうです」といったら、「1人抜けたぐらいで大きく影響を受けるようなら、引継ぎが上手くいっていないってことだよね!」といわれていましたので、本当に優勝できてよかったです(笑)。(画像7)
Q:アウトコースは完走のみでしたが、その完走ができなかったチームが多いわけですから、もし昨年と同じ白熱電球が点いていない状況なら、ガレージまで確実に行けていたんじゃないですかね? (天井照明の)白熱電球の影響で、完走率が大幅に下がったといわれていますが(画像8)。
堀江:弊社の製品はブレーキということもあり、「絶対」に動かなければならないという使命があります。製品づくりと同じ気持ちでETロボコンに取組んでいたのですが、アウトコースのベーシックステージをゴールした後にコースアウトによってリタイヤとなってしまい、大変悔いが残る結果となりました。全チームがアウトコースのガレージインを成功できていないのならまだしも、両コースともガレージインを決めているチームもありましたから、総合優勝となっても素直に喜べず複雑な心境です。やはりアウトコースもガレージインを決めたかったです(画像9)。
Q:優勝をそのまま喜べない複雑な心境というわけですね。ところで、今回の完走率の低さですが、やはり白熱電球の影響だったのですか?
塚本氏(以下、敬称略):まだ細かく調べていませんが(インタビューは表彰式の直後に行った)、横方向からの光の影響が強かったのではないかと考えています。ただ、HELIOSのベーシックステージはフィードフォワード(前もって変化を予測して、得られるデータに変動を起こさせないよう打ち消してしまう制御方式)を強くしてありますので、光の影響は受けにくいはずなんです(画像10)。
Q:それでは、アウトでのコースアウトは、何が原因だったのでしょう?
堀江:横方向からの光だと思います。影響は受けにくいとはいっても、完全にはシャットアウトできませんから、かなり強い光があるとやはり影響は受けてしまいます。試走の段階から影響が強いのは確認できていましたので、試走時間内に施せる対策はすべて施して競技に臨んだのですが、横方向からの光が防ぎ切れないほど強くて、コースアウトしてしまいました。
Q:実際のところ、白熱電球の問題はやはりありましたか?
斎藤:白熱電球の影響は結構あって、完走率の低さに影響していたと思います。人の目にはステージ上の白色がどこも同じ白に見えても、センサのレベルでは同じ白ではないのです。
Q:それでは、幻となってしまったアウトコースのボーナスステージの話を少し聞いてみましょう。階段(画像11)は仲本さんの担当ですが、どんな点を工夫されましたか?
仲本:階段を下りる時に、転倒を防ぐことを狙って後ろ向きに下りる手法を今回は採用していました。
Q:今回はいくつかのチームがその方法を採用していましたが、HELIOSが取り入れているとなると、次回はもしかしたらさらに増えるかも知れませんね。ほかには、何か今回初めて採用したものはありますか?
堀江:ベーシック走行での走り方を工夫しています。それによりインコースでは全チーム中の最速ラップ(1位)を刻むことができました。アウトコースでは相手のコースに侵入し最短経路(レーンチェンジして常にコーナーでイン側になるコースを通るショートカット走法)で走行したチームには及ばなかったものの、2位のタイムを出しています(画像12)。
Q:ショートカット走法を除けば、どちらも1位だったというわけですね。ちなみに、ショートカット走法ですが、採り入れないんですか?
堀江:技術的には可能ですが、自チームが走行妨害で失格、相手チームが再スタートとなる危険性がありますから、そういったリスクの高い手段は使わずに正攻法で最速タイムを叩き出すのがHELIOSのポリシーです。たとえば、相手コースに侵入した時に自身の走行体が転倒すると後ろから来た相手の走行体の妨害となってしまい、相手チームには再スタートをお願いすることになるかもしれません。これでは相手チームに迷惑をかけてしまうことになるため、HELIOSではこのようなリスクを許容しないのです。
今:最初からショートカットはやらないというコンセプトです。アドヴィックスはブレーキシステムを開発している企業ですから、安全を最優先にしていますので、リスクの高いショートカット走法は、設計思想上からいってあり得ないのです。
Q:昨年も「安全第一」が優勝につながったということでしたが、「確実に走らせる」ということが、今回もポイントだったということですね。後、コースレイアウトにもよりますが、今回のコースで20秒を切ることはできますか?
塚本:HELIOSは試走などで、20秒を切るタイムを出しています。ただし、電圧の高い乾電池に当たれば、という条件付きなのですが(笑)。走行体に使う乾電池は電圧にバラつきがあります。試走タイムから推定すると今日の電池は外れだったかな?(笑)
Q:あと、今回のことで伺いたいのは、トレンドとして、Bluetoothを使ってPCに処理させる分散処理がありましたが、HELIOSは分散処理を使っていたんですか?
仲本:使っていますが、PCにはあまり重きは置いていないのです。というのも、もしBluetooth通信にトラブルが発生して、走行体のみで走らなければならない時に、PCに多くを頼っているとリスクが大きいためです。よって、HELIOSではバックアップ的にPC側を活用するという形を採っています。
Q:ここでも、やっぱり安全第一の考え方が徹底されているわけですね。
堀江: Bluetoothは競技スタートのタイムボーナスがあるので、使わないわけにもいかないんですよ。でも、無理に使おうとすると今度は、それで本当に大丈夫なのか、という話に発展し十分な対処も必要となるので、ETロボコンにかけられる時間との兼ね合いもあり、その辺のバランスが難しいところでした。