NASの基本性能を確認する

肝心のデータを保存するボリュームは、そのまま使用するシングルから、2基のストレージを併用するJBODやRAID 0/1、3基以上のRAID 5、4基以上の RAID 6/10と一般的なレベルはすべてサポートしている。また、未使用のベイがあれば予備用のディスクを指定し、ディスク異常が起きた際の冗長化も可能だった。RAIDマイグレーションも同一のRAIDレベルであればディスクを追加し、「ストレージマネージャ」によるウィザード操作を行うだけでよい。

ボリューム作成後はファイルサーバとしてサービスを有効にするが、選択肢はCIFS/SAMBAやAFTP、NFSといったファイル共有プロトコルとなる。この他にもFTPやWebDAV、iSCSIをサポートし、多機能型NASとしては標準的な機能を備えると述べて構わないだろう。興味深いのは「ファイルエクスプローラ」が備える共有リンク作成し、ローカル(LAN)やインターネット上に特定のファイルを公開する機能だ。感覚的にはオンラインストレージにアップロードしたファイルのリンクを作成し、友人などに教えるものに近い。セキュリティ面の不安を覚えるかもしれないが、有効期限をあらかじめ設定できるため安心だ(図07~09)。

図07 ASシリーズがサポートする「サービス」の一覧。各種プロトコルに加え、WebサーバやMySQLサーバ、SSHサーバやrsyncサーバも用意されている

図08 「ファイルエクスプローラ」でファイルやフォルダのコンテキストメニューから<共有リンク>を選択すると現れるウィザード。特定のファイルなどをLANやインターネット上に公開できる

図09 インターネット向けに共有リンクを作成した場合、グローバルIPアドレスを含んだリンクが生成される

今回はAS-604Tに、Western Digitalの1TB HDD(シリアルATA 3.0/7200rpm)を4基使用し、RAID 5のRAIDボリュームを作成しているが、ここでベンチマーク結果を披露しよう。まずはCIFS/SAMBAの性能を測るため、ボリューム上のフォルダーをネットワークドライブとしてマウントし、hiyohiyo氏の「CrystalDiskMark」で3回測定した平均値を用いている。なお、ベンチマークに用いたコンピューターはIntel Core i7-3770を搭載し、ネットワークチップとしてIntel 82579Vを搭載したMSI Z77A-GD65使用の自作PC。ここにギガビットスイッチングハブ経由でAS-604Tと接続した。その結果が図10だ。ご覧のとおりシーケンシャルアクセスの書き込み速度が100MB/秒を超えている。筆者がローカルディスクとして使用しているシリアルATA 3.0のHDDが168MB/秒であることを踏まえると十分な結果だろう(図10)。

図10 CIFS/SAMBAのベンチマーク結果

今度はボリューム上にiSCSI(Internet Small Computer System Interface)ターゲットを作成し、ボリュームをWindows 8のiSCSIイニシエーターでマウントしたドライブに対するベンチマークを行ってみた。こちらはシーケンシャルアクセスの読み込みが100MB/秒を超え、その他も全体的に高い数値となった。まだまだiSCSIは法人向け技術であり、個人が導入するメリットは少ない。だが、見た目上はローカルディスクと変わらないため、データの冗長化などさまざまな利用場面を想定できるだろう(図11)。

図11 iSCSIのベンチマーク結果

今回ベンチマークを行った際に気になったのがCPU使用率だ。ベンチマーク中に「活動モニタ」でCPU使用率を検証すると、CIFS/SAMBA、iSCSIいずれもシーケンシャルアクセスの読み書き時は使用率が向上。40パーセント前後に位置している。ベンチマークの性格から過度なアクセスが発生するため、大規模の同時アクセスは厳しだろう。ただ、CPUの処理能力でネットワークパフォーマンスが低下しないことは確実だ。これならVMwareやHyper-Vといった仮想化ソフトウェアの仮想ストレージとして活用できる(図12~13)。

図12 ベンチマーク中のCPU使用率。シーケンシャルアクセス以外は10パーセントを切っていた

図13 ベンチマーク中のCPU使用率。CIFS/SAMBA時と異なり、40パーセントに迫る勢いだった

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