ネットワーク管理者ならネットワークに接続するべき機器が増えてきて、「ポートが足りない!」という経験をしたことが一度や二度はあるだろう。

真っ先に思いつく解決策は「スイッチの増設」だ。ただ、普通のスイッチを増設すると、その後の管理が煩雑になってしまうことがある。そこで検討したいのがスタッカブルスイッチだ。

スタッカブルスイッチであれば、スイッチの増設を簡単に行うことができ、管理も容易になる。それだけでなく、他にもさまざまなメリットが享受できるのだ。

本稿では、そのスタッカブルスイッチのメリットを紹介したうえで、その具体例として先ごろ発表されたネットギアの新たなスタッカブルスイッチ製品を紹介しよう。

スタッカブルスイッチのメリット

スタッカブルスイッチは、複数台のスイッチを仮想的に1台として扱うことができるスイッチだ。「スタック」は日本語では「積み重ねる」という意味合いだ。複数台のスイッチを積み重ねたものをあたかも単一のスイッチとみなすことができる。

スイッチ同士のスタック接続は製品によって異なる。専用ポートと専用ケーブルを利用する製品と、イーサネットポートをスタック用ポートとして設定して利用できる製品がある。また、スタックでグループ化できる最大のスイッチの台数も製品によって異なる。

図1 : スタッカブルスイッチの概要

スタッカブルスイッチの主なメリットとして、次の3点があげられる。

  • 管理しやすい
  • 拡張性が高い
  • 耐障害性が高い

この3点について、もう少し詳しく見てみよう。

管理しやすさ

スイッチの設定や動作を確認するには、ネットワーク経由でスイッチの管理画面にアクセスすることが一般的だ。単なるレイヤ2スイッチであっても、企業向けの製品であればIPアドレスを設定して、Webブラウザなどでリモート管理できる。

スタンドアローンのスイッチが複数台あると、それぞれ別のIPアドレスを利用して管理をしなければいけない。数台程度ならともかく、スイッチの台数が増えてくると管理者が管理用のIPアドレスを把握しておくことが難しい。一方、スタッカブルスイッチであれば1つの管理用IPアドレスを利用して、スタックに含まれるすべてのスイッチの管理を行え、ネットワークの管理作業をシンプルにできる。

図2 : スタッカブルスイッチの管理

拡張性が高い

スタッカブルスイッチのグループには、後からスイッチを追加することができる。最初は、単体のスイッチとして利用して、ポートが足りなくなってからスイッチを新しく追加してスタックを形成してもよい。つまり、ネットワークの成長に合わせて、柔軟なネットワーク構成を取ることができる。

また、スタッカブルスイッチのメンバースイッチを物理的に積み重ねておく必要はない。スタック接続のケーブルに光ファイバを利用し、複数のビルに設置されているスイッチをグループ化することも可能だ。

図3 : 長距離のスタック

耐障害性が高い

スタッカブルスイッチの接続は、原則としてリング状に接続する。リング状に接続することによって、耐障害性を高められる。スタックのメンバーのうちの1台のスイッチが故障しても、他のスイッチでスタックを維持し続けることができる。そして、故障したスイッチ以外の通信には影響を及ぼさない。

スタックのメンバーの交換は、ホットスワップ可能だ。故障したスイッチを交換すれば、交換した新しいスイッチに対して自動的に設定が行われて復旧させることができる。復旧に要する時間は機器によって異なるが、多くの場合、数分程度で完了する。ホットスワップで交換するときに、他のスイッチの通信には影響がない。

図4 : スイッチの故障時

スタンドアローンスイッチでも複数台接続して、冗長化することによって耐障害性を高めることができる。ただし、その場合は、スパニングツリーを利用しなければいけない。

スパニングツリーでは、ループ構成となっているポートの一部をブロックする。ブロックされている転送経路は利用できないため、データの転送経路が最適ではなくなってしまう場合がある。また、標準のスパニングツリーを利用していると、障害時の経路の切り替えには数十秒~50秒程度の時間がかかってしまう。

以上のようなメリットを考慮すると、管理しやすく、拡張性が高く、耐障害性も高いネットワークを構築したい場合には、スタッカブルスイッチの導入が適していることがわかるだろう。