MCはアイドルグループ「でんぱ組.inc」のメンバーである最上もが。ボーカロイド「GUMI」のコスプレで登場した彼女から本日の出演者が紹介され、最初のボカロPが呼び込まれる。
一人目は、さつき が てんこもり。ニコニコ動画が登場する前からインターネットでライブ配信を行なっており、ニコニコ動画ではボカロ曲の他に「ファミマ入店音」のアレンジ動画でも知られるヒットメーカーである。
ボカニコナイト3は、彼の代表曲ともいえる「ネトゲ廃人シュプレヒコール」で幕を開けた。ライブイベントだとセットリストを載せるのが通例だが、今回は楽曲に関する細かい情報は省略することにする。一応リストをもらってはいたのだが、今回はギリギリまで変更があったようで、スケジュールを含め予定通りの進行とはいかなかった。何が飛び出すかわからないナマモノ感、これがライブの醍醐味だ。
トップバッターを引き受けたさつき が てんこもりは、人気のボカロ曲を織り交ぜながらあっという間に会場を盛り上げていく。長いキャリアを持つだけあってパフォーマンスの安定感は抜群だ。また、会場にいるとわからないが、このときニコニコ生放送側では多彩なカメラワークとAR技術を駆使した演出が行われており、そちらはそちらで会場とはまた違った楽しみ方ができていたようだった。
ニコニコ生放送のライブイベント中継では、初期の頃こそ演出やカメラワークに視聴者から注文がつくことも多かったものの、最近ではかなり成熟されてきた感がある。「音量が小さい」「歌のタイトルはずっと表示しておいてほしい」といったユーザーからの要望にも可能な限り対応する柔軟さは、インターネット時代に適したものといえるだろう。
そうした運営側の姿勢にユーザーは敏感に反応する。悪いものは悪い、良いものは良いとストレートに書き込むのがニコニコユーザーだ。この日はポジティブな反応が多く寄せられていたようで、ニコファーレの壁面LEDモニターを流れるコメント群からは、視聴者の盛り上がりがしっかりと伝わってきていた。
さつき が てんこもりの出番が終わり、ぽわぽわPへとバトンタッチする。ぽわぽわPはなんと弱冠17歳の若手作曲家だ。ニコニコ動画では「ストロボラスト」をはじめとする多数のヒット曲を持っており、現在は商業音楽の世界にも進出、メディアに取り上げられることも多い実力派である。
今回はやや緊張気味した様子を見せながらも堂々としたパフォーマンスを見せたぽわぽわP。17歳が生み出したとは思えないほどの音を聴きながら、ニコニコ動画の最大の功績は彼のような才能が世に出やすい環境を作ったことなのだろうと思ったりもした。
3人目に登場した鬱Pは、またこれまでとまったく違うタイプのボカロPだ。
彼の作る楽曲はいわゆるラウドロックと呼ばれる激しい曲調のもので、通常ボカロ曲では用いられることの少ないシャウトなどが積極的に取り入れられている。その音に魅了されたニコニコユーザーは数知れず、これまでに発表した楽曲の多くが数十万クラスの再生数を叩き出しているのだ。
しかし、彼の真価は今回のようなライブにおけるパフォーマンスだろう。クラブDJかといえばまったく違うものではあるのだが、ファンに求められているものが何なのかをしっかり理解した圧巻のショウである。ボカロでラウドロック、しかも元ディスコのクラブで作曲者自身がパフォーマンスする――何とも形容し難いカオス感、これもまたニコニコ動画が生んだ新たなカルチャーだ。
コメントで「黒ミサ」とも呼ばれていた鬱Pの時間が終わり、続いて登場したのはすけっちP。初音ミク黎明期から活動するキャリアあるボカロPで、さわやかかつ完成度の高い楽曲を多数発表している。代表曲は、メロディーと歌詞のギャップで話題になった「つけるよ。」。この日は正統派なDJスタイルで高い技術を見せつけ、もちろん「つけるよ。」も披露して大きな反響を得ていた。鬱PからすけっちPへの流れが生んだコントラストは見事なものであった。
鬱Pとはまた違うスタイルで魅せたすけっちP |
この日はDJブースにもカメラが置いてあり、ボカロP自らカメラを回して撮影した映像がニコ生で配信された |
楽曲のつなぎがあまりにも自然だったことから、敬意を込めて「溶接職人」というコメントが流れていた |
6人で4時間という長丁場のボカニコナイトも、いよいよ後半戦へと突入していく。……続きを読む