疲れがちなタッチ操作を、富士通独自のアイデアでフォロー

さて、注目のタッチパネルだが、画像ビューワーで拡大・縮小したり、次々ページ送りの操作をしていくとき、あるいは地図アプリを使用するといったようなシーンでは、当然のことながら、タッチによる直感的な操作が大いに活きてくる。同社オリジナルのクラウドサービス「My Cloud」用の各種アプリについても、タッチ操作に最適化されたインタフェースで快適に利用可能だ。

画像の拡大・縮小、ページ送りやスクロールはタッチできびきび操作可能

「My Cloud」の画面は余裕のあるレイアウトで、タッチ操作に最適

一方で、デスクトップであるがゆえの問題もある。ウィンドウのリサイズや移動、ファイル操作を行うときのドラッグ&ドロップなど、画面が広い分だけ腕の動作が大きくなりがちな上に、座った状態で腕を真正面のディスプレイに向けて維持する姿勢をとり続けなければならないため、どうしても腕が疲れてしまう。

タブレットなどと異なり、デスクトップPCでは画面からの距離もやや遠くなるため、より疲労が溜まりやすい。

広いデスクトップで、大量の情報が1画面で表示されるのは便利だが……

ただ、これに対する富士通なりの解答もしっかり用意している。それは、Webカメラを用いた「ハンドジェスチャーコントロール」と、「人感センサー」による「視線アシスト」機能だ。

「ハンドジェスチャーコントロール」と「人感センサー」は機能のオン・オフが可能

内蔵している有効92万画素のWebカメラは、ビデオチャットに使えるのはもちろんのこと、画像認識技術による「ハンドジェスチャーコントロール」にも利用される。画面から数十cm~1m程度離れたところで手をかざし、上下左右に動かしたりすることで、画面にタッチすることなくスクロールやカーソル操作などを行えるのだ。

さらに、人がPCの前にいるかどうかを判別する「人感センサー」によって、自動でディスプレイの電源を切る「画面オフ」機能や、人の視線でコンテンツを操作できる「視線アシスト」機能を設定できる。

WebブラウザのスクロールもOK。ちなみに、ハンドジェスチャーをオンにしているときは、画面右下に手の認識状態を示す小さなカメラ映像を表示しておくこともできる

本体前面の下部、中央にあるのが視線アシスト用カメラ。その左右には視線アシスト用LEDがあり、ここから近赤外線を射出し、眼球に反射した近赤外線を視線アシスト用カメラで判別、視線の位置を算出する

視線を認識するための初期設定を一度行えば、画面内の特定の箇所を見つめるだけで、Windows 8のチャームを表示したり、地図アプリでスクロールしたり、特定の画像ビューワーアプリで前後の写真へ切り替えたり、といった操作が行える。画面やキーボード、マウスに一切触れることなく、まるで脳波でコントロールしているかのように操作できるのは面白い。

また、PCから離れたときや画面を見ていない(PCを使用していない)場合は、一定時間経過後に画面を消灯し、PCの前に戻ってきたときにすぐに画面を点灯するように設定することも可能だ。

指示に従って顔の位置を合わせたら、視線だけを画面内のマークに何度か向けるだけで初期設定が完了

「人感センサー」設定項目の中の「視線アシスト」機能をオンにすれば、視線での操作が可能になる。まるで脳波でコントロールしているかのよう

ハンドジェスチャーと視線による操作には慣れが必要だが、キーボードとマウスという物理デバイスによる操作、画面タッチによる操作、そしてカメラの画像認識による操作と、多彩な入力手段を用意することにより、単なるタッチパネル搭載PCに止まらない新鮮なユーザー体験と可能性を感じさせてくれる。

さらなるひと工夫で新しい使い方に結びつけたい

同社直販サイト「富士通WEB MART」では、カタログモデルが274,800円となっている。デスクトップPCにタッチパネルが必要か、という議論もあるとはいえ、操作性に幅をもたせるという意味では、選択肢の1つとしてあるに越したことはない。

同社独自のハンドジェスチャーコントロールや人感センサーによるインタフェースも加えることで、直感的な操作と実務的な操作性を両立させている点は、他にはない価値の創造につながっていると思う。

ただ、通常の使い方において、腕を目の前に伸ばして画面に長時間触れ続けるというのが厳しいのは事実。タッチパネルならではの、もう一押しのギミックも欲しかったというのが正直なところだ。

「ESPRIMO FH98/JD」は、据え置きで使うデスクトップとしては必要十分以上のスペックを誇っており、部屋間の移動程度であればさほど苦にならないサイズや重さも実現している。それだけに、例えば、ディスプレイを水平近くまで傾けられるようにチルトの可動域を大きくし、見下ろす姿勢でも使えるギミックなどがあれば、本製品の用途がますます広がりそうに感じた。

製品名 ESPRIMO FH98/JD
CPU Intel Core i7-3630QM(2.4GHz、ターボ・ブースト利用時の最大周波数3.4GHz)
チップセット Mobile Intel HM76 Express
メモリ 8GB
ストレージ 約3TB SATA HDD
光学ドライブ ブルーレイディスク・ドライブ
グラフィックス Intel HD Graphics 4000(CPU内蔵)
ディスプレイ 23型ワイド(1,920×1,080ドット)
ネットワーク 10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T対応有線LAN×1、
IEEE 802.11a/b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 4.0+HS
インタフェース USB 3.0準拠×3、USB 2.0×3、マイク・ラインイン兼用端子、アンテナ入力端子、
miniB-CAS カードスロット、HDMI入力×1ヘッドホン・ラインアウト兼用端子
メモリースロット SDメモリーカードスロット
(SDHC/SDXC、メモリースティック/メモリースティックPro対応)
テレビチューナー 地上・BS・110度CSデジタルチューナー×2、
地上・BS・110度CSデジタルチューナー×1(視聴専用)
サイズ/重量 約W571×D209×H437mm/約9.8kg
OS Windows 8 64bit
直販価格 274,800円