「なんだ、この薄さ」という感動 - 超えられた"13mmの壁"

「目指したのは、『なんだ、この薄さ』と驚いてもらうこと」――。三島氏は、「LaVie X」の薄さへのこだわりとして、こんな表現を用いる。

「『LaVie Z』は実際に持ってもらうとその軽さに多くの人が驚く。これに対して、『LaVie X』は、見てもらうだけで驚くものを開発したかった」。持って驚く「LaVie Z」に対して、見て驚くのが「LaVie X」というわけだ。

一般的なA4ノートPCの場合、約20~30mmの厚さがある。だが、ドライブを搭載しない「LaVie X」の場合、部品を単純に積み上げた初期の設計段階だけでも、14~15mmという薄さにまで到達できる目途は立っていたという。

「努力すれば13mm台には到達できる。だが、その領域は他社でも到達できるのではないか。もう一歩踏み込んで、13mmを切るところで製品化したい」(三島氏)。

「LaVie X」で実現した12.8mmの薄さには、こうしたこだわりがあった。

本体右側面(写真左)と本体背面(写真右)。ほぼ12.8mmのフラット形状となっている

異例ともいえる2基のファンを搭載

規格外の薄さを実現するために、「LaVie X」の開発は試行錯誤の繰り返しだった。そして、そのなかでは、いくつかの新たな技術的挑戦が試みられた。ひとつは、薄型基板の採用と平面配置である。

部品を基板の片面だけに実装することで薄型化を実現する一方、部品による高さを均一的に低くするために、基板への部品配置場所の工夫とともに、低さを優先した部品を選定。「他のノートPCと比較しても、同じ性能で高さが低い部品を使用した」という。

課題となったのは、どうしても高さを取ってしまう空冷ファンだった。目標の高さにどうしても収まらないのだ。そこで三島氏がとった解決方法は大胆なものだった。

「薄型のファンを2つにしたら、高さを劇的に低くできるのではないだろうか」――。

「LaVie X」では、高さ5mmの薄型ファンを2基搭載している。この発想は、横から2分割にして、高さを半分にするというのが原点。15.6型サイズの製品であることから、基板スペースは13型や11型に比べても広く取れるという利点がある。それをうまく生かして、薄型ファンを2基搭載することで、必要な放熱量を実現できたというわけだ。

LaVie Xの基盤。片面基盤にファンを2基搭載するという画期的な排熱方法を実現した

この仕組みは、予想外の放熱効果を実現することになった。

ファンが2基となったことで、筐体後ろ側の左右から放熱するため、ファンが1基のときよりも効率的に放熱し、また、CPUからのヒートパイプも左右のファンにつながるため、熱が2分割されて放出。熱の移動量が半分になり、ヒートパイプそのものも薄くすることが可能になったという。

「2つのファンは、同じ速度で回転すると共振を起こしてしまうため、システム制御により回転数をずらしている。結果として、ファンが小型化し、静音化のメリットもでた」という。

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