たたんだ状態。左からUT-63Q、UT-53Q、UT-43Q

「ウルトレック」シリーズのネーミングは、それまでの小型三脚の「ウルトラ」シリーズに、旅行や山歩きを意味する「トレック」という言葉を合わせたもの。「ウルトラ」シリーズで実現したダイレクトコンタクトパイプとトラニアンシャフトシステムに加え、脚を180度反転させる「180度開脚機構」によって、収納時のさらなるコンパクト化を図っている。

「ウルトレックでは、簡単に動かして素早く収納できることを目指して、ロータリーハブという仕掛けを取り入れています。これは脚の根元に当たるパーツを上に引き上げて、回転させて固定する機構です」と石井氏は、持ち運び時の圧倒的な小型化を実現する180度開脚のキーポイントについて語る。石井氏が言うには、「脚のロータリーハブのスライドノブを操作することで、3本のパイプの角度をそれぞれ個別に変化させることも可能です」という。

それに対し、塩崎氏は「180度反転の仕組み自体は、すでに他社で実現している製品もあります。しかし、それを真似るのではなく、三脚の専業メーカーである当社が作ったらこうなる……という成果が『ウルトレック』シリーズなのです」と付け加える。

軽いながらも十分な強度を保つ秘訣

材質については、脚パイプにはアルミを、パイプをつなぐボディ部分にはマグネシウム合金をそれぞれ採用している。パイプにアルミを使用した理由について「カーボンは軽量ですが、特殊な形状にしなければ強度が出ません。そこで、ウルトレックでは寸法的な制約の中で、十分な剛性を保つために肉厚のアルミを採用しています」と、石井氏は語る。

横にねじっても、ビクともしない剛性がある

パイプを半回転させて素早く伸縮ができる

石井氏は「その一方で、ボディ部には軽量ながら振動吸収性に優れたマグネシウムを使用していることもポイントです。例えば、撮影しているそばにトラックなどが通過して振動が加わったとしても、カメラに伝わる揺れはすぐに収束するのが分かるはずです」と強調した。

さらに強度を高める工夫として、UT-63QとUT-53Qでは、上のセンターパイプと下のボディとを4カ所のネジによって確実に固定している。「見た目ではセンターパイプが長いので不安に感じる人がいるかもしれません」と石井氏は前置きしつつも、「しかし、強固な4点止めで締め付けているので、これで十分な強度があります。特に、三脚を伸ばして使った際の強度と振動吸収性、ねじれ剛性には自信を持って設計しています」と強い自信を覗かせた。

また、6段あるパイプのうち、一番下のパイプを収納した状態で使用すると、剛性は2倍近くに高まるとのこと。大口径の望遠ズームなど特に重い機材を使用する際には役立つ小ワザといえる。

製造については、同社の中国工場で行っている。「三脚というのは、使い勝手が非常に重要な商品です。締めたときにきっちり締まり、動かしたときにちゃんと動くといった感覚的な部分も重視しながら、厳密な製造管理を行っています」と塩崎氏は言う。例えば、公差100分台で設計されているパイプの断面形状は、少しでも狂いがあると、実際の操作フィーリングに差が出てしまう。そこで、それを試験するための検査治具を作り、製品が安定するまでは全数検査するといったことを徹底している。

出張時にもビジネスバッグに忍ばせられる三脚

ベルボン 国内営業部 業務課 又平泰匡氏

最後に、「ウルトレック」シリーズの製品選択のポイントを、ベルボン株式会社 国内営業部 業務課 又平泰匡氏に語ってもらった。「『ウルトレック』シリーズは、製品名の通り、山登りや旅行用に最適な三脚です。既存モデルUT-43Qは、主に一眼レフのエントリー機+標準ズームまでの機材に適しています。ビジネス用バッグにもすっぽりと入るので、例えば写真好きのビジネスマンが出張の際、バッグにこっそり忍ばせて持って行かれる場合もあるようです」。

また、新製品について又平氏は「今回の新製品、UT-63Qは、軽量ながらよりしっかりした三脚が欲しいという声に応えたモデルです。中級以上の一眼レフにより大きな望遠ズームを付けた場合にも役立ちます。さらにその中間となるUT-53Qと合わせて、お客様のカメラとレンズ、撮影スタイルに応じて最適なものを選んでいただけます」と魅力を強調する。

最近はネットショッピングが広く普及しているが、三脚の善し悪しや相性はカタログスペックや写真だけでは分からない。実際に店頭に行って製品を手に取って、ウルトレックシリーズが備える携帯性と剛性の絶妙なバランスを体感してみるといいだろう。

ベルボン
昭和30年設立の三脚専業メーカー。レバー式カーボン三脚「エル・カルマーニュ」や、180度開脚式の三脚「ウルトレック」など、数々の人気商品をリリースし、三脚市場を牽引する。