ターゲットはサムスン機 - "UH"の薄型技術を活かす
前述のような背景からも、STYLISTIC QH77/Jは、タブレットPCとして利用した際の機能強化に努めている。
1つめのこだわりは、薄さと軽さである。
タブレットPC単体として利用した際のサイズは、11.6型タッチパネル機能搭載ディスプレイを採用し、W302×D195×H12.7mmとなっている。
「設計段階では厚みが13mm以上あった。しかも、北米や欧州の拠点や、法人営業部門からは、指紋センサーを搭載してほしいといった要望もあった。将来的には法人市場にも展開することを計画しており、開発時点から、法人市場からの要望を反映しておきたかったのも事実。その点でも、薄さや重量においては、挑戦すべき課題が多かった」とする。
そして、開発チームでは、12.9mmを切るという目標も同時に設定されていた。それは、韓国サムスンがWindows 8での利用を想定した薄型タブレットを海外で発売しており、これがWindows 8発売前のリファレンスモデルとして、世界中で活用されていたことを意識したからだ。実は、この製品の薄さが12.9mmであった。
薄型化を実現するために、同社では、すでに製品化しているUltrabook「FMV LIFEBOOK UHシリーズ」のノウハウを活用した。UHシリーズは、ハードディスクを搭載したUltrabookとしては最上位で9~15.6mmと世界最薄を実現した製品であり、そのために、薄型のファンや薄型のヒートパイプを新規に開発していた。この機構がSTYLISTIC QH77/Jにも採用され、12.7mmという薄さを実現したという。
そして、重量についても、サムスンの製品を意識しながら、900gを切ることを目標とした。ここでは、5時間を目標としたバッテリ駆動時間とのトレードオフの関係のなかで、適切なバランスを追求することになった。
900gを切りながら5時間の駆動時間という目標に対して、STYLISTIC QH77/Jがたどり着いたのは、タブレットとしての重量が約850g、駆動時間が約4.8時間。駆動時間では目標には届かなかったが、重量では目標を約50gも下回った。
重量900gを下回る必要性 - もう1つの狙いは「ノートPCスタイルでの重心」
重量において、目標を下回ることを重視したのには理由がある。
それはノートPCスタイルで利用した際に、タブレット(ディスプレイ部)が重いと全体の重心バランスが悪くなり、それを克服するためにキーボード部をさらに重くしなくてはならないという課題が発生することだ。
つまり、なるべくタブレットを軽くしておくことが、全体のバランスを構成する上で得策となる。さらに、キーボード部を接続した場合には約10.7時間の利用が可能となり、駆動時間をカバーできるという点も見逃せない。
キーボード部を接続している場合には、ACアダプタ非接続時に限り、キーボード部からタブレット本体への充電を行える。さらにバッテリーは、キーボード部側から優先的に使用する機能を搭載。接続した途端にキーボード部からの電源供給に自動的に切り替わり、タブレット本体へのバッテリー消耗負担を減らしている。
なお、ノートPCスタイルの本体サイズはW302×D203×H26.1mmで、重量は約1.7kgとなっている。キーボード周りに質感があるアルミを利用したのは、高級感を演出するとともに、一定の重量を持たせ、バランスを取るという狙いもあるようだ。
タブレットとしてのもうひとつのこだわりが、手になじむ、グリップ感の高いデザインの実現である。
長年のノウハウをもとに、タブレットとして使用した際の使いやすい形状と重心を追求。カバンの中からも出し入れしやすい薄さを達成している。「高級感を演出できるアルミ素材のヘアライン加工を使用したのも、そのまま持ち運んでもらうため。わざわざ別途ケースを使用して重量が増えてしまうことをなくす狙いもある」という。
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