ドコモは現在、3GのFOMAサービスを800MHz帯・1.7GHz帯・2GHz帯で提供しており、5MHz幅×10波の電波を利用している。Xiが利用しているのは、そのうち2GHz帯の5MHz幅×1波のみとなっている。FOMAが使う2GHz帯の1波を減らし、Xi向けに振り分けるとXiが利用できる周波数幅が10MHz幅になり、最大速度が倍の75Mbpsになるとともに、実際のスループットも向上することになる。その代わり、3G側では利用できる周波数が減少するため、既存の3Gユーザーへの影響を最小限に抑える必要があるのだ。

ドコモではこの問題に対し、3Gのみしか使えないユーザー数を減らすことで対応している。すでに今年5月から11月にかけてのトラフィックは、全国でもっともトラフィックの大きい東京23区内だとXiが1.8倍に増加したのに対し、FOMAは0.9倍に減少。岩崎副社長は「ちょうど変曲点を迎えつつある」と話し、FOMAのスループットを維持しながら、Xiのスループットも改善できると説明する。

東京23区では、この半年でXiのトラフィックは2倍近くに伸びたが、FOMAは減少傾向

これによって、一部を除いて37.5Mbpsまでだった通信速度を、多くの場所で75Mbpsに拡大できる。今年度末までに東京23区内で700局、京阪神で350局の基地局を75Mbps対応させ、来年度末までに4,000局まで拡大する計画だ。

既存の75Mbps対応エリア(左)はわずかだが、これを一気に拡大させる

今年度内に75%のカバーエリアを目指すXiだが、すでに多くの場所で利用することができる。鉄道では、都心25km圏内の29路線486駅で同社が調べたところ、8割で利用できたという。これはホームだけでなく、改札や駅周辺の店舗内まで、「より綿密、緻密なエリアで測定」(岩崎副社長)しており、同時に測定していた他社の端末と比べると、「より(結果が)良かった」そうだ。

首都圏の多くの駅構内、改札口、駅施設内で利用可能だった。屋内施設も、大規模施設を中心にすでに2,200施設がエリア化されている

さらに今年度内に全国53空港、新幹線8路線97駅全駅で利用可能にする

岩崎副社長は、エリア設計において「(エリアを)広げるのも重要だが、厚み、深さ方向も重要」と指摘。「LTEはスループットを重視する」(同)が、ユーザー数の拡大でスループットは低下する。その対策として、周波数の拡大とともに、「より密度を濃く(基地局を)打っていく(設置していく)」ことを続けてきたという。

実際、2年間のアドバンテージを生かし、特に人口の多い地域で「他社の1.8倍の密度を持って基地局を展開している」と強調。たとえば東京23区はドコモが2,681局を設置しており、KDDIは800MHz帯で1,325局、2GHz帯で1,608局、ソフトバンクは1,436局となっている(いずれも免許許可数から)。昼間人口の多い年から順に並べた上位の都市で、いずれも他社を上回る基地局を設置しているとアピールする。

東京23区などでの基地局数は他社を上回り(右)、昼間人口の多い都市で多く基地局を設置している

屋内のエリア化も進めているドコモのXiだが、従来の屋内基地局(IMCS)に加え、新たにXiと3G両方式に対応した小型基地局「Xiフェムトセル」も開発。12月以降、電波の入りにくい自宅やオフィス、小規模なビル内などに設置を進めていく方針だ。

従来のリモート設置型基地局も2年間で小型化が進んできた。さらに小型のフェムトセルも、初めてLTEに対応。音声用にFOMAもサポートしており、小規模施設などのエリア化を強化する

「人口カバー率」と「実人口カバー率」

このほか、「人口カバー率」の問題についても語られた。これまでドコモは、市町村内の役場全てがカバーした場合、その市町村がエリア化したと定義しており、この定義で今年度内75%を目指す。しかし、KDDIやソフトバンクは「実人口カバー率」という指標を使っており、単純な比較ができなくなっている。

しかも「平成の大合併」において多くの市町村が合併して新しい市が誕生した。それによって、市役所に加えて複数の支所(旧市町村の役場)が混在している例が多くなった。全国の市のうち、「市役所単独の市は55%で、残りの45%には支所がある」(同)という。「人口カバー率」の定義だと、市役所だけでなく市内の多くのエリアをカバーしても、支所が1つでもエリア外ならカバー率は「0%になる」(同)。ところが「実人口カバー率」だと支所をカバーしているかどうかは問われず、単純に500mメッシュで区切ったエリアをカバーしているかどうかになる。

とある市のエリア。市役所はエリア内だが、支所の一部がエリア外のため、この2つの市のカバー率は、「人口カバー率」では0%になる

この定義に従うと、ドコモの現在の「実人口カバー率」は、「ほぼ98%、100%に近くなる」と岩崎副社長は語る。ただ、ドコモでは従来から「人口カバー率」を使っており、総務省へ提出した導入計画もこの定義に従っているため、「この数値で統一された方がいいと思っている」という。仮に実人口カバー率で統一する場合も、「定義をしっかり決めるなら構わない」という立場を示している。

(記事提供: AndroWire編集部)