Microsoftは、米国でも現地時間の10月26日にあわせてWindows 8の出荷(GA。General Availability)に関するプレスイベントを開催するとともに、Windows 8やSurfaceの「深夜販売」を行った。
Microsoftの製品開発でソフトウェアの完成を意味する「RTM」(Release To Manufacturing)の次にあるのが、GAである。GAは、Windowsのパッケージやプリインストール製品の販売開始を意味し、いわゆる「出荷日」である。
RTM版のオンライン配布のなかった頃には、GAは、一般開発者などにとってもWindowsが入手可能な日を意味していた。βテストなどもCDなどのメディアの郵送で行われており、限られたユーザーのみしかβテストなどに参加できなかった。
大きなイベントとしての意味を失いつつあるGAだが、一般消費者向けという点では、大きなマーケッティング上のイベントであることは変わらない。今回のプレスイベントも、そうした米国でのイベントの一部であり、販売開始に向けての報道機関などに対するアピールを行う場である。
プレス向けのイベントは、ニューヨーク市、マンハッタン島の端にあるPier 57で開催された。ここは、埠頭にある巨大な建物。倉庫のような広大な空間を仕切って講演会場や展示スペース、Hands On会場などが作られていた。
イベントの最初に登場したのは、Windowsの開発責任者であるスティーブン・シノフスキー氏である。今回のWindows 8は、これまでのWindowsのリリースの中でも最高のものであり、そのためにこれまでになかった最高のPCが登場するというのがスピーチの内容。Windows 8では、モバイルデバイスへの対応により、消費電力の削減や、ARMプロセッサ対応などさまざまな強化が行われた。また、タブレットデバイスなどを指先で操作するタッチが大きく基本的なユーザーインタフェースに取り込まれた。こうしたことから、純粋なタブレットやタブレットに変形するもの、キーボード部が取り外せる構造など、さまざまな形態のPCを作ることが可能になった。それで、これまでとは違う「最高」のPCが登場しているというわけだ。
プレスイベントの最初に登場したのはWindowsの開発責任者であるシノフスキー氏 |
Windows 8の開発時のコンセプトは「Windows reimagined」だったが、シノフスキー氏は、Windows 8は、Windowsを「チップセット」から「経験」までを再創造したものと説明する |
その後、メーカー各社の新製品の紹介とWindows 8のデモが行われた。この感じからすると、プレスイベントといっても、これまでWindowsを直接扱ってはこなかった一般消費者向けの報道を行うところを想定したもののようだった。
デモの後に登場したのは、Microsoft CEOのスティーブン・バルマー氏。同氏のスピーチの大部分は、シノフスキー氏のスピーチをなぞるものだった。バルマー氏によれば、Windows 8には、Microsoftの「すべて」が入っているという。Windows RTには「Office 2013」が、またXbox関連のMusic、Video、Gameのサービス(Xbox Live)のアプリケーション、bingやマップなどのWindows Liveのサービス、そしてSkydriveなどだ。また、近々出荷されるWindows Phone 8は、Windows 8をベースにしたものだ。ある意味、Windows 8は、これまでのMicrosoftの「集大成」的な部分があるというわけだ。
プレスイベントの午後は、Surface関連だった。Microsoftがはじめて挑むWindowsハードウェアで、Windows RTのリファレンスともいうべきSurfaceだが、やはりGAが一般向けの出荷のタイミングとなる。スピーチには、シノフスキー氏も登場した。
Surfaceにはマグネシウム合金が使われており、高い強度を持つというが、それを表すためにタイヤをつけローラーボードを作ってみせた。ただし、乗ってみてはくれなかったが |
Surfaceのタイプキーボードカバー。こちらは物理キーを使ったもの |
キックスタンドで立てた状態のSurface。装着しているのはタッチキーボードカバー |
背面のキックスタンド部。動きにガタつきがなく、背面が平らになる。側面下は、電源コネクタで、中央付近にあるのがUSBコネクタ |
スピーチとデモのあと、多数のSurfaceが用意されたHand on会場で自由にSurfaceをさわることができた。ざっと触った感じ、「出来」は悪くない。ただ、このタイミングで登場する製品として、3G/4Gの通信機能がなくてもよかったのか? という疑問は残る。もちろん、無線LANのみで十分という話もあるだろうが、どこでも高速なデータ通信が可能な、モバイルネットワーク(3Gや4Gの値ネットワーク)対応のハードウェアのメリットも小さくはない。iOSやAndroidがには、モバイルネットワークに接続できる製品がすでにある。これに対抗するのに無線LANのみでよかったのかという疑問だ。もちろん、サードパーティのWindows RT機が対応するという考えもあるだろうが、そもそもSurfaceは、最高の経験を提供するために、あえてMicrosoftが作るハードウェアである。その経験には、どこでもインターネットに接続する機能が不要とは思えない。また、通信機能をスマートフォンなどのテザリングで提供するとなると、そのスマートフォンはなんなのかという話にもなる。Windows Phone 8に期待があるとはいえ、すでに大多数を占めるAndroidやiOSのスマートフォンが併用する相手になってしまう。
とはいえ、前述のように出来は悪くない。Nexus 7のように無線LANのみでも十分という考え方に立てば、Surfaceは、通常のタブレットとPCのまさに中間にあるデバイスというメリットを発揮できる。タブレットのメリットを生かしつつ、付属のOffice 2013 for Windows RT(ただしRT向けのバージョンでフルセットではない)を使って、通常のPCと同じように作業が行える。また、他のプラットフォームには見られない、タブレットに変形するクラムシェル型などもあり、PCに近い使い勝手を得ることができる。