10月27日(土)に、いよいよ全国公開を迎える映画『ザ・レイド』。麻薬王が支配する30階建ての高層ビルに強制捜査(RAID=レイド)に入った20人のSWATと、それを迎え撃つギャングとの戦いを描いている。第36回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門の観客賞受賞、第44回シッチェス・カタロニア国際映画祭ほか世界各地の映画祭を席巻、そしてハリウッド・リメイク版の製作が決まるなど、公開前から注目度急上昇中の同作。勢いそのままギャレス・エヴァンス監督、主演のイコ・ウワイス、ヤヤン・ルヒアンの3人が緊急来日した。

左からマッド・ドッグ役のヤヤン・ルヒアン、ラマ役のイコ・ウワイス、ギャレス・エヴァンス監督

来日してから、日々取材に追われる3人。強靭な肉体を誇る格闘家とはいえさすがに疲れているのではと思いきや、「いやいや、これが1社目の取材です(笑)」とイコ・ウワイスは笑顔を見せた。彼が演じているのは同作の主人公・ラマで、劇中で最強格闘術プンチャック・シラットを駆使し、迫り来るギャングをなぎ倒していく。

イコ・ウワイス(ラマ役)
1983年2月12日生まれ。ジャカルタ出身。5歳でプンチャック・シラットをはじめ、その後、プロのシラット家となる。2007年、シラットスクールを撮影しに来たTVドキュメンタリー制作中のギャレス・エヴァンスと出会う。翌年、ギャレス監督作『ザ・タイガーキッド~旅立ちの鉄拳~』で、俳優、振付師としてデビュー。

本作の反響について「私たちの作品が受け入れられたということですね。3カ月でアクションの振り付けを付けるのは相当なプレッシャーでしたが、この反響を見るとその苦労が報われたなと思います」と言うイコ。SWAT役になりきるため、クランクイン2週間前にほかのSWAT俳優陣とともに、インドネシア海軍訓練施設・KOPASKAで1週間にわたり基礎知識を身に付け、トレーニングを積んだ。「軍人としての振る舞い方、武器の使い方や持ち方、ハンドサイン、そのほかにも建物の潜入方法や攻略の仕方などを学びました。映画の中でただ武器を使ったりするのではなくて、実際に自分たちが理解をして動いているというのを見せたかったので、そこで学んだことは非常に生かされたと思います」とイコは振り返る。

世界50カ国以上の軍隊で正式採用されているシラットは、インドネシアを中心とした東南アジア発祥の格闘技。冒頭20分ほどの激しい銃撃戦から、次第に剣斬戦へと移行し、最終的には拳がぶつかりあうアクロバティックかつハードな肉弾戦へとノンストップで駆け抜ける。全編102分のうち実に85分以上がアクションシーンという、観客に息つく暇を与えないノンストップ・ハイテンション・アクションムービーだ。そのアクションシーンを描いていく上で、何よりも重要なのが振り付け。イコと共に振り付けを担当したのが、劇中の悪役であるマッド・ドッグを演じたヤヤン・ルヒアンだ。

ヤヤン・ルヒアン(マッド・ドッグ役)
1968年10月19日生まれ。タシクマラヤ(ジャワ島東部)出身。プンチャック・シラットや武術に夢中になり、マーシャルアーツのインストラクターとなる。パリで開催されたマーシャルアーツフェスティバルにデモンストレーションチームのメンバーとして参加。『ザ・タイガーキッド~旅立ちの鉄拳~』に振付師として参加し、エリック役としても出演した。

「シラットは武器を手の延長として使う方法も学びます。だから武器を持って戦うシーンの撮影はそんなに難しくなかったです。特にイコはシラットに精通していたので、僕は大丈夫だと思っていました」と語るヤヤン。「みんな強いですし、センスもあります。そういう人達を集めて撮影していますからね。いろいろな格闘技との闘いがありましたが、どれがいちばん強いかというのを見せたいのではなくて、シラットの動きの美しさを見せたかったんです。だから誰が強いかというのはわかりません (笑)」と振り返った。

ヤヤンはイコとともにギャレス監督が脚本を書き上げる前から振り付けを行っていた。イコが「毎日毎日、1つの部屋でいつも2人でこもっていたんです。なぜなら、振付を考えなければならないから」と当時を振り返りながら、冗談っぽく「もし、ヤヤンが女の子だったら…」と言うと、ヤヤンは「よせよ(笑)」といった感じでイコを小突く。

そんな2人をギャレス監督は「ザ・レイドの撮影後は恋愛関係になったんじゃないかっていうくらい2人は仲が良いんですよ(笑)。離そうとしても離れないんです」と温かい眼差しで見つめていた。……続きを読む。