スマートフォン市場で苦戦を強いられているNokia。9月6日には「Lumia 920」「同820」を発表し、この冬から本格的な反撃を開始する予定だ。同社はスマートフォンの主力OSをSymbianからWindows Phoneへシフトさせているが、NokiaからAndoridやiPhoneへと乗り換える消費者の数は各国で増え続けている一方だ。ではNokiaのお膝元、フィンランドではどのような状況になっているのだろう? フィンランドの消費者たちは今でもNokiaを使い続けているのだろうか。
フィンランドでも多種多様なメーカーが使われている
筆者は約2年半前の2010年2月にフィンランドを訪問し、極寒の地で生活する人々の携帯電話の利用実態やNokiaの強さを目の当たりにしてきた。その様子を「Nokiaのふるさと、フィンランド訪問記」として5回にわたってレポートを書くほど、当時はまだNokiaにシェア1位メーカーとしての強さが残っていた。世界各国ではiPhoneやAndroidにシェアを奪われつつも、フィンランドではほぼ全ての人がNokiaを使い、数泊の滞在中iPhoneの利用者を見かけることは一度も無かった。
だが今回、2012年の9月にフィンランドを訪れてみるとその状況は一変していた。首都ヘルシンキの空港に降り立ってみると、機内から出てくる乗客の多くが電源を入れる携帯電話はiPhoneだったのだ。街中に出てみれば通信事業者の店頭で大々的にプロモーションされているのはSamsungのGALAXY S III。もちろんNokiaのLumiaシリーズは各事業者や家電店で必ず販売されているものの、SamsungやApple、そしてHTCなどが当たり前に販売されていた。
立ち寄ったファーストフード店で大学生たちに話を聞くと「寒い冬はポケットの中にスマートフォンを入れておくから困らない」という。しかも「Facebookを楽しむためにはスマートフォンは必須。写真アプリなどが多いiPhoneやAndroidのほうがNokiaよりも使いやすい」とのこと。もちろん手袋をはずしたりする手間はあるのだろうが、スマートフォンを使って生活を楽しむためには今のNokiaの製品では約不足ということなのだろう。夕方になってとある通信事業者の店舗の様子を見ていたが、駆け足で入ってきた地元の女子高生数名が飛びついたのはiPhoneやSamsungのカラフルな小型スマートフォンだった。
だがその一方、街中ではNokiaのLumiaシリーズを利用している人の割合は他国よりもかなり目立っている。とある家電店の店員に話を聞くと「iPhoneやAndroidは高機能だが、Windows Phoneでもソーシャルサービスなど一通りのことはできる。フィンランド人にとってNokiaは第一に購入を考えるブランドで、サポートも含めた安心感は今でも不変」とのこと。ただし「今は機種の数が少ないので他社品のほうに魅力を感じる人が多い」とのこと。確かに常時10機種以上のスマートフォンを出していた王者時代と比べると、今のNokiaの製品ラインナップではAndroid陣営に打ち勝つのは地元フィンランドであっても難しいのだろう。