AOSS2採用で、無線LANの設定がより簡単に
WZR-D1100Hは、簡単無線LAN設定機能のAOSS2に対応していることも特徴だ。AOSS2は、これまでバッファローの無線LAN機器に搭載されていたAOSSの後継であり、PC以外のスマートフォンやタブレットでも簡単に無線LAN設定が行えるようになるなど、機能が強化されている。AOSS2を利用して、無線LANの設定を行う手順は以下のようになる。
まず、無線LANルータのAOSSボタンを長押しする。接続したいPCや子機から、iAOSSで始まるAOSS2設定専用のSSIDが見えるようになるので、そのSSIDに接続したのちブラウザを開く。すると設定ページが表示されるので、無線LANルータに付属している設定シートに記載されている、3桁の番号を入力するだけで接続設定が完了する(PCの場合は、リンクをクリックして設定ツールをダウンロードする)。
iPhoneなどでは、画面をタッチするだけで設定が可能なので、非常に手軽。もちろん、無線LANルータに設定されているSSIDや暗号キーが自動的に設定されるので、セキュリティ面も安心だ。AOSS2に関する詳細は、別記事『バッファローの無線LANルータ機能「AOSS2」を試す - 従来の「AOSS」と何が違うんだ?』を参照いただきたい。
離れていても速度が落ちにくい
WZR-D1100HおよびWLI-H4-D600の最大の売りは、やはりいち早くIEEE802.11ac技術を採用し、最大600Mbps(理論値)という速度を実現したところだ。そこで、筆者の自宅(2階建ての木造住宅)で、WZR-D1100HとWLI-H4-D600の実効転送速度を計測してみた。テストには、ネットワークのTCP転送速度を計測する「PCATTCP」を利用した。
WZR-D1100H(親機)の有線LAN端子に接続した富士通の液晶一体型PC「ESPRIMO FH550/3AM」と、WLI-H4-D600(子機)の有線LAN端子に接続したソニーのノートPC「VAIO S」との間で、転送速度を計測した。また、参考のために、WLI-H4-D600を使わずに、VAIO Sの内蔵無線LAN機能(IEEE 802.11g/n対応、最大300Mbps)を利用して、WZR-D1100Hに接続した場合も同じ条件で計測している。
前者は5GHz帯での接続、後者は2.4GHz帯での接続となる。WZR-D1100Hでは、5GHz帯、2.4GHz帯ともに、帯域幅として20MHzと40MHzの設定が可能なので、それぞれの帯域幅で計測した。上りと下りを5回ずつ計測し、その最高値を計測している。結果は、下の表にまとめた通りだ。
WLI-H4-D600接続 (IEEE802.11ac技術) |
VAIO S内蔵無線LAN接続 (IEEE802.11n、2.4GHz) |
|||
---|---|---|---|---|
同じ部屋内(距離1.5m程度) | 40MHz幅 | 20MHz幅 | 40MHz幅 | 20MHz幅 |
上り(子機から親機) | 46.23Mbps | 39.93Mbps | 36.31Mbps | 32.50Mbps |
下り(親機から子機) | 48.75Mbps | 40.82Mbps | 35.56Mbps | 32.37Mbps |
同じ部屋内(距離3m程度) | 40MHz幅 | 20MHz幅 | 40MHz幅 | 20MHz幅 |
上り(子機から親機) | 45.71Mbps | 41.76Mbps | 35.37Mbps | 28.59Mbps |
下り(親機から子機) | 48.69Mbps | 42.62Mbps | 33.70Mbps | 31.31Mbps |
隣の部屋(距離5m程度) | 40MHz幅 | 20MHz幅 | 40MHz幅 | 20MHz幅 |
上り(子機から親機) | 44.96Mbps | 40.42Mbps | 36.55Mbps | 30.90Mbps |
下り(親機から子機) | 47.84Mbps | 42.52Mbps | 32.82Mbps | 31.14Mbps |
1Fと2Fの部屋(距離5m程度) | 40MHz幅 | 20MHz幅 | 40MHz幅 | 20MHz幅 |
上り(子機から親機) | 44.72Mbps | 41.12Mbps | 28.49Mbps | 24.35Mbps |
下り(親機から子機) | 48.55Mbps | 42.62Mbps | 27.04Mbps | 23.57Mbps |
IEEE802.11nでの接続時に比べると、IEEE802.11ac技術での接続時は、距離が近い場合で3割程度、2Fと1Fでの接続の場合は、8割程度まで実効速度が高くなっている。計測ツールのPCATTCPは実効的なTCP転送速度を計測するため、理論値に比べてかなり低い値しか出ないのだが、11nとの差は確かにある。参考のために、直接WZR-D1100Hの有線LAN端子にVAIO Sを接続して計測したところ(1000BASE-T接続)、250Mbps前後の結果となった。
WLI-D1100HとWLI-H4-D100での接続で注目したいのは、実効転送速度もそうだが、1Fと2Fのように距離が離れても、速度が落ちにくいことだ。子機も筐体が大きく、大型のアンテナが搭載されているためであろう。また、帯域幅を40MHzにしてIEEE802.11ac技術で接続すると、子機設定ツールに表示される通信速度は600Mbpsや540Mbpsとなるが、帯域幅を20MHzにすると、通信速度はその半分程度になるので、リンク速度自体は公称通りの値と思われる。
広い家で多くの機器を接続したい人におすすめ
WZR-D1100Hは、いち早くIEEE802.11acの一部の技術を採用した無線LANルータであり、現在主流のIEEE802.11nに比べて、約1.3倍程度の転送速度を実現する。日本ではまだ80MHz幅での通信が認められていないため、IEEE802.11ac準拠製品とはいえず、本来のIEEE802.11acの性能をフルに発揮できないことは残念だ。とはいえ、今回の検証でも、ノートPC内蔵のIEEE802.11nよりは明らかに高速であり、特に離れた場所でも速度が落ちにくいことは評価できる。
さらに5GHz帯と2.4GHz帯の同時利用が可能なので、接続する機器を2つの周波数帯に分散させることで、多くの機器を接続しても実効速度が低下せず、快適に利用できることもメリットだ。現在、IEEE802.11n対応の無線LANルータを使っている人が、慌てて乗り換える必要はないだろうが、IEEE802.11nに対応していない無線LANルータを使っていて、速度に不満がある人には有力な選択肢となるだろう。一戸建て住宅などで、1台の無線LANルータですべての部屋をカバーし、多くの機器を接続したいという人にも、かなり魅力的だ。
また、簡単接続機能のAOSS2は、iPhoneやiPadなどのiOS端末、Android端末をお使いの方には非常に便利なので、iOS端末/Android端末をお持ちの方にもおすすめしたい。